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御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい18】※フィルドSide2

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 フィルドが宿に帰るといきなり深海とエンカウントした。
 運が無いにも程がある。
 何せ娼館に行った帰りである。
 まだ湯で身体を清めてもいない。
 つまり香水臭いままだと言う事だ。

「フ、フカミちゃん………」

「フィルド様、その匂いは?」

「え、と、あの………」

「きつい香水の匂い…娼館ですか?」

「!?」

 あっさり深海に当てられてしまう。
 何とか誤解を解きたい。
 未遂なのだと。
 誰とも交わったいないと。
 だがフィルドは深海にそんな言い訳をする立場ではない。
 一方的な片思いだ。
 深海はフィルドが娼館に行ったと気づいても平気そうな顔をしている。
 つまり恋愛感情をフィルドに持っていないと考えてよいだろう。
 それはフィルドにとっては悲しい事であるのだけれど。

「あの、何もしてないから………」

「別に言い訳しなくても良いですよ?フィルド様も成人男性なのだから、体の熱を持て余すときくらいあるでしょうし。俺たちを気にしなくてもそんな事で擦れたりしませんよ?」

 その言葉はフィルドの胸に突き刺さる。
 深海はフィルドが誰と睦合おうと気にしないと言う事だ。

 そしてその言葉に、想像以上にフィルドは傷ついた。

(あ、やばい、泣く………)

 鼻の奥がツンとして、目頭が熱くなった。
 次の瞬間には双眸から涙がポロポロと溢れ出した。

「どうしたんですかフィルド様!?何が辛いんですか!?」

「ホントに、やってない…………」

「え?」

「ホントに、最後までやってない…途中で萎えたから…………」

 己は何の言い訳をしているのだろう。
 涙まで流して。
 必死に深海に縋りつきたいのだ。
 自分には深海しかいないのだと叫びたくて仕方ない。
 だがまだそんな勇気はない。
 深海はフィルドに好意を寄せてくれている。
 出なければキスなどしないだろう。
 目的がフィルドの瞳の所有権を持っておきたい事だとしても。
 でもそれは恋愛の情ではない。

 ギュウ

 深海がフィルドを抱きしめた。

「え?」

「辛かったですね、フィルド様の年で勃たなくなるなんてショックだったでしょう?大丈夫です、俺がちゃんと元に戻るように協力しますから」

「え…え、え…………?」

 深海の口からとんでもない爆弾が炸裂されたのだった。
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