上 下
144 / 161
御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい47】

しおりを挟む
「うわぁ、まるで部屋ですね。令和風に言うならキャンピングカーですね」

「キャンピングカーて何フカミちゃん」

「車と言う動物に引かせずに燃料で走る乗り物がありまして、その車の中で寝泊まりできるスペースのある物をキャンピングカーと言います。
この獣車はまさにそんな感じです。
俺、キャンピングカーで車中泊して旅するのが夢だったんで、ちょっと趣向は違うけど叶って嬉しいです」

「フカミちゃんが喜んでくれて良かった」

 ニコニコニコ

 今日も深海とフィルドはマイペースに惚気る。
 一緒に旅をしているのがルナトーでなければノイローゼになりかねない。
 何せ始終イチャついているのだ。
 本来の性別がちゃんと男女と知っていても、男装した深海は見事に少年にしか見えない。7
 よってフィルドと深海のイチャつきは同性同士で戯れているようにしか見えないのだ。
 ノーマルの人間からしたら視覚の暴力である。

 なおルナトーはお腐れ様なので寧ろどんと来いな訳であり。
 この度に最も適した人選だったと言えよう。

 獣車の中は快適そうなまるで家の中のような作りだ。

 まずは広々としたスペースが目に留まる。
 高級獣車の多くのモデルは成人男性が立っても天井に頭を打つことなく、縦横にも十分なスペースが確保されているようだ。
 長身のフィルド(188cm)でも天井に頭が付かない。
 中はまるで住宅の一室を訪れたかのような広さが特徴。
 リビングスペースやキッチンスペース、就寝スペース、レストルームなどが設けられている。
 それぞれの家具は限られたスペースを有効活用するようにデザインされており、自由に使える収納スペースも多く確保されている。
 それでいてリビングスペースのソファは自宅のようにくつろげたり、シングルサイズ以上のベッドで眠れたりと、快適さが追求されているのだ。

「これならゆっくり寝れますね」

「ベッドは2つだけどどうするフカミ君?」

「俺とフィルド様が一緒で良いんじゃないですか?」

「ちょ、駄目駄目駄目駄目!女の子は女の子同士で寝た方が良いでしょ!」

「ふ~んフカミ君と寝て良いんだぁ♡」

「やっぱり2人はベッド1つずつ使って。俺がソファで寝るから」

「フィルド様がお金を払ったんですからフィルド様がベッドを使うべきですよ。俺がソファに行きます」

「フカミちゃんの体調を考慮しての獣車だからね。フカミちゃんがベッドで寝ないと意味無いの!」

「じゃぁ俺とフィルド様が一緒に寝るので良いじゃないですか!」

「そりゃフカミちゃんと引っ付けるのは嬉し…げふん、嫌じゃないけど、狭いでしょ?」

「その分くっ付けて気持ち良いですよ?」

「その気持ち良いのが問題なんだよぉ………」

「?」

 深海は頭に?を浮かべている。
 フィルドが嫌でないなら一緒に寝たくない理由が分からないのだ。
 この辺り深海は自分の性別をちゃんと認識してないことが伺える。

「私がソファで寝るからフカミ君とフィルド様がベッドで良いんじゃない?」

「「女の子をソファで寝かせる訳にはいきません!!」」

「あ、はい…」

 ルナトーの提案は2人に同時に却下された。

「じゃぁやっぱりフィルド様とフカミ君が一緒に寝るのが良いと思いますよ?いい加減腹くくりましょうフィルド様」

「また天国と地獄のシャトルラン決定かぁ…宜しくねフカミちゃん………」

「はい、一緒に寝ましょうねフィルド様」

(あぁ~そんな嬉しそうに笑わないでよねぇ、歯止めきかなくなったらどうしてくれんのさフカミちゃん……)

 そんな事思いながらも、ちゃんと深海が成人するまでは歯止めを外す気はないフィルドだった。
 頑張れ、きっと良い事もある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。 しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。 しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。

七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。 妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

処理中です...