顔を焼かれ妹に荒野に捨てられた公爵令嬢、その身を偽り皇太子の護衛として王国へと帰還する

高井繭来

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【42話】

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「折角天界に来たのだ。色々見て回ってはどうだ?フォルテシモ殿を案内してあげると良いカノン。少しは2人だけでデートを楽しむこともするが良いぞ」

「はい、ではお言葉に甘えさせて頂きます」

「カノンとデート…ポリフォニーとは出掛けた事があったけどカノンとデートをきちんとするのは初めてだな」

 皇太子様がウキウキとしております。
 南の果ての地に言った時のがデートみたいなものだと思うのですが。
 と言ってみたら「あれは仕事だ!」との事。

 恋人同士としてただ戯れる、と言う事がしたいようです。

 そう言う事なら天界はデートには最高の所です。
 天に浮かぶ太陽と月。
 空にかかる虹の橋。
 空を飛ぶ美しい鳴き声の鳥たち。
 咲く花々も1年中咲き誇っております。
 私のお気に入りの庭園もあります。
 修業時代、メイドとして仕事の休暇の時など気持ちを癒すために通っていたりしておりました。
 近くにあるカフェで焼き立てのパンと淹れたての珈琲を飲みながら、庭園で花を見てぼーっとするのが癒しの時間でした。

 と、言う訳で現在庭園で御座います。
 もっと人だかりのある所に行きたがると思ったのですけどね。
 天界には珍しい商品も多いですから。
 王族でも滅多にお目にかかれないアーティファクトも店に陳列しています。
 皇太子様は魔術が使えない反動か、アーティファクトに浪漫を感じるらしく集めるのが趣味なのですよね。
 それが庭園でパンを食べるだけ。
 意外でした。

「其方が暮らしていた天界を知りたい。アーティファクトも興味あるが、私と離れていた其方の1年が私は知りたいのだ」

 さらりと惚気ないで貰いたいです。
 耳まで赤くなるじゃないですか。
 あぁ、顔が熱い。
 
「どうしたカノン、お勧めのカフェを教えてくれるのだろう?」

「はい、案内します」

「ん」

「ん?」

「デートなのだから手位繋ぐだろう?」

「は、はい!」

 だからそう言う所がアレなんですよ!
 あ~手汗がきになります。
 そう言えばポリフォニーの頃は手を繋ぐなんて出来ませんでしたからね。
 新フォーチュン領視察に行ったときくらいですかね、手を繋いだことがあるの。
 そう気づき、とたん心臓がドキドキしてきました。
 皇太子様に聞こえるんじゃないかってくらい心臓の音がうるさいです。
 顔も赤くなりますし。

 ちら、と隣を見ると。

 あ、皇太子様も顔が赤い。
 私の事意識してくれているのですね。

 普段一緒の部屋に泊まろうなんて軽々しく言うくせに、手を繋ぐだけで顔を赤くする皇太子様。

 そうですね。
 私たちの恋は始まったばかりですから、ゆっくり初めて行きましょう。
 この恋を。

 まずは美味しいパンを買う事から始めましょう。
 花が咲き乱れる庭園で、2人でパンを頬張るのも悪くはないですよね。

 そして私が皇太子様の手を引いて、お勧めのカフェまでの道を歩いていくのでした。
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