顔を焼かれ妹に荒野に捨てられた公爵令嬢、その身を偽り皇太子の護衛として王国へと帰還する

高井繭来

文字の大きさ
上 下
35 / 59

【33話】

しおりを挟む
 《天界1日フリーパス券》
 ☆都合の良い日に来ると良い☆

 こんな軽いノリの展開への招待状があるのでしょうか?
 いや、あるんですけどね目の前に。
 神様らしいと言えば神様らしいです。

 私は寝着から着替えると支度をし食卓へ向かいます。
 食事は皇太子様と一緒に取っているので。
 皇太子様は相変わらず「カノンの作るパンケーキが食べたい」「フレンチトーストが食べたい」と駄々を捏ねますがソレをちゃんと叱って席に着かせます。
 もう私は都合の良い護衛でなく婚約者です。
 伴侶を嗜めるのも私の役目です。

 ついついポリフォニーの時の癖で甘やかしそうになりますが。

 皇太子様、今は私の方が身長が低いので上目遣いは諦めた方が良いと思いますよ?

「フォルテシモ様、神様から招待状が届きました」

「本当か!?」

「何時なら予定空けれますか?」

「カノンの命を救ってくれた神だ。すぐにでも会いに行こう!」

 仕事したくないだけですよね?
 皇太子と言っても仕事はありますから。
 まだ成人されてないので量は少ないですが。
 仕方ないですね、仕事を手伝って早く終わらせてから行くとしましょう。
 2日後くらいなら何とかなるでしょう。
 それにしても久しぶりの天界、楽しみです。

 :::

 そして仕事を片付けて正装を着て招待所に書かれている通りに全身が移る鏡の前に立ちました。
 青のドレスの私と、白と青を基調とした正装の皇太子様が移っています。
 そして鏡がぐにゃりと映る景色を変えました。
 これは天界の王宮の広間です。
 見覚えのあるステンドグラスにシャンデリア。
 私は鏡に触れました。
 その手は鏡を突き抜けます。

「カノン!?」

「大丈夫です、フォルテシモ様も付いて来て下さい」

 そのまま二人で手を繋いで鏡の中へと入って行きました。
 目の前は先ほど映っていた景色。
 王宮の広間です。

「お久しぶりですねカノンさん」

 鈴を転がすような愛らしい声が私の名前を呼びました。
 この声にも覚えがあります。

「マロン様!」

 声の方を見るとマロン様とクオン様が立っておられました。
 相変わらず美男子に美少女です。
 絵になる2人ですね。
 皇太子様は固まっておられます。
 
 いえ、クオン様を凝視しております。

「カノン、お2人は?」

「私の座学と料理の先生と剣の先生のマロン様とクオン様です。お2人はご夫婦なのですよ」

「夫婦なんだな?」

「えぇラブラブです」

「ラブラブなのか?」

「それはもう」

 こう言っておかないと皇太子様が余計な嫉妬をしそうなので。
 まぁ本当にラブラブのお2人ですけど。

「カノン、よく頑張ったな………」
 
 クオン様の青緑の瞳が揺れています。
 マロン様がハンカチをクオン様に渡します。
 そのハンカチでクオン様はだばだば流れ出した涙を拭っていました。

「クオンさん、カノンさんの事を娘のように思っているから、幸せそうな姿を見て安心したみたいです」

 クスクスとマロン様が笑います。
 クオン様、そんなん心配してくれていたのですね。
 嬉しい事この上ないのですが、クオン様が血を拭う以外でハンカチを使っているのに違和感を覚えてしまってすみません。

「お兄様はもうサロンにいらっしゃいますわ。行きましょう」

 マロン様がにっこりわらいました。
 相変わらずお可愛らしいです。
 流石の皇太子様も少しくらい魅了され…てないですね………。
 私を抱え込まんばかりで腕を絡めとられます。
 関節決まりそうなので止めて欲しいのですが。
 器が…器が小さいですよ!!
 同性でも駄目なんですか!?

 そうしてサロンに招き入れられて、私は久しぶりに美の化身とも言えるような全能神様と1年ぶりの対面をするのでした。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...