顔を焼かれ妹に荒野に捨てられた公爵令嬢、その身を偽り皇太子の護衛として王国へと帰還する

高井繭来

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【20話】

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「なぁポリフォニー、最近夜は寒いと思わないか?」

「そうですね、秋が来て寒くなってきましたね」

 紅茶を飲みながら皇太子様が私に問うてきました。
 
 皇太子様に仕えだして4か月。
 初夏に出会って、今はもう秋小口です。
 夜はだいぶ寒くなりました。
 少なくとも半袖で寝る事はないですね。

「で、考えたんだが、寒いなら人肌があれば良いんじゃないかと思ったんだ」

「はぁ、カレン様と同衾なさりたいのですか?」

 それはそれはムカつくお話ですね。

「何で私がカレンと寝なければならないのだ?」

「では何処かで女でも買いますか?」

 それもそれでムカつきますね。

「私は恋人でもない女と夜を共にするつもりはない」

 キリッ、とした顔で言われましても…。
 婚約者は嫌。
 別の女も嫌。
 だったらご両親のベッドにでも入り込むつもりでしょうか?
 皇太子様17歳ですよ。
 流石にソレは問題がある気がするのですが…。

「お前が居るではないか」

「はい?」

「ポリフォニーが私と寝ればよい」

「どうしてその結論に至ったんですか………」

「男とならノーカウントだろう?」

「いやいやいや、別の意味でアウトです。変な噂がこれ以上たったらどうするんですか!?」

 そう、すでに私と皇太子様の間に恋愛感情があるのではないかと一部で噂になっております。
 私はしがない護衛ですよ護衛。
 恋愛は専門外です。
 私の仕事は不埒な輩から暗殺者まで、皇太子様の前に立ちふさがる邪魔な石をのけるのが仕事です。
 決して恋人でなければ湯たんぽをするのが役目ではありません。

「下賤な噂など私は気にせん。ポリフォニーなら夜中襲撃してくる暗殺者などから私を守ってもらえるし、一石二鳥だ」

「一石二鳥だ、じゃないです」

「深夜手当も出す」

 ちょっとグラリと来ました。
 お金には基本困ってないんですが、珍しい薬草や毒草は高いのでもう少し給料上がらないかな~とか思っていたところなんですよね。
 だからと言って皇太子様と同衾する気にはなれません。
 忘れがちですが私はまだ乙女ですよ?
 今は男性体ですが心まで男になっている訳ではありません。
 一緒のベッドでなんて寝れる訳がないじゃないですか。
 心臓が止まります。
 もしくは不整脈。
 どっちにしろ昼の仕事に差し支えます。

「大人しく熱魔石でも使用してください」

「………分かった」

 拗ね方5歳児ですか!
 頬を膨ら前て口を尖らせて!

 可愛いですが湯たんぽにはなりませんからね!!

「せめて抱き枕型の湯たんぽが良い………」

「明日から作って貰ったらどうですか?」

「そうする………」

 何とか納得して貰えました。
 ですが私は自分の言葉に後悔します。

 3日後、仮面をつけた青い正装をまとった3頭身のデフォルメポリフォニー抱き枕が皇太子様に届いたからです。
 
 少しばかり皇太子様の今後が心配になったのでした。
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