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【悩める兵士と怒れる姫】

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「クロナ、俺たちは戦争するのか?」

「急にどうしたのミラー?」

 泣きはらした目の幼馴染が、アポも取らずにクロナの自室に来たのでクロナは驚いた。
 幼馴染とはいえその辺りは普段はちゃんとしているのだ。
 休暇で町に出て行っていると聞いていたがそのミラーが泣きはらした目でクロナに会いに来たのだ。

 ミラーは決してそう泣く方ではない。

 そんな幼馴染が平民の服を着て目を真っ赤にはらしてクロナの所に来た。
 正直何が起きたのかクロナにはさっぱり分からなかった。
 そして突然の”戦争”発言に対しても。

「私たちは戦争なんてしないわ。少しばかり武力を誇示して他国に私たちの国の傘下に入って頂くだけよ。ナルミ様のブーストの能力があれば戦争なんて回避出来るもの」

「じゃぁ相手が闘う気を無くさなかったらどうするんだ?反抗する者をブーストで戦闘能力を上げたカカンの兵士が皆殺しにするのか?」

「そんな事は起こりえないから大丈夫よ」

「何で起こりえないって言いきれるんだ?」

「聖女様がいるもの。国を救う聖女様を召喚した。その聖女様がブーストの能力を持っていた。
これは天が聖女様の能力を上手く使い傾いたこの国を立て直しなさいと言っているのよ」

「俺は!絶対に皆が完全降伏してくれるなんて自信がない…降伏しない奴も絶対1人2人はいるよな?
全然居ないなんてそっちの方がありえないよな?
俺は兵士だから闘わないといけないよな?俺は聖女様の能力で圧倒的な力でその降伏しない奴を殺さないといけないのか?」

「ミラー、お昼に何があったの?」

「俺の質問に答えてくれクロナ」

「ミラー、誰が貴方にそんな思想を植え付けたの?王宮の外で誰と会ってたの?」

「なぁ教えてくれよ」

「先に私の質問に答えて頂戴」

 拳を握りしめて俯いたままミラーは無言になった。

「愚王の親衛隊?」

 ミラーは動かない。

「もしかしてあの異物かしら?」

 ピクリ、とミラーの体が動いた。

「そう、あの異物に余計な思想を植え付けられたのね。忌々しい愚王の犬になったあの異物に。私の召喚を失敗と言われる原因を作ったあの異物。
私に貴族たちの前で恥をかかせた、あの忌々しい異物が、貴方に余計な事を吹き込んだのね」

 クロナはギリッ、と整えられた綺麗な親指を噛んだ。

「忌々しい愚王の忌々しい犬に成り下がった忌々しい異物。どこまで私の邪魔をする気なのかしら?」

 クロナの色素の薄い瞳の奥で冷たい炎が燃え上がった。
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