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【オマケと紙と衛生事情】
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深海は悩んでいた。
自室の洋式トイレに座り”考える人”のポーズで固まっていた。
「ふーちゃん、大丈夫ー?」
鳴海がトイレの外から声をかけてくる。
その声に深海の意識はこちら側に戻って来た。
「トイレットペーパーが欲しいぃぃぃぃぃ!!」
トイレ内に深海の叫びがこだました。
:::
カカンの王宮のトイレは洋式の水洗トイレである。
出したものは水でスライム下水に流れるように改造してある。
だが用を足した後に拭く物が問題なのだ。
トイレットペーパーなんて便利なものは当然ない。
紙自体が存在していないので当たり前と言えば当たり前である。
ならば何で拭くか?
答えは布だ。
下拭きようの布が存在しておりそれで拭く。
その後その布は水の張った容器の中に入れられ、毎朝洗濯に出される。
勿論新しい布と新しい容器が用意しているが、正直自分の排泄の後始末をされるのは気持ち良いものではない。
端的に言うと恥ずかしい、だ。
それでも王宮はまだマシな方で一般庶民が使用している物はもっと問題だ。
海綿(スポンジ)を先端につけた棒を設置し、それを塩水に漬けた状態で置いてある。
用を足した後にその棒の先端の海綿で自分の体をぬぐい、次に使う人のためにまた塩水につけておいて、共用で繰り返し使っているのだ。
不潔なことこの上ない。
衛生面を考えるならまだ葉っぱで拭いた方がマシだと深海は思っている。
これでは折角王都が炊き出しと給与をダシにかき集めた掃除人(主に体力のある男やスラムで食うに困っている子供などが多い)のお陰で道が綺麗になってきているのに、清潔を考慮したトイレが不衛生の場になってしまうのでは本末転倒だ。
「よし、紙を作ろう!」
深海が遂に決心した瞬間だった。
:::
「さて、何時もの事ながら蘊蓄入らせて頂きます。フィルド様適当に頭の中覗いといて下さい」
「ラキザ君~フカミ先生が冷たいで~す!」
「しょっちゅう人の頭の中覗くからだろ?」
「はい、ラキザ様正解です。では紙の歴史に入ります。面倒臭い人は飛ばして下さいね」
「ラキザ君~フカミ先生がメタ発言してます~!」
「お前はもう黙れ」
遊んでいるように見えるが深海は割と深刻だった。
何せトイレに紙がないのは困る。
紙があまり流通していないところを見ると他の国でもトイレの事情は似たり寄ったりなのかもしれない。
その内他の国を覗いてみたい旨をカグウに尋ねてみようと深海は思った。
「さて俺の国では世界最古の紙は現在、1986年に中国甘粛省のから出土したものだとされています。この紙は、前漢時代の地図が書かれており、紀元前150年頃のものだと推定されます。次いで古いのは、紀元前140年~87年頃のものとされるです。
灞橋紙は陝西省西安市灞橋鎮で出土しました。 史書に残された記録では『後漢書』で、105年に蔡倫が樹皮やアサのぼろから紙を作り和帝に献上したという内容の記述があり、現在は蔡倫は紙の改良者だという説が一般的です。
蔡倫による「蔡侯紙」は軽くかさばらないため、記録用媒体として、従来の木簡や竹簡、絹布に代わって普及しました。西晋の時代(3世紀)には、左思の『三都賦』を写すために紙の価格が高騰したという記録が『晋書』に記載されており、「洛陽の紙価を高からしむ」という故事成語になっています。
紙はその後も改良され、唐時代(8世紀)には樹皮を主原料とした紙や、竹や藁を原料として混ぜた紙が作られるようになりました。宋や明の時代(10世紀以降)には、出版が盛んとなったため大量の紙が必要となり、竹紙が盛んに作られます
。明末の1637年に刊行された『天工開物』には、製紙の項目で、竹紙と樹皮を原料とした紙の製法を取り上げている。 紙は羊皮紙や絹に比べれば安かったが、それでも上流階級を中心に広く使われる高価なものでありました」
「何か無茶苦茶ややこしいな。これ俺とフィルドの分野じゃなくてチノシスの方が向いているんじゃないか?」
「その点は大丈夫です。理屈は何であれやる事は肉体労働ですから」
「うん、フカミちゃんが俺たちの事どう見てるのか分かったよ」
「可愛くしょんぼりしてもダメですフィルド様。モノの開発は魔術師班の分野のはずですよ?」
「じゃぁ有能な人材上げるからそれで許して♪」
「優秀な人材をお願いします」
「OK~優秀な人材なら魔術師班におすすめ居るよ~」
「じゃぁ俺のところは…クリムゾン以外筋肉馬鹿ばっかだな…」
「今回は肉体労働者が欲しいので脳筋でも歓迎ですよ。頭が回らなくても従順であれば結構です」
「OK!なら任せろ」
ラキザが嬉しそうに答えた。
「では次に簡単な紙作りについて説明しますね。
1.植物を取り,適当な大きさに切って水洗いする.
