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【15話】

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 本日はフォーチュン邸で身内だけのお茶会です。
 どうやら父が中々進展しない皇太子様とカレンの仲にヤキモキしたようです。
 カノンが婚約者であった頃の皇太子さまは月に1度はお茶を飲みに来て下さっていましたからね。
 それがカレン相手には無い事が父は疎ましくてしょうがない、と言う所でしょう。

 仕方ないですよ。
 皇太子様、あの頃の私にラブラブだったそうですから。
 正直自分で言うのもなんですが、確かに皇太子さまは私を大切に愛して下さってました。

 カレン相手でもニコリと笑顔を浮かべているので最初は気付きませんでしたが、今なら分かります。

 皇太子様…目が笑ってません………。

 優越感と絶望感。
 皇太子さまがどんなに嫌でも王族が婚姻を結ぶ相手としては、今のところカレンが1番都合が良いです。
 フォーチュン一族、財力と権力だけは大いにありますから。
 まぁ人間としてはクズの極みですけど。

 顔を薬品で焼かれた私が言うんだから間違いないですよ。
 その後売られそうになりましたし…。
 本当にクズですよね、有難うございます。
 お陰で存分に恨めます。
 変に情が無くて復讐したい放題です。
 覚悟してください父に義母に義妹。

 そしてお茶会は開催されました。
 王宮で出されるのと遜色ないレベルの茶葉にお菓子。
 気合入ってますね父。

 義母がカレンのプレゼンをしています。
 カレンがどれだけ良い令嬢なのかを。

 カレン、カレンですかぁ…。
 正直頭は良くないですね。
 悪知恵は働くのですが、勉強は出来ないし場の空気も読めないお馬鹿さんです。
 桃色の長く豊かな髪と大きなミルクチョコレートのような色の瞳。
 顔立ちは可愛らしいですね。
 素直に認めましょう。
 世間では”花の妖精”と言われているそうですし。
 いったい誰が言い出したのか知れませんが、相当頭沸いてますね発言者。

 コロコロ変わる表情と舌足らずなで鼻にかかった高い声は男性には好評です。
 女性からは疎んじられていますけどね。
 ちなみにカレン本人もそれを分かっていて男性向けに自分をプレゼンする当たり強かなものです。

 あ~皇太子さまの機嫌がどんどん悪くなってますね。
 カレンが腕を組んできたからでしょう。
 ”あーん”は止めた方が良いですよカレン。
 皇太子さまの張り付いた笑顔が引きつり始めました。
 ”冷徹の青の皇太子”でも強くは出てないんですよね。
 王族としてフォーチュン公爵家とは仲良くして行きたいでしょうから。
 それほどフォーチュン公爵家の財力は物凄いのです。

 助けに入りたいですけど、私は今、皇太子さまに近づけません。
 
 茶会が始まる前にカレンに牽制されましたからね。
 今日1日皇太子さまの傍に行くなと。
 婚約者の護衛に威嚇するなんてとても貴族令嬢とは思えないです。
 まぁ離れていても手助けくらいは出来ないことも無いのですが…。

 あ、皇太子さまがこちらを見ています。
 目で「助けてくれ」と訴え来ています。

 さて、どうしましょうかねぇ………?
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