聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

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オマケは御使い様になりました

【魔術師長様の恋煩い事情3】

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 出かける前にひと悶着あったが、無事深海はフィルドと出かける事が出来た。
 カカンから見てスティルグマ王国と別の方角の隣国。
 ガフティラベル帝国が1個目の目的地だ。
 ガフティラベル帝国まではフィルドがマーキングをしていたので空間移動で一瞬で移動した。

「瞬間移動、便利ですねぇ」

「大陸でもここまでの距離飛べるのは俺くらいだよ~♬」

「フィルド様って食いしん坊の愉快犯なだけじゃなかったんですね」

「うん、フカミちゃんが俺の事どう思ってるか今の1言で分かったよ」

「ちゃんと尊敬してますよ?」

「欲しいのは尊敬じゃなくて愛情!フィルド様すご~い♡愛してる~♡みたいなのが欲しいの!」

「今俺の中でフィルド様に甘えたの属性が追加されました」

「解せぬ…」

 そんな会話をしながらも2人は手を繋いで歩く。
 人が多いから逸れない様にだ。
 フィルドの方は下心ありありだが。

(俺の手硬いから握り心地悪いだろな…)

(フカミちゃんの手、男みたいにごつごつしてる…頑張ってナルミちゃんを護ろうとした努力の結晶なんだね)

 考えている事は同じでも感情のベクトルが違う。
 深海はマイナスに考えたが、フィルドは深海のごつごつした手が愛おしいものだと感じた。

 確かに深海の手は女らしくない。
 だがフィルドの手に比べるとその手は余りにも小さい。
 やはり女の手なのだ。

(やっぱり女の子、てちゃんと意識させられると男として守ってあげたくなるよね)

 スルリ、とフィルドの手が一瞬深海の手から離される。
 そして次の瞬間、指と指を絡めた握り方に変えられた。

「こっちの方が何か良くない?」

「何かって何ですか?」

 ニカッと笑うフィルドに深海のネガティブな思考は消えた。
 変わりに不思議なポカポカした感情が深海の胸の奥に宿る。
 思わずクスクスと笑いも漏れる。

(こんな笑い方もするんだ~♬可愛い♪)

 普段よく浮かべる好戦的な笑みや、目が笑ってない威嚇の笑みでなく、心から楽しいと言った笑み。
 多分この世界の住民で見たことがあるのはフィルドが最初に違いない。

「この国を探索するんですか?」

「ん~ん、この国に来たのは竜車に乗る為。大陸1の大帝国にしかない、スカイドラゴンに乗る移動がしたいんだ。本命の行きたいところは流石にまだマーキングして無いからね。俺でも一瞬で空間渡れない訳よ」

「ドラゴンに乗れるんですか!?」

 深海の瞳がキラキラ輝く。
 頬も興奮しているのか上気している。
 背伸びしてフィルドに顔を近づけて来たので、思わずその唇に自分の唇を重ねてやろうかと思ったが鳴海が怖いので止めておいた。
 何よりお出かけして瞬殺で深海の信用を失いたくない。

「フカミちゃんドラゴン好きなの?言ってくれれば何時でも変身してあげたのに~」

「ドラゴンも興味ありますけど、俺高い所好きなんですよ!そのためロッククライミングとパルクール取得しましたし!」

「ロック?パルクル?」

「ロッククライミングは岩壁を上ることの総称で、その目的によってふたつの呼び方に分かれます。
ひとつ目は、アルパインクライミング。特定の山の山頂を目指すタイプのクライミングです。ふたつ目はスポーツクライミング。登頂を目指すのではなく登ること自体を楽しむためのクライミングです。
登頂を目指す登山がアルパインクライミング、山歩きを楽しむトレッキングがスポーツクライミングと考えるとイメージがつきやすいかもしれません。
パルクール とはフランスで生まれたトレーニング方法です。
壁を駆け上がったり、登ったり、障害物を飛び越えたり、正確な着地、また、受け身を取る)など、 自分の周囲にあるものを使って移動を行い、人間が本来持っている運動能力を自然に養っていきます」

「あ~だからフカミちゃんてば、たまに魔術も使ってないのに高い所に居たりするんだ!」

「高い所に行きたい一心で覚えました」

「何でそんなに高い所が好きなの?」

「何ででしょうね?前世は鳥だったのかもしれませんね。それか反対に鳥に焦がれた地上の生き物だったのかも知れません」

「今度から飛ぶときフカミちゃん抱っこする!」

「俺重いですから無理しなくて良いですよ」

「良いの!俺がしたいの!!そして今までしなかった事を悔やんでる!フカミちゃんの初フライングをドラゴンに譲る事になるなんて!!」

「別に順番何かどうでも良いじゃないですか」

「良くない!よし、竜車乗る前にあっちで少しだけ飛んどこう♪」

 そう言ってフィルドは裏通りの誰も居ない場所に行くと、深海を横抱きにしてふわり、と浮き上がった。

「うわぁ、本当に飛んでる。良いなぁ自分で飛べるの。フィルド様はいつもこんな視界で移動したり出来るんですね!」

 深海が少しでもフィルドの腕の負担を減らすために、自ら腕をフィルドの首に回し体を密着させる。
 そうした方が持ち上げる時に楽になるのを知っているからに過ぎなかったからなのだが、フィルドには十分な刺激だった。

(うわ~うわ~フカミちゃん柔らかい!胸、当たってる!ボリューム凄い!それに何か良い匂いする!!あ………)

「フィルド様、もう良いですよ?早くしないと竜車の時間逃しませんか?」

「そだね、降りるけどちょっと待ってね。地面に降りたら少し休ませてね………」

「あ、やっぱり重かったですか?すみません筋肉で俺の体かなり重いんですよ」

「いや、重さよりも柔らかさの方が気になった…それに生理現象で少し動けないだけだから気にしないで~」

 地面に座り込んで三角座りのフィルドの横に深海も座る。
 本日はスカートの為、ちゃんと足を閉じてすわる。

(プロが相手でもこんな簡単に反応しないんだけどなぁ…俺もまだまだ若いなぁ~………)

 こうして目的地到着時間がまた少し先延ばしになるのであった。
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