木や堅い草の場合は皮をむいて使う.木の枝を蒸すと皮をむきやすい.
2.それをアルカリ水溶液で煮てやわらかくする(2時間から6時間くらい)
水で洗って指で触ると皮がばらばらになったらOK
アルカリ水溶液は,水に1リットルに重ソウ(ふくらし粉=炭酸水素ナトリウム)100グラムを溶かしたもの.
3.簡単に水洗いし,漂白剤の入った水につけ,一晩おいておく.
その後,数時間以上水洗いする.
4.ミキサーに水と一緒にいれてかきまぜる.
この時,繊維の間に細かい泡がたまるのが良い繊維.
5.紙漉枠の中に流し込み,均一の厚さに広げる水に洗濯糊を少し加えると良いです
6.水を切り,乾いた布の上に木綿を置いてできた紙をのせる.
さらに上に木綿をかけて,一番上に板をおいて重しをします.
お薦めの紙材料は、
イネ科全般(なんといってもどこにでも生えている.植物全体が使える.特にジュズダマは良い)
水草(植物全体が使える.ホテイアオイだと重ソウでも短い時間でOK)
イヌビワとクワ(コウゾやガンピに匹敵するくらい,繊維が取りやすく細かい)
ですね」
「うん確かに力仕事だね」
「んじゃ俺のところから2~3人出すわ」
「宜しくお願いします。紙は十分名産品になりますし。何より俺はトイレットペーパーが欲しいので長い闘いになる覚悟が必要です」
「トイレットペーパーて何?」
「紙作りが順調に進んだら次のステップで説明します。では御2方、労働力確保宜しくお願いします」
「りょ~か~い♪」
「了解だぜ」
「ではコレ食べ終えたら人材確保に乗り出しましょう。掃除人たちと同様に一般市民も炊き出しと給金で人材を募りましょう」
昼食をモグモグしながら3人の話し合いは終了した。
チノシスとコキョウ今は別の王都改革の計画の方に手を付けていて中々時間を合わせられない。
カグウに至っては深海の要求を通す為の書類手続きや人集め、金銭の運用などやる事がありすぎて執務室に籠り切りだ。
ちょうど3人で食べるご飯が寂しかった3人にとっても新しい取り組みは良い暇つぶしでもある。
自分の団員から人を出すと言ってもすぐにフィルドとチノシスも加わって来るだろう。
紙が出来たら様々なことに使える。
自分は気持ち良くトイレに行けるし一石四鳥ぐらいはあるな、と深海はニマリと微笑んだ。
自室の洋式トイレに座り”考える人”のポーズで固まっていた。
「ふーちゃん、大丈夫ー?」
鳴海がトイレの外から声をかけてくる。
その声に深海の意識はこちら側に戻って来た。
「トイレットペーパーが欲しいぃぃぃぃぃ!!」
トイレ内に深海の叫びがこだました。
:::
カカンの王宮のトイレは洋式の水洗トイレである。
出したものは水でスライム下水に流れるように改造してある。
だが用を足した後に拭く物が問題なのだ。
トイレットペーパーなんて便利なものは当然ない。
紙自体が存在していないので当たり前と言えば当たり前である。
ならば何で拭くか?
