聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

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【オマケと紙と衛生事情②】

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「初めましてキーリョって言います。御使い様ヨロシクっす!」

 やたらとキラキラした青年に満面の笑みで微笑まれた。
 金糸の髪が風に揺られて輝いて見える。
 ラキザの推薦で今回の作業の手伝いをしてもらう事になった聖騎士団の1人だ。

 カグウも美形だがこのキーリョもかなりの美形だ。
 細身の長身でスタイルも良い。
 そしてソレをしっかり自覚しているのだろう。
 自分の笑顔の威力と言う物を知っている。
 美形だが近寄りがたい感じはなくてニコニコ微笑んでる姿は大型犬を連想させる。

「俺、ヴィオレット。よろしく~」

 2人目は2mはありそうな紫色の長髪の大型で気だるげな青年。
 下手したら何時も寝てるチノシスより気だるげだ。
 だがその手にあるのは大ぶりのリンゴ。
 先ほどから休めることなく手を口に運んでいる。
 初対面の相手にする態度ではないがこの食への執着がこの体躯を作っているのかと深海は思った。
 そしてやはりイケメンである。
 この王宮には美形しか所属できないとかの決まりでもあるのだろうか?

 そして2人の後ろに数十名の兵士たち。
 こちらは皆平凡な顔もありイケメンしか王宮に所属できない訳ではないことを物語っていた。

 街で集った人員は50人を超えていた。
 皆、身なりはボロボロだ。
 兵士たちと比べて血気もない。
 体力勝負出来るのかと思うが少しの給金と炊き出しがそれほど彼らには魅力的なのだろう。

「「「「宜しくお願いしますサザナミ様!」」」」

 多少むむさくるしいが人員は少しでも多い方が良い。

「今日はよろしくお願いしますね皆さん」

 深海もにニコリと笑顔を浮かべる。
 途端兵士たちがざわついた。

”聖女様もお可愛い方だがお兄様も噂と違ってお綺麗な方だな”

”確かに何とも言えない色気があるな。ラキザ様が落ちかけたのも頷ける”

”俺、お兄様なら男でもOKだわ”

 ヒソヒソヒソ。
 深海と滅多にエンカウントすることのない兵士たちの声が深海の耳に聞こえる。

(うん、聞かれたくないならもう少し小さな声で話せや脳筋)

 ちょっぴり怒りな深海である。
 まぁそれはそれで良いのだが、困ったことが1つ。
 深海が男であるがそれに色気を感じて同性でもイケるかも、と思った者たちのせいで何人も道を踏み外した者が多数いる事だ。
 自分は同性でもイケると勘違いした同性同士が互いの悩みを語っているうちに愛が芽生えるパターンが1番多いらしい。

 ちなみにフィルド調べだ。
 2番目以降も聞けば答えてくれるだろうがあえて聞きたいとは思わなかった。
 おかげでお腐れ様たちは大喜びだしカグウには怒られるし。
 深海はカグウに”国民が減るような非生産的な行動を起こさせないように”と言いつけられてしまったのだ。
 全くもって解せぬ話である。

「あらやだ、騎士団の脳筋たちに先に集まられるなんて」

 明らかに女の声の高さではない、女の口調が騎士団達を小馬鹿にするようにかけられた。

「来たっすね、魔術師班!」

 キーリョの発言を切欠に兵士たちがざわざわとしだす。
 明らかに敵意を剥き出している。
 どうやら兵士団と魔術師班は仲が悪いようだ。
 うん、知っていた。
 伊達に1ヵ月もカカンに居る訳ではない。
 それも踏まえた上でラキザとフィルドに穏便に事が運ぶ人選をしてもらうつもりだったのだが。

(手ぇ抜きましたね2人とも!)

