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オマケは御使い様になりました

【魔術師長様の恋煩い事情】

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「フカミちゃん明日予定空いてたよね?ちょっと俺に付き合ってくんないかな~?」

 本日のお菓子スコーンのお披露目の後、厨房を出た深海にフィルドが声をかけて来た。
 ちなみに厨房の後片付けは見学者たちが行う。
 見学者と言う名の新作メニュー試食し隊たちがだ。 
 その分深海も多めにつくるのでwinwinな関係である。

「良いですが、お仕事なら俺は邪魔にならないですか?」

「寧ろ役に立つ立つ♫ね~い願い、一緒に来てよ~♪」

 子供みたいな言い方をしてコテリ、と首を傾げる。
 188cmの大男なのにやたらと可愛い。
 そして深海は可愛い物が好きだ。
 可愛ければ男だってヨスヨスしたくなる。

「何時ですか?」

「一緒に来てくれるんだ、やった~♪。昼食の後とかで良いかな?」

「では出かける準備しておきますね」

「うん、宜しくね♬」

 前髪で目が見えないのに、髪の奥の目がキラキラ輝いているように深海には感じた。
 尻尾があればはち切れんばかりに振られていた事だろう。

(うふふ~フカミちゃん喜ぶかな~♬)

(何の用か分からないけど久しぶりに王宮を出るのも気分転換に悪くないな。フィルド様とは一緒にいると楽しいし)

 そして夜は更けていく。

 :::

「ふーちゃん!これからだよねフィルド様と出かけるの!?」

「ん、あぁ昼食食べて小一時間ほどしたら、て言われてるからな」

「じゃぁ、間に合うね!」

「何が?」

「準備」

「え、このままで良いけど?」

「ありえなーっい!何で?何で年頃の男女が2人きりで出かけるのに敢えて男装?そこはしっかりお洒落するところでしょー!!!」

「いや、フィルド様は別にそんなん求めてないとおm-ーー」

「着替えるわよふーちゃん」

「ナル、目が怖いぞ……」

「ウィッグ付けろとかドレス着ろとか言ってる訳じゃないの!ただ男物の制服は余りにもフィルド様が可哀想でしょ!!」

「あ、あのな、ナル…」

「口答えは許しません。今後1ヵ月私と口きかないのと制服交換するの、どっち取るの?」

「………制服交換します」

「わーい、久しぶりのふーちゃんの女子制服♡あ、メイクは何色が良い?」

「メイクもするのか!?」

「だって女子の制服だよ?メイクした方が可愛いじゃない」

「メイクは断固拒否する!」

「分かったわよ。じゃ、リップだけで勘弁してあげるね♡」

「リップは決定事項なんだな……」

 すでに出かける前から深海は疲れ切っていた。

 :::

「ん~良い出来♡可愛いよふーちゃん♡」

「俺には女装の男にしか見えん」

「それにしてもスポブラとスパッツは持って来てたんだね。相変わらず何でも入ってるリュックだね~」

「俺のリュックはデカいが、ナルの小さなポーチの何処にあんだけのメイク道具が入っているのかの方が理解できないぞ?」

「女の事はそう言うものなの♡」

「あとサブのバッグは持って行くか。財布とスマホとハンカチぐらいは入れたい」

 ちなみにスマホはフィルドが雷属性の魔術で充電してくれている。
 深海と鳴海しかスマホは持っていないが色々と充実した機能は役に立つ。
 ネットが繋がらないのは大層残念だが。
 だが深海も鳴海も2人ともスマホを持ち歩くので離れた場所から会話が出来ると言うのは便利だ。
 フィルドや魔術師団副団長達くらいになると念話も可能らしいが。
 魔術適正が殆どない深海には不可能な話しである。
 と言うか出来る人間の方が圧倒的に多い。

「じゃぁ私のバッグ貸してあげる♡この前可愛いバッグ貰ったんだ♡」

 未だに”聖女様”な鳴海への献上品は定期的にある。
 今回貸してくれるのは商人から貰ったものらしい。
 ほどほどの大きいさのショルダーバッグで淡い水色。
 派手さが無いので制服と合わせても変に浮いたりしない。

「んじゃ借りるぞ。何処に行くかは知らないがナルが好きそうなものがあったらお土産に買って来よう」

「そう言うのは良いから、今日は目一杯フィルド様と楽しんできてね♡」

「何か知らないが分かった」

(フィルド様も大変だなぁ、ふーちゃん鈍すぎるもんね~)

 男装が板につきすぎて自分が女である事を半場忘れている双子の妹を見ながら、ナルは心の中でフィルドにエールを送る事にした。
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