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【オマケの王都散策事情②】
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フィルドが買ってきた串焼きをフィルドと2人仲良くモグモグする。
串焼きが売っているとは思わなかった。
まだまだ庶民に串焼きは用意出来るとは思わなかったのだが。
筋張った牛肉を塩をかけて焼いただけのシンプルな料理だ。
王宮で食べる食事より格段に落ちるが庶民が食べるならそれなりに高価だろう。
「王都で肉が食べられるなんて~、とか思ってるねフカミちゃん」
「頭の中覗きました?」
「ううん、顔に出てた。意外とフカミちゃんて顔に出るよね」
「それはお恥ずかしい。疑ってすみませんフィルド様」
「まぁ日ごろから覗き魔してる俺が悪いんだけどね~。でもよっぽどのことが無いと俺そんなに覗かないよ。一応公私混同しない様に気を付けってるのよ俺だって」
口を尖らせるフィルドの態度は成人男性とは思えない。
が、それが似合ってしまうのがフィルドである。
本日もあざと可愛い。
「で、どうして屋台で肉が食べれるんですか?」
「カグウがね~農村地帯で死んじゃった牛とか貰って屋台で売るようにした訳よ。だからあの店は国が経営してる事になるのね。いずれ経済が落ち着いたら屋台事、購買経路からなんやかんや含めて市民に買い取ってもらう予定」
「流石カグウ様抜け目ない」
この調子だともっと質のイイ屋台が出来るのも時間の問題ではないだろう。
街が潤ってきているのが端々に見て取れる。
やはり人間が住む所は活気があったほうが良い。
「あ、こっち収容所ね。何色から見る?」
「軽い順からお願いします」
「緑、黄色、赤の順番ね。黒はいいかな?」
「黒は無しですね。赤も俺が行っても出来ることがないので」
「ま、そうだよね。黒の方にはカグウが教会側に処理を頼んであるみたいだから覗いても大してフカミちゃんが知りたい情報ないだろうし」
確かにもう命のないものに深海が出来ることがない。
精々手を合わせるくらいだろう。
中に入ればこのシステムを用いた罪悪感に呑まれることは容易に想像がついた。
幾ら深海が知識量が多かろうが深海は平和な国で死体なぞ見ずに生きてきた。
精々棺桶に収まる祖父を見たことがあるくらいだ。
それすらエンジェルケアがされていて寝ているかのように綺麗なものだった。
それを直接言ったわけでないのにカグウは深海の世界での生活において死体を見る機会がないことを汲み取ってくれたらしい。
全くもって頭の回る王である。
フィルドと会話しながら案内された収容所、グリーンタッグの簡易建物の中に入る。
「御使い様!来て下さったんですか!!」
「あの方が聖女様のお兄様か」
「想像していたより華奢なんだな。でっきり勇者様のような恰幅の良い戦士姿を塑像していた」
「あら、筋肉馬鹿より知的な美少年の方が良いじゃない」
この世界では珍しいデザインの制服を着ていたためすぐに深海が異世界から召喚された者だと気付かれたらしい。
建物の中も活気づいていた。
木造で作られた建物は窓をたくさん取り付けてられている。
深海がカグウに収容所を作る時に強請ったものの1つだ。
ガラスを付けるほどの余裕はなかったので木製の扉で締めるタイプだ。
常に部屋に新鮮な空気が入るため清浄な空気が室内に満ちていた。
窓から光が入る室内は明るく陰鬱な感じはしない。
皆表情は明るく、初めて顔を見るであろう深海に快活に話しかけてくる。
しかも様つけだ。偉く慕われたものだと深海は驚いた。
「御使い様のお陰でウチの家族が飢えから免れたんです!表情も明るくなって。今までは国の兵士や教会の方が何か施して下さった時に謝礼を払わなければいけなかったんですが、今は自分で働いて賃金を貰えるうえに食事まで付いて来て、ベッドも柔らかくなったし!!」
「炊き出しもジャガイモ以外の物が食べれて良いわよね~。ラキザ様も良い男だし♡」
(率先して炊き出し作ってんのかよ宮廷聖騎士長!)
