上 下
125 / 161
御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい28】※フィルド視点6

しおりを挟む
 早く収まってくれ我が息子。
 強く念じてもフィルドの股間の息子さんは落ち着く気配がない。
 当然だ。
 こちらは布越しだが、深海は生足。
 その生足で息子さんをフニフニされているのだ。
 気持ちイイなんてものじゃない。
 コレに比べたら今までのプロのお姉ちゃん達との大人な行為なんて児戯にも等しい。
 好きな女の子の生足最強、だ。

 フィルドは今まで女好きであり、後腐れ無いようプロの女と関係を持ってきた。

 初めての感想は「ふーん、こんなもんかぁ」な感じ。
 同じ年頃の男たちがワイワイ騒ぐほどのモノではないと思っていたのだ。
 実際、機械的に射精をするのなら自慰と気持ちの良さは変わらない。
 むしろ前戯だなんだと気を使う分、自慰よりよほど面倒くさい。
 面倒くさい行為であったが、適当に女を抱いていないととんでもない噂を立てられかねない。

 数年前、フィルドがまだ女遊びをしていなかった時に、ラキザとそう言うベーコンレタスな関係だと噂が広まったのだ。
 男なんて勘弁である。
 可愛くないしゴツイし厳つい。
 どうせ触るならまだ触ってて楽しみがあるにはある女の方が良い。

 それ以来フィルドは月に数度は女を買っている。

 そのルーティンが崩れたのが1年前。
 
 深海と出会ってしまったのだ。
 最初から女と気付いていた訳では無い。
 本当に初期は少年だと思っていたのだ。
 対比する鳴海が美少女だっただけに、余計に男らしく見えていた。
 良く観察すれば骨格の造りだとかで女と気付けたはずなのだが。

 因みにカグウは慧眼、チノシスは骨格、コキョウは本能ですぐに深海を女だと見抜いていたらしい。
 後れを取って正直悔しい。
 あの時の自分、何故すぐに深海が女だと気付かなかったのだ、と。

 だけど深海とは気が合ったし、性格は好みドストライクだった。
 能力値が高いのも評価が高い。
 知能・生活能力・戦闘能力全てが平和な世界からやって来たとは思えないくらいにずば抜けて高かった。
 一緒につるんでいるのは刺激的で「次は何をやるのだろう?」と何時も期待に胸を膨らませていた。
 そして深海を男と思ったまま好きになってしまったのだ。
 あの時は本当に奈落の底に落とされた気分だった。
 自分はゲイだったのかと。

 別に同性愛者が悪いとか受け付けないとかじゃない。
 ただ自分が予想もしていなかった性癖を持っていたことに気付かされ、世界が真っ黒になったのだ。

 その暗闇から引き揚げてくれたのは、やっぱり深海本人で。

「あぁ、好きだなぁ……」

 そうしみじみ思ってしまった。
 そう思ったらもう止まらなくなった。
 何かと理由を付けて深海の傍に居るようにした。
 牽制の役割もあったが。
 なにせ深海は聖女様の双子の兄で国王の小姓、更には美少年。
 目ざとい女が目を付けてもおかしくない。
 そして傍に居るうちに徐々に違和感を感じ始め、ようやく深海が女だと気付いた。

 天にも昇る気持ちだった。

 別に結婚願望があった訳では無いが、好きな子となら子供も欲しい。
 ちゃんと結婚して皆から祝福されたい。
 深海が後ろ指さされるような未来は歩ませたくない。
 その全てが、深海が女であったことで解決した。
 極めつけは自分の人間では有り得ない光彩の瞳を「好きだ」と言ってくれた事。
 もう止めを刺された。
 自分はもう深海以外を好きになる事は出来ないだろう。
 深海を手放したくない。
 ずっとそばに居たい。
 だからこそ、その場のノリで抱いてしまいたくなかった。

 深海が何時かフィルドを男として異性として好意を抱いてくれた時に、ちゃんとプロポーズしたい。

 なので今の関係では一切深海を穢したくないのだ。
 出すならせめて己の手で。
 深海の足で射精だなんてとんでもない。

 フィルドは深海が熟睡しているのを確認して、じりじりと身を捩りながら距離を取った。
 そして深海に触れずにベッドから抜け出す。
 可愛い寝顔を堪能出来ないのは残念だけど、深海で射精するよりは良い。
 何よりこの年で服を汚したくない。
 フィルドは気配を消して、静かに部屋からですとトイレへ向かった。
 今日も息子の宥め役は己の右手さんだった。
 本当に何時か飽きそうである。
 気分を変えてたまに左手でもしてみるべきだろうか?
 このままでは右腕だけが筋肉質になりそうだ。
 そんなバカなことを考えて一仕事終えてトイレから出ると、ばったりと廊下でルナトーと出会った。

「うふふ、フカミ君と一緒のお部屋は大変ですねフィルド様~♬」

「一言目がソレ!?そして俺の身に何が降りかかったか想像できてる感じのその笑み止めて!!」

「ふっふっふ~ん♪」

 鼻歌を歌いながらルナトーは1人部屋に戻って行った。
 きっとまだ朝も早い事だし、白い紙にガリガリとペンで走り描きをするのだろう。

「今度からフカミちゃんを1人部屋に押し込もう………」

 カースト底辺のフィルドはそう思った。
 ルナトーはフィルド相手ならオオカミさんにならないし、フィルドは深海以外に反応しない。
 深海を1人部屋で寝かすのが1番安全である。

 フィルドはまだ発情期である深海のフィルド限定オオカミさんの怖さを知らない。

 部屋の住人を変えたところで、深海はフィルドのベッドに忍び込むだろう。
 それくらい深海はフィルドの瞳に御執心である。
 ルナトーに見られながらの夜這いならぬ朝這い。
 そんなものを見られるくらいならやっぱり深海と己の2人部屋の方がマシなのだろうかと、フィルドが頭を悩ます時はすぐにでも来ることになるだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...