 心の中で深海は2人への報復を考えた。
 キーリョが忌々し気に見ている先には緑のローブを羽織った3人組。
 1人は美麗な顔に長めの碧色の髪に紫の瞳の青年。
 1人は短い金髪に猫の様な茶色の大きな瞳の青年。
 1人は坊主頭に褐色の肌の異様にマッチョな青年。

(凄い筋肉だな…しかし何故に魔術師が筋肉……?)

 思わず深海も驚愕する。

「やーん、貴方が聖女様のお兄様ね♡フィルド様から聞いていたけど噂以上の美少年じゃない♡結構私、こ・の・み♡何でもイイ付けて頂戴ね♡あ、私の事はネオレって呼んでちょうだいね♡」

 パチリ、とウインクされる。
 顔が整っているので不自然さはないが声は低く身長は平均よりも高いため違和感この上ない。
 生理的に受け付けてしまうのは顔が整っているお陰だろう。
 まさに”イケメンに限る”と言ううやつだ。
 そしてその話し方で先ほど声をかけてきたのはこのネオレであると分かった。

「よ、よろしくお願いしますネオレさん。つーか距離近くないですか?」

「んふ、スキンシップは一番のコミュニケーションよ♡そう思うわよねマヒロさん♡」

「まぁ思わなくはないが普通はソコまで距離を詰めないな。獲物を狩る肉食獣の眼に近いぞ今のお前」

「うわぁ、何時の間に居たんですか?」

「ずっと居た。寧ろ誰よりも早く居た。喋りかけられたくなかったから隠匿の魔術でソコの木の下でこのパピルス紙に書かれた器具を作る錬成陣の組式を考えていた」

「マヒロさん相変わらずね」

 ネオレは呆れたような声を上げる。
 どうやら彼はマヒロと言うらしい。

「あ、もしかしてマヒロさんは錬金術師ですか?」

「あぁ、この国で1番の錬金術師だ(ドヤァ)しかし、絵が上手いな。今度書いて欲しい絵があるんだが」

「は?絵ですか?」

「姫と巫女の純愛ラブストーリーの話しに絵を付けて欲しい。その為にも紙とやらを是非作らねばな!」

(あ、この人もそう言う人種の人か)

 細身の高い身長に灰銀色の髪に灰青色の瞳の儚げな美貌の青年で、さぞやおモテになるであろうマヒロは残念な人だったようだ。

 しかし魔術師班も皆背が高い。
 ある程度鍛えてあるのか締まった体をしているしフィルドを筆頭に肉弾戦もある程度こなせないと魔術師にはなれないのかと深海に思わせた。

 前に行った研究室には中肉中背の者も多かったのでそういう訳ではないのだろうが、この国の人材は上に行けば行くほど美麗で鍛えられた体をしている。
 美形遺伝子と能力値が比例しているのかと思うほどだ。

(実はカグウ様も強かったりするのだろうか?)

 深海の想像はその後、自らの眼で確認することとなる。

「ネオレばっかお兄様に引っ付いてズルい!俺ライジュ、よろしく!」

「俺はビルダーだ。しかし兄様細すぎだな。もう少し食って筋肉付けるべきだ。肉食え肉!」

 なにやら魔術師班に囲まれてしまったしまった。
 4人が4人とも個性的で圧が凄い。

「ちょっと待ってってっす!魔術師班だけお兄様と仲良くして狡いっす!」

 何やらキーリョが的外れなことを言い出した。

「俺もお兄様と話したいし~。何か良い匂いするね。何か美味しいもの持ってる?」

 身長はトトロよりありそうなのにヴィオレットのコテン、と小首を傾げる仕草は幼子の様で母性本能を擽られる。

(か、可愛いじゃないかヴィオレットさん…フィルド様もあざと可愛いけどヴィオレットさんも負けてないな。つーかこの国は美形遺伝子はマイペース遺伝子も紛れてるのか!?)

 何やらハイテンションな集団に囲まれて深海の指導による紙作り実践編を行うことになる。

(このメンバー纏められるのか俺……?)

 紙作りが終わっていないのに既に疲れている深海だった。
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