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オマケは御使い様になりました
【ラッキースケベは呪いですか?8】
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「で、結局呪いは解けたのか?」
「解けたには解けたんだけど……」
1泊してきたフィルドにラキザは1発殴ってやろうと思っていた。
弟のように可愛がっている深海と1つの部屋に泊まった上、同じベッドで寝たなど保護者(自称)として許せるものではない。
だが帰ってきたフィルドは何時ものチャラけた雰囲気が也を潜めていた。
それどころか乙女のように妙にモジモジとしている。
深海にくっ付かれて顔を真っ赤にしているのだ。
何時もなら自分から引っ付きに行く癖に、だ。
そして深海は異様に上機嫌であった。
その2人の様子を見て深海がフィルドに無体な事をされていないのは理解した。
深海が上機嫌なのは好物だと言うイチゴを堪能したからかと検討づけた。
しかしフィルドの様子だけ変わったのだ。
帰ってきてから速攻ラボに籠り、【ダークネス】の呪いを解くべく5日間引き篭もりをしていた。
その間にラボに入れたものは居ない。
完全に外界はシャットアウト。
人好きのフィルドにはありえない現象だ。
フィルドは人が好きだ。
人の体温が好きだから気に入った人間にはくっ付きたがる。
人と話すのが好きだから気に入った相手にちょっかいをかける。
人の驚いた姿を見るのが好きだから悪戯を仕掛ける。
人の喜ぶ顔が好きだから気に入った相手になら手間も面倒と思わない。
そんなフィルドが5日間も誰にも会わないなど、不気味で仕方なかった。
帰ってきた後の乙女のようなフィルドを見ているラキザにとっては、他の者より気味悪がられた。
そして5日ぶりに出てきたフィルドは【ダークネス】の呪いを解き切ったのだと言う。
何処か残念そうにしていたのは何故なのか?
それがラキザは無性に気になった。
で、冒頭に戻る。
「呪いが解けたら良いじゃないかよ。何をしんみりしてんだ?」
「うん、正直フカミちゃんが俺に心を開いていくれてたのが【ダークネス】の呪いだったらどうしようかと思って…想像したら泣きたくなった………」
泣きたいなどフィルドからそんな言葉が出るとは思わなかった。
よくフィルドはウソ泣きをするが、ソレはふざけてするものだ。
本気でフィルドが泣いているところなど、20年以上の付き合いがあるラキザでも見たことがない。
「なんでお前が泣くんだよ?」
「………だってあんなことありえない」
ボソリとフィルドが呟いた。
あんな人間が持ちえない目を「好きだ」なんて言うはずがない。
きっと【ダークネス】の影響だ。
そう考えるとフィルドは今にも泣きたい思いだった。
(あ、ヤバい…ほんとに涙が出そう………)
フィルドは鼻の奥がツンとするのが分かった。
「お、おい、どうした急に黙って……」
静かになったフィルドにラキザが慌てる。
「ラキザ様!何フィルド様虐めてるんですか!!」
「フカミ!?」
「え、フカミちゃん?」
頭上から深海の声が響いた。
2階の階段の踊り場からラキザとフィルドを見つけたのだ。
そしてフィルドが泣き出しそうな雰囲気なのも気付いた。
好意には鈍感だが深海は本来勘が鋭い。
特に負の感情には敏感だ。
それは好きな相手になればなるほど直感が冴えわたる。
そして深海はフィルドが泣きそうだと直感で感じた。
バッ!!
