聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

文字の大きさ
上 下
75 / 161
オマケは御使い様になりました

【魔術師長様の恋煩い事情2】

しおりを挟む
「うわーうわーフカミちゃんが女の子だー!可愛い!可愛いっ!!」

 ギュム―ッ!

 深海たちの部屋にやって来たフィルドが深海の姿を見て興奮して、その体を抱きしめた。

「フィルド様、クルシッ―――」

「本当に可愛いねぇ………」

 ほぅ、とフィルドが息を吐くように口に出した。
 声に熱が籠っていた気がする。
 何時ものおちゃらけた声色じゃなくて、その言葉は真剣みを帯びている。

 出かける用意をした深海の格好は鳴海と交換した、ブレザー型の女子モノの制服。
 胸は抑えていないのでその大きな膨らみはブレザーを押し上げて、その質量を主張している。
 ひざ丈上20センチのスカート。
 普段足を隠している深海には拷問のような恥ずかしさだ。
 下にはくスパッツを持って来てて良かった。
 空気が直接下着に当たるのは心もとない。

 ちなみに深海は下着は女子用のボクサーパンツだ。
 可愛いちっちゃな布切れにリボンやフリルが付いている、the女子!と言った可愛いものでは無い。
 寧ろそんな可愛い下着を好むのは鳴海の方だ。

 安心して下さい、履いてませんよ!

 ちゃんと男物のボクサーパンツ(ちなみに柄はパステルカラーの花柄が多い)を履いております。
 
「はぁ~ナルミちゃんありがと♫」

「頑張って下さいねフィルド様。ふーちゃんは鈍いですから、そうそう簡単に落とせるだ何て思わないで下さいよ」

「ナルミちゃんて可愛いのに怖いよね~。味方か敵か分からないし」

「ん~ふ―ちゃんを任すとして地位と名誉と能力は申し分ないですけど…まだよく分かってないふーちゃんを言い包めて不謹慎な事したら流石に許せないですね」

 ニッコリと鳴海が笑う。
 男物の制服を着ているのに女の子に見えるので不思議である。

「それにしても可愛いねぇフカミちゃん♬柔らかいしやっぱり女の子だね~♩」

「う”う”う”う”」

 フィルドの腕の中で藻掻く深海。
 その顔は耳まで真っ赤だ。

 流石に此処まで言われれば鈍い深海でも意味が分かる…何て期待してはいけない。

 フィルドは魔術師の癖にやたら力強い。
 長身だからリーチもあるし筋肉もしっかり付いているので中々の力で深海を締めあげている。
 深海は息苦しくて腕から逃れるのに必死でフィルドの発言は聞こえていないのだ。

「まぁ、ふ―ちゃんをたっぷり楽しませてあげて下さいね。長時間貸し出すんですから」

「んふふふふ~勿論♫目一杯楽しませてあげちゃうもん♩他の男に見向きもしないぐらい楽しませちゃうよ~♪」

 チュッ

 フィルドが己の腕の中にいる深海の旋毛にキスを落とす。

「ちょっ、まだそこまでして良いと言ってないですよフィルド様!!」

「え~ちょっと位いいじゃん。ナルミちゃんのケチ~、減るもんじゃ無いんだし♪」

「じゃぁ他の誰かがふ―ちゃんの髪にキスしたらどうします?」

「え、そんなの9割殺しに決まってるでしょ?お好きな属性魔術でヤッてあげるよ!」

「減らないんじゃなかったんですか?」

「何かが減るからダメ!」

「ね、減るでしょう?」

「うん、確かに減るねぇ…うん、俺もちゃんと我慢するよ!」

「じゃぁふ―ちゃん腕から出して下さい」

「りょーかいだよー」

 フィルドが拘束を解いたが深海はフィルドの胸にしな垂れかかったままだ。

「え、ふーちゃん…もしかしてフィルド様の事……」

「え、え?本当!?」

 ズルズルズル

 そのまま重力に従って深海はずり落ちていき、最終的に床とお友達になった。

 鳴海とフィルドが口論(?)をしている間、碌に息が出来なかった深海は見事に酸欠で失神していた。

「ふーちゃーん!!」

「フカミちゃ―――――っん!!!」

 鳴海とフィルドの絶叫が部屋に木霊した。
 このせいで出発は1時間遅れる事になったのだった。
しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...