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【27話】

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「驚いた、本当にフォーチュン家の長女が生きておろうとは……」

「だから私は何度もカノンは生きていると言ったではありませんか!」

「いや、だがフォーチュン公爵自ら長女は顔から薬品を被ったことを悔いて命を絶ったのだと言っていたのだぞ?」

「あの1族は信用できません。だから神のお怒りを買ったのでは無いですか?」

 すみません。
 その怒り、多分私のです。

 そんな事も言えない空気。

 現在私は皇太子様と共に陛下とお茶をしています。
 王宮のサロンは流石に広いですね。
 シンプルなのに品がありセンスを感じます。
 豪奢なだけのフォーチュン家のサロンとは大違いです。
 趣味の悪い部屋でお茶させてて申し訳ありませんでした皇太子様。

「それにしてもこの菓子は美味であるな」

「カノンの手作りですから!」

「カノン嬢の手作り!?王宮のパテシェ達の菓子より美味であるぞ!?」

「私に料理を教えて下さった方が神の御使いの様なお方で、其のお陰で陛下にも出せるものが作れるようになりました。公爵令嬢如きの手作りの菓子をそこまで褒めて頂き有難く存じます陛下」

「愚息とカノンが結婚したら毎日この菓子が食べられるのか……」

「今日は特別です。カノンの菓子を食べれる権利は婚約者の私のものですから」

「器が小さいぞ!」

「器など、カノンが入れるだけの大きさがあればそれで良いのです」

「少しは民の事も考えよ!」

「カノンが望んでくれるなら、私は最高の皇帝としてふるまう事も厭いません」

「惚れ切っておるの………」

「ええ、カノンの魅力に皆が気付いてはっぱをかけて来るんじゃないかと毎日ヒヤヒヤしております。なので私としては早くカノンと婚礼がしたいのですが」

「う~む、其方らの関係を引き裂く気など無いが…今は時期が悪い。金銭的に王家に1番貢献してきたフォーチュン公爵家が無くなってしまったからのう………」

 そう、結局フォーチュン家は潰れたのです。
 爵位も売ったみたいですね。
 贅沢に慣れたあの方々が、私にかけられたハンデを背負った身でどこまで清貧に暮らせるかは気になるところではありますが。
 まぁぶっちゃけ潰れてくれてる方が面白いな、と思っております。
 だって生まれて来てからずっとつらい生活でした。
 虐待と言う虐待を行われました。
 性虐待が無かったのはせめてもの救いでしたが。
 あ、でも最後にカレンのせいで性的虐待の目にもあいそうになりましたが…まぁそのお陰で神様に拾われたのでそれはラッキーでしたね。

 それにしても落ちぶれる家族が見たいなんてすっかり私もやさぐれたものです。
 誰の影響でしょうか?
 元からそう言う本質で今になって開花したのでしょうか?
 
 まぁどっちにしろ皇太子様はそんなところまで私を受け入れてくれるので心配は無いですが。
 私、ポリフォニーをしている間に物凄く神経が図太くなった気がします。
 良い傾向だと思っておきましょう。

「フォーチュン家に相応する経済力があれば良いのですか?」

「恥ずかしい事だが、そう言う事になる…国で使える予算の半分が無くなってしまったからな……」

「そんなになのですか父上!?」

「そんなになのだよ…こうなったら埋蔵金を探すぐらいの覚悟で夢にでも縋ってみるしか無いか………」

「埋蔵金て……」

 皇太子様が腹の底から大きな溜息を吐きました。
 そうですね、私も埋蔵金は無いと思います。
 もう少し現実的な案が欲しいですね。

「夢にでも縋ってみるしかないか…今や小国クラスの規模がある南の果ての土地、外交もしていてかなり金銭的に潤っているらしい。そこを我が国のモノにできればフォーチュン家の穴を埋めてもお釣りがくる」

「な、戦争をするつもりですか父上!!」

「叫ぶな愚息が、夢に縋ると言っただろう!今朝、聖なる存在が私に告げたのだ。ロゼ色の瞳を持つ聖女が南の果ての地と帝国を繋ぐメシアになると!」

「ロゼの瞳!?」

 皇太子様が凄い勢いで私の目を覗き込んできました。
 確かに私の瞳はロゼ色ですが、私は聖女ではありませんよ?
 まぁ多少天界で学びましたが、私は法術より魔力の方が相性がいいため、所謂聖女と呼ばれる方の様に聖法術は一切あつかえません。
 むしろスペック的には水魔術と剣術を嗜むので魔剣士の方が適正高いです。

「いえ、たまたま瞳の色が似ているだけで、私は法術も使えませんよ?」

「だがあの方は、あの麗しい夜の化身のような方が言ったのだ…ロゼの瞳の聖女、と。そして其方が生きていたことを考えるともうその聖女は其方で間違えないように思えてくる……」

 麗しい?
 夜の化身?

「その方はもしかして黒髪に青銀の瞳の性別不詳の物凄い美形の方でしたか?」

「おぉ、そうだ!カノン何か知っておるか!?」

「私の命の恩人です」

「ではやはりあの方が言っていたのは其方で間違いない!もし探せなかったときはポリフォニーと言う魔剣士に助けを請えばいいと仰っていた!」

 どうやら私、今度は聖女になるみたいです。
 頭の中に美しすぎる神様が物凄い笑顔で手をひらひらしているのが思い浮かんだのでした。
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