深海が踊り場から飛び降りて2人の傍に着地する。
そしてフィルドの手を引いて自分の後ろに隠した。
「おい、俺は別にフィルドを虐めてないぞ?」
「だったら何でフィルド様泣きそうなんですか?」
「俺にも分らん」
ラキザは肩をすくめた。
その動作にラキザが原因ではないと深海は判断した。
そしてフィルドの方へクルリと身を向ける。
「フィルド様、悲しいことがあったんですか?」
「いや、その…」
深海は心配そうな顔をしていた。
【ダークネス】が切れても深海の好意は無くならなかった。
嫌われていない。
それに安堵した瞬間、フィルドの隠された瞳は涙を零し始めた。
「あ、ゴメ――――」
「あぁそんなに泣かないで下さいよフィルド様、綺麗なお目目が溶けてしましますよ?」
「!?」
「本当は涙を拭いたいんですが、前髪上げるとラキザ様にもフィルド様の目が見えちゃいますね…あの綺麗な青銀の瞳は俺が独占したいんですよねぇ」
「俺の目、怖くない、の?」
「何で怖いんですか?あの日言ったじゃないですか、俺はフィルド様の目が好きだからずっと見ていたいって」
(呪いじゃなかった…フカミちゃん、俺の目、本当に好きなんだ………)
「フカミちゃん、俺の目、全部あげるからフカミちゃんを俺に頂戴!」
「おま、何言って!?」
フィルドの目の事情を知っているラキザにすれば、この台詞がフィルドにとって本気のプロポーズだと分かったのだ。
「フィルド様の目が俺のものになるんですか?それは魅力的な提案ですが、俺、特別フィルド様にあげられるものなんて無いですよ?」
「時間を!フカミちゃんの時間を頂戴!!出来るだけ一緒に居たい!近くに居たい!他の誰よりも傍に居たい!」
「う~ん時間、全部はまだあげられませんよ?ナルがいますし。でもナルが恋人でも出来たら、俺は独り身でしょうし、俺の時間位いくらでもあげますよ。俺フィルド様といるの楽しいから好きですし」
ニッ、と深海が笑う。
はっきり言って深海はこのフィルドの言葉がプロポーズだと気づいていない。
だがフィルドが求めてやまないアンサーを導き出してしまった。
「絶対幸せにするね!」
「何か良く分からないけど幸せにしてくれるなら喜んで」
フィルドだけでなくラキザも深海の答えが恋愛に対する答えでないと分かっている。
それでもフィルドが生まれてから求めてやまなかった言葉が、フカミの口から聞けたのだ。
まだ、恋じゃない。
この2人が恋愛感情で今後付き合う事になるのかは分からない。
だが今が幸せそうならそれで良い。
そう思えてラキザはフィルドを祝福すべく、フカミをぎゅうぎゅうと抱きしめだした2人の傍から静かに離れて行ったのだった。
「解けたには解けたんだけど……」
1泊してきたフィルドにラキザは1発殴ってやろうと思っていた。
弟のように可愛がっている深海と1つの部屋に泊まった上、同じベッドで寝たなど保護者(自称)として許せるものではない。
だが帰ってきたフィルドは何時ものチャラけた雰囲気が也を潜めていた。
それどころか乙女のように妙にモジモジとしている。
深海にくっ付かれて顔を真っ赤にしているのだ。
何時もなら自分から引っ付きに行く癖に、だ。
そして深海は異様に上機嫌であった。
その2人の様子を見て深海がフィルドに無体な事をされていないのは理解した。
深海が上機嫌なのは好物だと言うイチゴを堪能したからかと検討づけた。
しかしフィルドの様子だけ変わったのだ。
帰ってきてから速攻ラボに籠り、【ダークネス】の呪いを解くべく5日間引き篭もりをしていた。
その間にラボに入れたものは居ない。
完全に外界はシャットアウト。
人好きのフィルドにはありえない現象だ。
フィルドは人が好きだ。
人の体温が好きだから気に入った人間にはくっ付きたがる。
人と話すのが好きだから気に入った相手にちょっかいをかける。
人の驚いた姿を見るのが好きだから悪戯を仕掛ける。
人の喜ぶ顔が好きだから気に入った相手になら手間も面倒と思わない。
そんなフィルドが5日間も誰にも会わないなど、不気味で仕方なかった。
帰ってきた後の乙女のようなフィルドを見ているラキザにとっては、他の者より気味悪がられた。
そして5日ぶりに出てきたフィルドは【ダークネス】の呪いを解き切ったのだと言う。
何処か残念そうにしていたのは何故なのか?
