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御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい15】

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「もどかしい………」

「どったのフカミちゃん?」

「こんなに文明がカカンより進んでいるのに、意識が追い付いていないんですよね」

「あ~確かにカカンとかスティルグマに比べて綺麗度では落ちるかも?」

「そうなんです。一見綺麗なんですけど、上下水道まで揃っているのに清潔管理が疎かなんですよね。お風呂も湯を張った桶に半身浸して洗うスタイルですし」

「それは女の子には辛いよね」

「フィルド様のアイテムのお陰で己の不潔とは無縁ですが、周りの人が不潔だと思うとゾッとします」

「清潔に慣れちゃうと不潔って怖いよねぇ」

「なんで食事は出来るだけ自炊がしたいです」

「俺はフカミちゃんのご飯好きだから良いよ~」

「それは良かったです。張り切って作らせて貰いますね♡」

「うん、で、ね?」

「はい、何ですか?」

「何時になったら上からどいてくれるのかな~なんて?」

 実は今は早朝。
 毎朝のお目目チェックの時間であった。
 朝からフィルドは深海に組み敷かれている。
 残念ながら昨夜は1人1部屋取れなかったのだ。
 3人同室である。

 相変わらずルナトーは酒場で引っかけた女と夜の街に消えて行った。
 なのでフィルドと深海は昨夜から2人きりだ。

「ルナトーさんが帰ってきたら退きますよ♡なぁに照れてるんですか、真っ赤になって可愛いですねぇフィルド様、耳まで真っ赤」

 カプッ

「ヒャァァ、耳噛まないでー!ルナトーちゃん早く帰って来てー!」

「俺が居るのに他の人の名前呼ぶなんて悪い子ですねぇ」

 クスクス笑う深海が怖い。
 何か謎の圧力がある。
 美人(深海は認めないが)の真顔は怖いものなのである。

「今日も綺麗な目、可愛い顔に声、フィルド様、実は天使だったりしません?」

 いえ、魔族の血を引いています…とは流石に言えなかった。
 まぁ深海ならそれでも引かないであろうことは確信しているが。
 フィルドの中で深海への信頼はそれ程に厚いものになっている。
 本人は無自覚だが。

 チュ、チュ、

「フカミちゃんチュー駄目~!」

「ルナトーさんが帰ってきたら止めますよ」

 そう言いながら深海はフィルドの顔と首にキスの雨を降らす。
 首筋には少し強く吸い、所有印までも付ける。
 深海の執着も半端ないのだ。

 目と目が合う。
 
 どちらかともなく、唇を寄せ合った。
 唇が重なる。
 開いたフィルドの唇の中に深海の舌が侵入する。
 その舌は生き物のようにフィルドの舌を追いかけ、絡めとろうとする。

「んっふぅ」

 チュ、チュク

 水音だけが狭い部屋に響く。

「美味しいですね、フィルド様。特にこの牙みたいな犬歯が可愛くて好きですよ」

「牙、怖くない?」

「怖い、何で?こんなに可愛いのに」

 そう言って深海は再び深いキスをフィルドに仕掛ける。

(こんなのバレたらナルミちゃんに殺されるー!!)

「フィルド様、余計な事考えないで、俺に集中して?」

 ペロリ、と舌で唇を舐められた。

 くふん、とフィルドから子犬のような鳴き声があがる。

「あ~可愛い、全部、俺のモノいしてしまいたい………」

「フカミちゃん、朝からその男の色気全開にするの止めてよぉぉぉぉぉ…………」

「ま、今日はこれ位で我慢しましょう。はい、前髪整えて、ルナトーさん終わりましたよ」

「はーい、お疲れ様~♡」

「お待たせしました」

「ううん、こちらこそご馳走様♡」

 ドアが開くとそこにはルナトーがノートを広げてペンで何かをガリガリと描いていた。
 見たいような見たくないような。
 と言うより。

「全部聞いてたの~~~~~っ!?」

「フィルド様が大変可愛くて今日も飯が旨いです♡」

「俺の味方いないよこの旅ーっ!ラキザ助けてぇぇぇぇっ!!」

 そろそろフィルドがホームシックにかかるかもしれない。
 誑しは程々に………。
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