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オマケは御使い様になりました

【女性を虜にするあのお菓子】

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「み、見つけた―――――――っ!!」

 倉庫から深海の絶叫が響いた。
 偶然扉の前を通っていた使用人はビクリと飛び上がった。

「何が見つかったのふーちゃん?」

「これ」

 深海は取り上げたのは1つの木の実。
 中々おおぶりだ。

「カカオの実だ!」

「カカオ?それじゃぁ!!」

「チョコレートが作れる!ついでにバレンタイン商戦も仕掛けられるぞ!」

 食い意地が張っているだけでなく、すぐさま金儲けに思考が移る辺り深海の思考はカグウの色に染められてきている。

「でも水飴じゃチョコレート出来ないよね?お砂糖は高いんでしょ?」

「だから上流階級を狙って商品を売り出す!ふふ、金貨の音が聞こえてくるようだ」

 すっかり守銭奴になった片割れを見て、鳴海の目は何か残念そうなものを見る目をしていた。

 :::

「と言う訳でチョコレートを作ります」

「チョコレート?」

「新しい菓子か?」

「新しい菓子です。焼き菓子にも利用できるので是非コキョウ様も見学していて下さい。それからフィルド様は魔術で援助お願いします」

「りょうか~い♪」

 フィルドがプカプカ宙に浮いている。
 衛生的に良くないので深海は両足首を持って地面に引き摺り降ろした。

「んぎゃ、フカミちゃん俺の扱い酷くない!?」

「料理作りには衛生管理は必須!1回食中毒起こすだけで業務停止されることもあるんですからね!」

「な、何かわかんないけど、りょ~か~い」

 フィルドも深海の扱いに満更でもない。
 ラキザとばかり連るんでいる深海の興味を引けるのは嬉しいのだ。

「では取り掛かります」

 ①カカオ豆は、収穫後に現地でバナナの皮にくるんで数日間発酵させます。
 発酵させることによって、チョコレート独特の風味が生まれるらしいです。
 発酵後、乾燥させ輸出されます。

「では時間が無いのでフィルド様治癒と乾燥を」

「ほい♪」

 ②130度のオーブンで25分間ローストしました。 
  香ばしいチョコレートの香りが漂います。

 ③ローストした豆の殻を剥きます。

「皆さん力を合わせましょう」

 ひたすらカカオ豆の殻を厨房に居る皆で剥いて行く。
 無言である。
 
 ④カカオ豆をグラインダーで細かく砕き、さらにすり鉢で細かくします。
 滑らかな口溶けのチョコレートを作ろうと思うと、どれだけ細かく出来るかで勝負が決まってきます。
 舌で粒を感知しなくなるには、25ミクロン以下の微粒子になるまですりつぶす必要があります。

「で、時間がかかるのでフィルド様、風魔術を」

「風魔術~♫」

 ⑤ガリガリ感は無くなりました。
 すりつぶしていると言うよりは、練っているという感覚になっています。
 では、次の工程に進みましょう。

 ⑥カカオバターと粉砂糖を加え、ひたすら練ります。
 カカオバターとは、カカオ豆から絞り出した油分のことです。
 チョコレート作りを知るうえで以下の事を理解する必要があるのでちょっと説明しますね。
 カカオ豆をすりつぶしたものをカカオマスと言います。
 カカオマスから絞り出した油分をカカオバター(ココアバター)と言います。
 油分を絞り出した後の搾りかすをココアパウダー(カカオパウダー)と言います。

 ⑦チョコレートを50℃ → 27℃ → 32℃と温度調整を行います。
 普通は湯煎でやります。
 テンパリングは、チョコレートの油分の結晶を安定化させるものです。
 これを行うことによって風味や口溶けがよくなります。
 そして、これができたらチョコレートとして完成です。

 ⑧そして、テンパリングが済んだチョコレートを型に入れて冷やします。
 冷蔵庫で一気に冷やすより、常温でゆっくり冷やすほうが良いらしいです。

「冷やす時間と寝かす期間が長いので【治癒】と【冷却】お願いします」

「そ~れ、2種類混合魔術~」

 さらっとフィルドは行っているが、同時に複数の魔術を使う。
 さらにはソレを混合させるなんて技術は大陸中探してもフィルドしかいないかも知れない。

「完成です。どうぞ試食を行って下さい」

 皆が泥の塊の様なソレに顔を青くしている。
 あの黒い物体が菓子だとは思わないのだ。

「んじゃ、俺貰ね~今日の功労者だから♬」

 フィルドが欠片の1つを取って、警戒心なく口に放り込んだ。

「んっっっっまっ!甘いのにくどくない!鼻から抜ける香りが堪らないね~♡コレは癖になるわ♬」

「どれどれ」

 ラキザが一摘まんで口に放り込む。

「~~~~~~~っ!!」

 言葉にならないらしい。
 
 流石はチョコレート。
 人の心を掴んで離さない魔性のお菓子だ。

「「いただきます」」

 双子が丁寧に手を合わせてチョコレートを摘まむ。

「うん、上出来だな」

「ふ~ちゃぁ~ん、チョコレートだよチョコレート!!」

  鳴海がキャッキャッとはしゃいでいる。
 片割れの嬉しそうな顔を見て、苦労した甲斐があったと深海は満足した。

「これは焼き菓子にもつかえるのか?」

「勿論、チョコレートはお菓子作りの万能選手ですよコキョウ様!」

「カグウは喜ぶだろうか…」

「「きっと喜びます!!」」

 見事に双子の声がハモった。

 砂糖を使うので高値にはなるが、その内安値でも売り出せるようにしたい。
 きっとこれまでには無い甘味で大陸全土を揺るがすだろう。

「取り合えず今日の焼き菓子はチョコレートを使ったものにしましょうか!コキョウ様、美味しいチョコレート菓子にカグウ様も喜色満面の笑顔を浮かべてくれますよ!」

「今日も指導を頼むぞナルミ」

「はい、任せて下さい」
 
 鳴海とコキョウは意外と良い師弟関係になっているらしい。
 平和な事この上ない。

 :::

 お茶の時間、今回はチョコレートが出された。
 それにカグウが舌鼓を打つ。
 これは珍しいことだ。

「改良は任す。市民でも頑張れば食べれるようにしてくれ。後上流階級に流す奴は少し値が張っても構わない。他の王国の貢物になるだろうからな」

 ニヤリとカグウが笑う。
 それを見たコキョウが無言無表情でマナーモードの様に小刻みに震えていた。

「必ず美味しい菓子を提供する!」

「茶の供を楽しみにしているぞ」

 コキョウノ全身が真っ赤に染まった。
 そして乙女の様に倒れたが、その体を軽々抱きとめたカグウは意外とスパダリなのかもしれない。
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