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【1話】
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「カレン…その手の物は……?」
「皇太子様はカノンお姉様が本当にお好きですからね。だからお姉様の方から皇太子様に諦めて貰う理由を作ることにしました」
キュポン
カレンが瓶のコルクを剥します。
そして私に歩み寄ってきました。
私はじりじりと部屋の隅に追い詰められます。
ドン、と背がクスリ棚に当たりました。
私の家系は王宮使えの薬師が代々居る事でも有名です。
母も女王様の御抱え薬師でした。
そんな母に憧れを抱き、私は薬師になることを決意しました。
だって女王様が語ってくれる母はとても気高く優しく人を思いやることが出来る人なのだと伺っていたから。
私は皇太子様の婚約者ですが、同時に皇太子様の薬師にもなりたいと思いました。
だから婚約が決定した日から薬学の勉強はかかしたことがありません。
「お姉様は、薬学の勉強中にふらついて薬棚にぶつかり酸を顔に浴びるのです。そして美貌を失ったお姉様は皇太子様の伴侶に相応しくないと自ら命を絶つのですわ!」
バシャ
カレンが手にしていた瓶の中身を私の顔にぶちまけました。
ですが何の変化もおきません。
瓶の中身はただの水だった?
「言ったでしょう、薬棚にぶつかり酸を浴びると」
ガシャン
カレンが薬棚に私の身を突き飛ばしました。
その衝動で棚の薬品が私の体に吹きかかります。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
鋭い痛みが顔に走りました。
まるで燃えているかのようです。
本能で瞼を閉じていたので眼球は無事でした。
ですが顔だけでなく首も胸も痛みます。
「あはははははは、ざまぁ見ろ!いつも私の事を見下した報いだ!」
私はカレンを見下したことなど一度もありません。
しかしカレンの中では違ったようです。
醜く顔を歪めて、恍惚な双眸で床に崩れ落ちる私を見ています。
「キャァ―――――――ッ!」
カレンが金切り声を上げました。
それに伴い廊下の方から複数の足音が聞こえてきます。
「どうなされましたか!?」
「お姉様が!お姉様が薬品をかぶってしまったのです!」
はらはらと涙を流しながらカレンは使用人の胸に飛びつきました。
こんな時でも使用人の中でも最も顔立ちが整っている者の胸の中を堪能しています。
何と言う余裕でしょうか。
しかし私に余裕はありません。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い…」
うごうごと毛虫のように床を這いつくばります。
そんな私の姿を見て、使用人の胸から顔を上げたカレンはこれ以上ないほどの喜色の表情を浮かべておりました。
ソレが意識を失う前に見た最後の光景でした。
「皇太子様はカノンお姉様が本当にお好きですからね。だからお姉様の方から皇太子様に諦めて貰う理由を作ることにしました」
キュポン
カレンが瓶のコルクを剥します。
そして私に歩み寄ってきました。
私はじりじりと部屋の隅に追い詰められます。
ドン、と背がクスリ棚に当たりました。
私の家系は王宮使えの薬師が代々居る事でも有名です。
母も女王様の御抱え薬師でした。
そんな母に憧れを抱き、私は薬師になることを決意しました。
だって女王様が語ってくれる母はとても気高く優しく人を思いやることが出来る人なのだと伺っていたから。
私は皇太子様の婚約者ですが、同時に皇太子様の薬師にもなりたいと思いました。
だから婚約が決定した日から薬学の勉強はかかしたことがありません。
「お姉様は、薬学の勉強中にふらついて薬棚にぶつかり酸を顔に浴びるのです。そして美貌を失ったお姉様は皇太子様の伴侶に相応しくないと自ら命を絶つのですわ!」
バシャ
カレンが手にしていた瓶の中身を私の顔にぶちまけました。
ですが何の変化もおきません。
瓶の中身はただの水だった?
「言ったでしょう、薬棚にぶつかり酸を浴びると」
ガシャン
カレンが薬棚に私の身を突き飛ばしました。
その衝動で棚の薬品が私の体に吹きかかります。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
鋭い痛みが顔に走りました。
まるで燃えているかのようです。
本能で瞼を閉じていたので眼球は無事でした。
ですが顔だけでなく首も胸も痛みます。
「あはははははは、ざまぁ見ろ!いつも私の事を見下した報いだ!」
私はカレンを見下したことなど一度もありません。
しかしカレンの中では違ったようです。
醜く顔を歪めて、恍惚な双眸で床に崩れ落ちる私を見ています。
「キャァ―――――――ッ!」
カレンが金切り声を上げました。
それに伴い廊下の方から複数の足音が聞こえてきます。
「どうなされましたか!?」
「お姉様が!お姉様が薬品をかぶってしまったのです!」
はらはらと涙を流しながらカレンは使用人の胸に飛びつきました。
こんな時でも使用人の中でも最も顔立ちが整っている者の胸の中を堪能しています。
何と言う余裕でしょうか。
しかし私に余裕はありません。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い…」
うごうごと毛虫のように床を這いつくばります。
そんな私の姿を見て、使用人の胸から顔を上げたカレンはこれ以上ないほどの喜色の表情を浮かべておりました。
ソレが意識を失う前に見た最後の光景でした。
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