聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

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御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい37】

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「フカミちゃんお薬飲める?」

「ん~飲ませて下さい………」

 駄目だ、半分眠っている。
 が、飲ませない訳にはいけない。
 此処に体温計があったら深海の身体の温度は40℃を越えているのが確認できたであろう。
 まぁ深海のバッグに水銀性の体温計はあるのだが、フィルドはそれを知らなかったので仕方ない。
 それに熱の温度が分かったところでフィルドは何をすればいいのか分からないし、知らない方が余計な負担を精神にかけず良い方向に向いているかもしれない。

「ん~~~~フカミちゃんごめんね!!」

 深海の口を指でこじ開けて、口の奥に熱冷ましの錠剤を放り込む。
 舌の上に乗せるようにして、喉の奥に張り付かないように慎重にした。
 そしてフィルドは自分が水を口に含み、深海に唇を重ね、口内の水を深海の口内に流し込んだ。
 ゴクリ、と深海の喉が鳴る。
 きちんと飲めたようである。
 フィルドはほっ、と息を吐いた。

(フカミちゃんの唇柔らかかった…こんな時に不謹慎だけど、フカミちゃんを1人占め出来るこの機会、少し嬉しいかも………)

 フィルドは己の唇を指でそっ、となぞり頬を赤く染めた。
 まるでファーストキスをした直後の乙女のような仕草である。
 まぁフィルドは乙女ではなく乙男なのだが。
 チャラ男を乙男に変えてしまった深海の誑し能力は物凄いかも知れない。

「ん…さむ、い…………」

 毛布を着せているのに深海の身体がガタガタと震えている。
 高熱のせいで外気が寒く感じるのだ。
 毛布の下の深海は今は綿のシャツとハーフパンツを着用している。
 スポブラにボクサーパンツだけに己からなった深海にフィルドが着せたのである。
 カカンで拵えたものだ。
 だが他の服は旅用、外着用。
 寝る時に着るには向いていない。

「………下心無いから許してね、ごめんねフカミちゃん」

 フィルドは深海のベッドに入ると深海を抱きしめた。
 そして魔術で己の体温を高くする。
 ポカポカとフィルドの身体が温まり、深海が本能的にのそ温もりを求めた。
 フィルドに抱き着いてきたのである。

(~~~~~フカミちゃん柔らかい!気持ちイイ!いい匂いする!でも今は下心は封印!完全封印!!これは看護、これは看護!!)

 フィルドは己の愚息が反応しないように、深海の身体の感触を出来るだけ味合わないように意識した。
 チャラ男だったくせに随分と紳士的な男になったものである。
 それもこれも深海の影響。
 フィルドは深海にだけは嫌われたくない。
 傍に居たい。
 一緒に居て、いつも笑っていて欲しい。
 その為なら自分の煩悩だって封印する。
 だって深海は天がフィルドにくれた、2つとない宝物だから。

 すりすりと胸板に頬を擦り付けられても、欲望より保護欲が勝った。
 先ほどまで深海の眉間に刻まれていた皺が無くなっている。
 随分と今は心地が良いのだろう。
 もしかしたら薬が効いて来ているのかも知れない。

 睫毛がふるりと震え、深海の瞼が上がる。
 そしてその視線はフィルドの双眸を捉えた。

「ふぃるどさまだ…ぎゅ、てしててくださいね。そばにいててくださいね…いいにおいで、あんしんする、おれのだいすきな、ふぃるどさまのうでのなかだぁ……………」

 そしてふにゃりと力の抜けた笑顔を浮かべると、深海はまたすやすやと眠りについた。

「フカミちゃん、それ、反則だよ………」

 とんでもない告白をされて、特別な笑顔を見て、フィルドはこの夜は欲望との我慢の戦だと覚悟を決めた。
 自分がどれだけ我慢をしなくてはいけないか分かっていて、それでも深海から離れると言う選択肢はフィルドには存在しなかった。
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