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御使い様は学生になりました

【御使い様は物足りない】

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「糖尿病とは、血糖値が慢性的に高くなる病気のことです。
私たちは食事をすると血糖値が上がります。
そして、血糖値の上昇が感知されると膵臓から“インスリン”と呼ばれるホルモンが分泌され、肝臓や筋肉ではブドウ糖を“グリコーゲン”と呼ばれるエネルギー源に換え、脂肪組織では“脂肪”として、蓄える仕組みが作動します。
この仕組みが備わっているため、私たちの血糖値は飲食しても一定に保たれているのです。
一方、糖尿病ではインスリンの分泌量が減少したり、インスリンのはたらきが弱くなったりするため、血糖値が高い状態が続くようになります。
この状態が長期間に及ぶと全身の血管に障害が起こるようになり、重症化すると失明・腎不全・足の切断などQOL(生活の質)を大きく低減させるような合併症や心筋梗塞や脳梗塞などの病気を引き起こすことがあります。
しかし、昨今の糖尿病の負の面を強調した情報が社会における糖尿病に対する偏見を助長してしまった面は否めません。
誤った情報により糖尿病に対する負のイメージが定着してしまったことから、周囲に病気のことを話せない、幼稚園や保育園の入園を断られる、生活に必要なサービスが受けられないといった事例も報告されています。
このような、社会の糖尿病に対するスティグマ(負の烙印)に多くの患者がストレスを感じています」

 お天気はポカポカ。
 窓際の席なので太陽の光が当たって心地良い。
 教師の声も子守歌に聞こえる。

 深海は現在授業中である。

 が、睡魔と戦いながら船を漕いでいた。
 机に突っ伏したら確実に睡魔に負ける。
 根性で瞼の上と下がアイラブユーするのを堪えている。

 その姿は教師からも見えているだろうが、深海を特別注意することはない。
 深海は来賓なので特別枠だ。
 一介の教師如きが声を荒げて咎を立てて良い相手では無いのだ。

「そこ寝ない!」

 コンッ!

 深海の前の席の居眠りこいている男子学生がチョークを投げつけられた。

「やる気が無いのなら帰って貰って結構だぞ!」

「す、すみませんでしたっ!!!」

 謝る男子学生。
 ソレを見ていた教室の殆どが船を漕いでいる深海を睨んでいた。
 特別扱いにも程がある。
 途上発展国の、”風呂に入るのも病気になる”などと言う教えをつい最近まで守っていたカカン王国である。
 文明の国クロイツから見れば田舎者どころか蛮族である。
 それが王族のお手付きだからと特別扱いされる。
 生徒たちの気分の良いものでは無かった。

 そして負の感情は伝染していく。
 知らず知らずのうちに、生徒たちは深海の存在を疎むようになってきた。

 なお深海が睡魔に負けてしまいそうだったのは、医学書を深夜に読み漁っての寝不足と、授業内容のレベルが余りにも低かったためである。
 糖尿病は現代で散々、自分の家の病院で見てきた。
 今更基礎から覚えろと言われても、10歳になる事には糖尿病の最先端の病状とそれに対する治療法を身に付けていた深海にはこの授業は余りにもつまらなかったのだ。

 東大生が小学生の授業を受けているようなものである。

 だがそんな事は学生の知る事ではなく、この日から深海への苛めが始まり出したのであった。
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