上 下
135 / 161
御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい38】

しおりを挟む
 ☆ほっこり優しい たまご雑炊☆
 ほっと温まる、優しいおいしさのたまご雑炊。
 白だしで作るだし汁に、ごはんと溶いた卵を入れて煮た、優しい味わいのシンプルな雑炊。食欲がないときでも優しく食べられる一品。
 ・レシピ
 材料(1人前)
 ごはん120g
 卵1個
 水300ml
 (A)白だし大さじ1/2
 (A)薄口しょうゆ小さじ1
 (A)みりん小さじ1
 小ねぎ (小口切り)

 作り方
 1.ボウルに卵を割り入れ、溶きほぐす。
 2.鍋に水、(A)を入れて中火で加熱し、沸騰したらごはんを入れて加熱する。
 3.沸騰したら弱火にして5分程加熱し、ごはんが柔らかくなったら中火にして1を回し入れる。
 4.全体を混ぜて中火で加熱し、卵が固まったら火を止める。
 5.器に盛り付け、小ねぎを散らして完成。

「フィルド様、ご飯食べれますか?」

「ん~あんまり食べたくない………」

「少しで良いから食べて下さい。お腹に何も入れないで薬を飲むと胃に悪いですから、ね」

 ね、なんて可愛く言われて断り続ける忍耐はフィルドには無い。
 むしろ元気が出た。
 精神的にも下半身にも。
 大好きな女の子の、ね、は破壊力抜群なのである。

 フィルドがベッドから身を起こすと、深海が隣のベッドの布団を丸めたものをフィルドの背中に当ててくれる。
 ベッド上に良い背もたれが出来た。
 成程、介護慣れしている。
 これが医療家庭で育った深海が自然と行える行動なのである。

「おかゆ、少しで良いから食べて下さいね」

 そして粥の乗ったトレイを膝に置いた深海は、匙で1口分粥を救うと「ふ~ふ~」と息を吹きかけて匙の上の粥を冷ます。

(え、なになに?それ、何かこう、ヤバくない!?)

 伏目がちにキスを強請るような唇から粥に息を吹きかける深海の姿。
 いや、自分が粥になりたい。
 フィルドはそう思った。
 女を抱き遊んだ成人男性が何を言っているのかと思われるだろうが、初恋童貞なので仕方ない。
 フィルドは深海なら頬にキスされただけで下半身が臨戦態勢になる自信がある。
 いや、ソレは自慢にならないが。
 まぁ取り合えずフィルドは深海が大好きで、大好きな女の子のそんな仕草にちょっぴり下半身が元気になっちゃった訳である。
 ちょっぴりなので、今のところ布団で誤魔化せている無問題。

「はい、あ~ん」

「!?」

 匙が口元に差し出される。
 乗っているのは深海がふ~ふ~した御粥。
 フィルドが口を開けるのを促す様に深海も軽く口を開けている。
 そこから見える白い歯と赤い舌。
 あの舌に己の舌を絡めたら気持ちよさそうだなんて思ってみたり?

「フィルド様、あ~ん」

「…………はい、あ~ん」

 パカリ、とフィルドが口を開ける。
 そうすると絶妙なタイミングと力加減で匙が口の中に入って来た。
 御出汁と卵のまろやかさが口の中に広がる。
 口の中でさらりとほぐれるコメの塩梅も良い。
 普段なら物足りないだろうけど、熱がある今は濃い味付けを食べたいと思わないので丁度良い味付けだった。

「美味しいですか?」

 こてり、と深海が小首を傾げる。

「ん”ん!美味しいです………」

 滾るのを押し留めるのも大変なのである。
 熱があるのに何故そんなに元気なのだ己の下半身!?

「良かったです。まだ食べれますか?」

「………たべれます」

 ニッコリと嬉しそうに笑った深海がまたふ~ふ~と粥に息を吹きかける。
 もう何このご馳走?
 ガフティラベル帝国で食べたどんな料理よりも美味しいよ。
 深海の手料理除く。

 そうしてフィルドは粥を全部食べ切った。
 あんな可愛い顔で差し出された粥を否定できるか?
 否、出来ない。
 出来る奴は俺が殺す、な勢いのフィルドである。

「風邪、うつして済みませんでした。治るまで看病させて下さいね」

「…………おねがいします」

 天国と地獄が同時にやって来る時は、何時も深海の笑顔があるのであった。
 ソレを不幸と思わないあたり、フィルドはもう深海に骨向きにされてふにゃふにゃなのであろう。

 今日も頑張れ魔導士長。
しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。

スキルが芽生えたので復讐したいと思います~スライムにされてしまいました。意外と快適です~

北きつね
ファンタジー
 世界各国に突如現れた”魔物”。  魔物を倒すことで、”スキル”が得られる。  スキルを得たものは、アニメーションの産物だった、魔法を使うことができる。  高校に通う普通の学生だった者が、魔物を見つけ、スキルを得る為に、魔物を狩ることを決意する。  得たスキルを使って、自分をこんな目に合わせた者への復讐を誓う。  高校生だった者は、スキルの深淵を覗き見ることになる。芽生えたスキルは、強力な武器となる。 注)作者が楽しむ為に書いています。   復讐物です。いじめや過激な表現が含まれます。恋愛要素は皆無です。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第、直していきますが、更新はまとめてになると思います。   誤字脱字、表現がおかしいなどのご指摘はすごく嬉しいです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...