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御使い様は学生になりました
【御使い様学生になる】
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「カカン王国よりカグウ王の部下であられるサザナミ様が今日より学生として君たちと共に学ぶことになる。くれぐれも失礼の無いように」
眩しい頭の教師が学生へ言う。
クロイツ王国は情報網が徹底している。
1年でカカン王国が復興した事。
聖女召喚があった事。
深海が聖女の兄(これは微妙に間違っているのだが)である事。
それはすでに調べられているらしい。
ただのカカン国王の部下と言うだけではこれ程丁寧には扱われなかっただろう。
聖女の兄【御使い様】だから丁重に持て成されているようだ、と深海は判断した。
「サザナミです。短い期間ですがよろしくお願いします」
深海はこれから短い期間共に学ぶことになる年上の生徒たちに頭を下げた。
教室がざわつく。
深海は生徒たちより4~5歳は年下だ。
さらには「短い期間」発言。
これは「短い期間で全て学んで帰りますのでその期間だけよろしくお願いしますね」と受け取られても仕方ない。
言葉当物は難しい物なのだ。
言った方にその気は無くとも受け取り手がそう受け取ったのならそうなのだ。
つまり深海はクロイツの医学学園で敵を作りまくってしまったのである。
令和の日本人の謙虚過ぎる態度はこの時代にはうまく噛み合わないらしい。
言ってしまった後、周囲の反応を見て深海は失敗した事を悟った。
空気を読むのは日本人の得意技である。
だが今更どうしようもないし、まぁ本当に長い期間居ないつもりなので言ってしまったものは仕方ない。
深海は開き直ることにした。
(さて、文明国家クロイツ。どこまで医学が進んでいるんだろうな?少なくとも20世紀初期の医学くらいは発展して欲しいんだが………)
東洋医学は学長の口ぶりからして扱っていないようだった。
寧ろ馬鹿にした節もあった。
東洋医学舐めるなよ。
深海は東洋医学医の母を尊敬している。
体中のツボだった激痛が走るツボだって存在するのだ。
針でも刺してやろうと思った深海は悪くない。
うん、悪くない。
どこぞの世紀末覇者のようなヒデブな技は使えないが、人を苦しめることぐらい出来るのが東洋医学の怖い所である。
極める方は是非善人であって欲しい。
漢方薬だって使い方を間違えれば毒になる。
その気があれば最初から毒としても使える。
学長のお茶に勃たないようになる漢方薬を盛ってやろうかと思った深海は悪くない。
うん、悪くない。
こうして深海のクロイツ学園でのデビューは終わった。
早く帰りたい。
寮生活を勧められたが丁重に断った。
フィルドと離れる選択肢は深海には無い。
食事を自分で用意する手間があろうと、フィルドと長期期間離れるなんて論外だ。
深海はずっぽりとフィルド沼に浸かってしまっているのだ。
フィルドもまたしかりだ。
2人を引き離すのは今やカグウによってでも無理であろう。
「さぁ、今日は何を作るかな?」
門の所にフィルドが立っている。
女生徒たちがざわめく。
前髪で目こそ見えないが、イケメンオーラがフィルドからは出ているのだ。
その注目の的が自分を迎えに来ている事に少しの優越感。
今日は帰り道に良い荷物持ちが居るから嵩張る材料でも大丈夫。
待ち人が美味しいと笑う、とびっきりの美味しい晩餐を作らなければな、と深海は浮かれた気持ちでフィルドの方に駆け寄るのであった。
眩しい頭の教師が学生へ言う。
クロイツ王国は情報網が徹底している。
1年でカカン王国が復興した事。
聖女召喚があった事。
深海が聖女の兄(これは微妙に間違っているのだが)である事。
それはすでに調べられているらしい。
ただのカカン国王の部下と言うだけではこれ程丁寧には扱われなかっただろう。
聖女の兄【御使い様】だから丁重に持て成されているようだ、と深海は判断した。
「サザナミです。短い期間ですがよろしくお願いします」
深海はこれから短い期間共に学ぶことになる年上の生徒たちに頭を下げた。
教室がざわつく。
深海は生徒たちより4~5歳は年下だ。
さらには「短い期間」発言。
これは「短い期間で全て学んで帰りますのでその期間だけよろしくお願いしますね」と受け取られても仕方ない。
言葉当物は難しい物なのだ。
言った方にその気は無くとも受け取り手がそう受け取ったのならそうなのだ。
つまり深海はクロイツの医学学園で敵を作りまくってしまったのである。
令和の日本人の謙虚過ぎる態度はこの時代にはうまく噛み合わないらしい。
言ってしまった後、周囲の反応を見て深海は失敗した事を悟った。
空気を読むのは日本人の得意技である。
だが今更どうしようもないし、まぁ本当に長い期間居ないつもりなので言ってしまったものは仕方ない。
深海は開き直ることにした。
(さて、文明国家クロイツ。どこまで医学が進んでいるんだろうな?少なくとも20世紀初期の医学くらいは発展して欲しいんだが………)
東洋医学は学長の口ぶりからして扱っていないようだった。
寧ろ馬鹿にした節もあった。
東洋医学舐めるなよ。
深海は東洋医学医の母を尊敬している。
体中のツボだった激痛が走るツボだって存在するのだ。
針でも刺してやろうと思った深海は悪くない。
うん、悪くない。
どこぞの世紀末覇者のようなヒデブな技は使えないが、人を苦しめることぐらい出来るのが東洋医学の怖い所である。
極める方は是非善人であって欲しい。
漢方薬だって使い方を間違えれば毒になる。
その気があれば最初から毒としても使える。
学長のお茶に勃たないようになる漢方薬を盛ってやろうかと思った深海は悪くない。
うん、悪くない。
こうして深海のクロイツ学園でのデビューは終わった。
早く帰りたい。
寮生活を勧められたが丁重に断った。
フィルドと離れる選択肢は深海には無い。
食事を自分で用意する手間があろうと、フィルドと長期期間離れるなんて論外だ。
深海はずっぽりとフィルド沼に浸かってしまっているのだ。
フィルドもまたしかりだ。
2人を引き離すのは今やカグウによってでも無理であろう。
「さぁ、今日は何を作るかな?」
門の所にフィルドが立っている。
女生徒たちがざわめく。
前髪で目こそ見えないが、イケメンオーラがフィルドからは出ているのだ。
その注目の的が自分を迎えに来ている事に少しの優越感。
今日は帰り道に良い荷物持ちが居るから嵩張る材料でも大丈夫。
待ち人が美味しいと笑う、とびっきりの美味しい晩餐を作らなければな、と深海は浮かれた気持ちでフィルドの方に駆け寄るのであった。
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