それがラキザは無性に気になった。
で、冒頭に戻る。
「呪いが解けたら良いじゃないかよ。何をしんみりしてんだ?」
「うん、正直フカミちゃんが俺に心を開いていくれてたのが【ダークネス】の呪いだったらどうしようかと思って…想像したら泣きたくなった………」
泣きたいなどフィルドからそんな言葉が出るとは思わなかった。
よくフィルドはウソ泣きをするが、ソレはふざけてするものだ。
本気でフィルドが泣いているところなど、20年以上の付き合いがあるラキザでも見たことがない。
「なんでお前が泣くんだよ?」
「………だってあんなことありえない」
ボソリとフィルドが呟いた。
あんな人間が持ちえない目を「好きだ」なんて言うはずがない。
きっと【ダークネス】の影響だ。
そう考えるとフィルドは今にも泣きたい思いだった。
(あ、ヤバい…ほんとに涙が出そう………)
フィルドは鼻の奥がツンとするのが分かった。
「お、おい、どうした急に黙って……」
静かになったフィルドにラキザが慌てる。
「ラキザ様!何フィルド様虐めてるんですか!!」
「フカミ!?」
「え、フカミちゃん?」
頭上から深海の声が響いた。
2階の階段の踊り場からラキザとフィルドを見つけたのだ。
そしてフィルドが泣き出しそうな雰囲気なのも気付いた。
好意には鈍感だが深海は本来勘が鋭い。
特に負の感情には敏感だ。
それは好きな相手になればなるほど直感が冴えわたる。
そして深海はフィルドが泣きそうだと直感で感じた。
バッ!!
深海が踊り場から飛び降りて2人の傍に着地する。
そしてフィルドの手を引いて自分の後ろに隠した。
「おい、俺は別にフィルドを虐めてないぞ?」
「だったら何でフィルド様泣きそうなんですか?」
「俺にも分らん」
ラキザは肩をすくめた。
その動作にラキザが原因ではないと深海は判断した。
そしてフィルドの方へクルリと身を向ける。
「フィルド様、悲しいことがあったんですか?」
「いや、その…」
深海は心配そうな顔をしていた。
【ダークネス】が切れても深海の好意は無くならなかった。
嫌われていない。
それに安堵した瞬間、フィルドの隠された瞳は涙を零し始めた。
「あ、ゴメ――――」
「あぁそんなに泣かないで下さいよフィルド様、綺麗なお目目が溶けてしましますよ?」
「!?」
「本当は涙を拭いたいんですが、前髪上げるとラキザ様にもフィルド様の目が見えちゃいますね…あの綺麗な青銀の瞳は俺が独占したいんですよねぇ」
「俺の目、怖くない、の?」
「何で怖いんですか?あの日言ったじゃないですか、俺はフィルド様の目が好きだからずっと見ていたいって」
(呪いじゃなかった…フカミちゃん、俺の目、本当に好きなんだ………)
「フカミちゃん、俺の目、全部あげるからフカミちゃんを俺に頂戴!」
「おま、何言って!?」
フィルドの目の事情を知っているラキザにすれば、この台詞がフィルドにとって本気のプロポーズだと分かったのだ。
「フィルド様の目が俺のものになるんですか?それは魅力的な提案ですが、俺、特別フィルド様にあげられるものなんて無いですよ?」
「時間を!フカミちゃんの時間を頂戴!!出来るだけ一緒に居たい!近くに居たい!他の誰よりも傍に居たい!」
「う~ん時間、全部はまだあげられませんよ?ナルがいますし。でもナルが恋人でも出来たら、俺は独り身でしょうし、俺の時間位いくらでもあげますよ。俺フィルド様といるの楽しいから好きですし」
ニッ、と深海が笑う。
はっきり言って深海はこのフィルドの言葉がプロポーズだと気づいていない。
だがフィルドが求めてやまないアンサーを導き出してしまった。
「絶対幸せにするね!」
「何か良く分からないけど幸せにしてくれるなら喜んで」
フィルドだけでなくラキザも深海の答えが恋愛に対する答えでないと分かっている。
それでもフィルドが生まれてから求めてやまなかった言葉が、フカミの口から聞けたのだ。
まだ、恋じゃない。
この2人が恋愛感情で今後付き合う事になるのかは分からない。
だが今が幸せそうならそれで良い。
そう思えてラキザはフィルドを祝福すべく、フカミをぎゅうぎゅうと抱きしめだした2人の傍から静かに離れて行ったのだった。
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