流石に心の中でだが思わす深海は突っ込んだ。
確かにラキザの性格上炊き出しを作るのは向いて居そうだが。
「御使い様!この”シップ”てやつよく効きますよ!前まで上がらなかった腕がまた上に伸ばせるようになりました!!」
「御使い様、私も膝の痛みが引いたんです。この”カンポーヤク”のお陰です!」
「それは良かったです。ところでその御使い様と言うのは……?」
「聖女様と同じく召喚されたのですからフカミ様は御使い様です!天が我々にフカミ様を遣わせて下さったのです!!」
「俺あくまでオマケ扱いなんですがねぇ」
流石に照れたのか深海が頬を掻く。
「御使い様の呼び名受け取っても良いと思うよ~。少なくとも王都の民にそう思わせてしまうくらいにフカミちゃんは成果を上げたんだよ」
フィルドの率直な言葉に流石に深海も照れる。
シップも作って良かったな、と思いながら。
ちなみにシップは手近な物で作れる安価の簡易シップだ。
こんなに喜ばれるなら作っておいて正解だったと思った。
簡易シップは材料は小麦粉と酢の2つだけだ。
小麦粉1カップくらいに、酢を適量混ぜる。
トロロ芋状になるよう、調節しながら混ぜ、あとはガーゼに塗り、負傷面に当ててテープ等で止めるだけだ。
時間があれば、小麦粉はよく炒ってから酢を混ぜたほうが効果がある。
テープは深海がリュックに入れていたものだから今後テープの代わりになる物を作る必要がありそうだ。
無意識に深海は”急いで元の世界に帰らねばならない”と言う使命よりカカンの国を案じる方へと心が傾いていた。
串焼きが売っているとは思わなかった。
まだまだ庶民に串焼きは用意出来るとは思わなかったのだが。
筋張った牛肉を塩をかけて焼いただけのシンプルな料理だ。
王宮で食べる食事より格段に落ちるが庶民が食べるならそれなりに高価だろう。
「王都で肉が食べられるなんて~、とか思ってるねフカミちゃん」
「頭の中覗きました?」
「ううん、顔に出てた。意外とフカミちゃんて顔に出るよね」
「それはお恥ずかしい。疑ってすみませんフィルド様」
「まぁ日ごろから覗き魔してる俺が悪いんだけどね~。でもよっぽどのことが無いと俺そんなに覗かないよ。一応公私混同しない様に気を付けってるのよ俺だって」
口を尖らせるフィルドの態度は成人男性とは思えない。
が、それが似合ってしまうのがフィルドである。
本日もあざと可愛い。
「で、どうして屋台で肉が食べれるんですか?」
「カグウがね~農村地帯で死んじゃった牛とか貰って屋台で売るようにした訳よ。だからあの店は国が経営してる事になるのね。いずれ経済が落ち着いたら屋台事、購買経路からなんやかんや含めて市民に買い取ってもらう予定」
「流石カグウ様抜け目ない」
この調子だともっと質のイイ屋台が出来るのも時間の問題ではないだろう。
街が潤ってきているのが端々に見て取れる。
やはり人間が住む所は活気があったほうが良い。
「あ、こっち収容所ね。何色から見る?」
「軽い順からお願いします」
「緑、黄色、赤の順番ね。黒はいいかな?」
「黒は無しですね。赤も俺が行っても出来ることがないので」
「ま、そうだよね。黒の方にはカグウが教会側に処理を頼んであるみたいだから覗いても大してフカミちゃんが知りたい情報ないだろうし」
確かにもう命のないものに深海が出来ることがない。
精々手を合わせるくらいだろう。
中に入ればこのシステムを用いた罪悪感に呑まれることは容易に想像がついた。
幾ら深海が知識量が多かろうが深海は平和な国で死体なぞ見ずに生きてきた。
精々棺桶に収まる祖父を見たことがあるくらいだ。
それすらエンジェルケアがされていて寝ているかのように綺麗なものだった。
それを直接言ったわけでないのにカグウは深海の世界での生活において死体を見る機会がないことを汲み取ってくれたらしい。
全くもって頭の回る王である。
フィルドと会話しながら案内された収容所、グリーンタッグの簡易建物の中に入る。
「御使い様!来て下さったんですか!!」
「あの方が聖女様のお兄様か」
「想像していたより華奢なんだな。でっきり勇者様のような恰幅の良い戦士姿を塑像していた」
「あら、筋肉馬鹿より知的な美少年の方が良いじゃない」
この世界では珍しいデザインの制服を着ていたためすぐに深海が異世界から召喚された者だと気付かれたらしい。
建物の中も活気づいていた。
木造で作られた建物は窓をたくさん取り付けてられている。
深海がカグウに収容所を作る時に強請ったものの1つだ。
ガラスを付けるほどの余裕はなかったので木製の扉で締めるタイプだ。
常に部屋に新鮮な空気が入るため清浄な空気が室内に満ちていた。
窓から光が入る室内は明るく陰鬱な感じはしない。
皆表情は明るく、初めて顔を見るであろう深海に快活に話しかけてくる。
しかも様つけだ。偉く慕われたものだと深海は驚いた。
「御使い様のお陰でウチの家族が飢えから免れたんです!表情も明るくなって。今までは国の兵士や教会の方が何か施して下さった時に謝礼を払わなければいけなかったんですが、今は自分で働いて賃金を貰えるうえに食事まで付いて来て、ベッドも柔らかくなったし!!」
「炊き出しもジャガイモ以外の物が食べれて良いわよね~。ラキザ様も良い男だし♡」
(率先して炊き出し作ってんのかよ宮廷聖騎士長!)
流石に心の中でだが思わす深海は突っ込んだ。
確かにラキザの性格上炊き出しを作るのは向いて居そうだが。
「御使い様!この”シップ”てやつよく効きますよ!前まで上がらなかった腕がまた上に伸ばせるようになりました!!」
「御使い様、私も膝の痛みが引いたんです。この”カンポーヤク”のお陰です!」
「それは良かったです。ところでその御使い様と言うのは……?」
「聖女様と同じく召喚されたのですからフカミ様は御使い様です!天が我々にフカミ様を遣わせて下さったのです!!」
「俺あくまでオマケ扱いなんですがねぇ」
流石に照れたのか深海が頬を掻く。
「御使い様の呼び名受け取っても良いと思うよ~。少なくとも王都の民にそう思わせてしまうくらいにフカミちゃんは成果を上げたんだよ」
フィルドの率直な言葉に流石に深海も照れる。
シップも作って良かったな、と思いながら。
ちなみにシップは手近な物で作れる安価の簡易シップだ。
こんなに喜ばれるなら作っておいて正解だったと思った。
簡易シップは材料は小麦粉と酢の2つだけだ。
小麦粉1カップくらいに、酢を適量混ぜる。
トロロ芋状になるよう、調節しながら混ぜ、あとはガーゼに塗り、負傷面に当ててテープ等で止めるだけだ。
時間があれば、小麦粉はよく炒ってから酢を混ぜたほうが効果がある。
テープは深海がリュックに入れていたものだから今後テープの代わりになる物を作る必要がありそうだ。
無意識に深海は”急いで元の世界に帰らねばならない”と言う使命よりカカンの国を案じる方へと心が傾いていた。
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