答えは布だ。
下拭きようの布が存在しておりそれで拭く。
その後その布は水の張った容器の中に入れられ、毎朝洗濯に出される。
勿論新しい布と新しい容器が用意しているが、正直自分の排泄の後始末をされるのは気持ち良いものではない。
端的に言うと恥ずかしい、だ。
それでも王宮はまだマシな方で一般庶民が使用している物はもっと問題だ。
海綿(スポンジ)を先端につけた棒を設置し、それを塩水に漬けた状態で置いてある。
用を足した後にその棒の先端の海綿で自分の体をぬぐい、次に使う人のためにまた塩水につけておいて、共用で繰り返し使っているのだ。
不潔なことこの上ない。
衛生面を考えるならまだ葉っぱで拭いた方がマシだと深海は思っている。
これでは折角王都が炊き出しと給与をダシにかき集めた掃除人(主に体力のある男やスラムで食うに困っている子供などが多い)のお陰で道が綺麗になってきているのに、清潔を考慮したトイレが不衛生の場になってしまうのでは本末転倒だ。
「よし、紙を作ろう!」
深海が遂に決心した瞬間だった。
:::
「さて、何時もの事ながら蘊蓄入らせて頂きます。フィルド様適当に頭の中覗いといて下さい」
「ラキザ君~フカミ先生が冷たいで~す!」
「しょっちゅう人の頭の中覗くからだろ?」
「はい、ラキザ様正解です。では紙の歴史に入ります。面倒臭い人は飛ばして下さいね」
「ラキザ君~フカミ先生がメタ発言してます~!」
「お前はもう黙れ」
遊んでいるように見えるが深海は割と深刻だった。
何せトイレに紙がないのは困る。
紙があまり流通していないところを見ると他の国でもトイレの事情は似たり寄ったりなのかもしれない。
その内他の国を覗いてみたい旨をカグウに尋ねてみようと深海は思った。
「さて俺の国では世界最古の紙は現在、1986年に中国甘粛省のから出土したものだとされています。この紙は、前漢時代の地図が書かれており、紀元前150年頃のものだと推定されます。次いで古いのは、紀元前140年~87年頃のものとされるです。
灞橋紙は陝西省西安市灞橋鎮で出土しました。 史書に残された記録では『後漢書』で、105年に蔡倫が樹皮やアサのぼろから紙を作り和帝に献上したという内容の記述があり、現在は蔡倫は紙の改良者だという説が一般的です。
蔡倫による「蔡侯紙」は軽くかさばらないため、記録用媒体として、従来の木簡や竹簡、絹布に代わって普及しました。西晋の時代(3世紀)には、左思の『三都賦』を写すために紙の価格が高騰したという記録が『晋書』に記載されており、「洛陽の紙価を高からしむ」という故事成語になっています。
紙はその後も改良され、唐時代(8世紀)には樹皮を主原料とした紙や、竹や藁を原料として混ぜた紙が作られるようになりました。宋や明の時代(10世紀以降)には、出版が盛んとなったため大量の紙が必要となり、竹紙が盛んに作られます
。明末の1637年に刊行された『天工開物』には、製紙の項目で、竹紙と樹皮を原料とした紙の製法を取り上げている。 紙は羊皮紙や絹に比べれば安かったが、それでも上流階級を中心に広く使われる高価なものでありました」
「何か無茶苦茶ややこしいな。これ俺とフィルドの分野じゃなくてチノシスの方が向いているんじゃないか?」
「その点は大丈夫です。理屈は何であれやる事は肉体労働ですから」
「うん、フカミちゃんが俺たちの事どう見てるのか分かったよ」
「可愛くしょんぼりしてもダメですフィルド様。モノの開発は魔術師班の分野のはずですよ?」
「じゃぁ有能な人材上げるからそれで許して♪」
「優秀な人材をお願いします」
「OK~優秀な人材なら魔術師班におすすめ居るよ~」
「じゃぁ俺のところは…クリムゾン以外筋肉馬鹿ばっかだな…」
「今回は肉体労働者が欲しいので脳筋でも歓迎ですよ。頭が回らなくても従順であれば結構です」
「OK!なら任せろ」
ラキザが嬉しそうに答えた。
「では次に簡単な紙作りについて説明しますね。
1.植物を取り,適当な大きさに切って水洗いする.
木や堅い草の場合は皮をむいて使う.木の枝を蒸すと皮をむきやすい.
2.それをアルカリ水溶液で煮てやわらかくする(2時間から6時間くらい)
水で洗って指で触ると皮がばらばらになったらOK
アルカリ水溶液は,水に1リットルに重ソウ(ふくらし粉=炭酸水素ナトリウム)100グラムを溶かしたもの.
3.簡単に水洗いし,漂白剤の入った水につけ,一晩おいておく.
その後,数時間以上水洗いする.
4.ミキサーに水と一緒にいれてかきまぜる.
この時,繊維の間に細かい泡がたまるのが良い繊維.
5.紙漉枠の中に流し込み,均一の厚さに広げる水に洗濯糊を少し加えると良いです
6.水を切り,乾いた布の上に木綿を置いてできた紙をのせる.
さらに上に木綿をかけて,一番上に板をおいて重しをします.
お薦めの紙材料は、
イネ科全般(なんといってもどこにでも生えている.植物全体が使える.特にジュズダマは良い)
水草(植物全体が使える.ホテイアオイだと重ソウでも短い時間でOK)
イヌビワとクワ(コウゾやガンピに匹敵するくらい,繊維が取りやすく細かい)
ですね」
「うん確かに力仕事だね」
「んじゃ俺のところから2~3人出すわ」
「宜しくお願いします。紙は十分名産品になりますし。何より俺はトイレットペーパーが欲しいので長い闘いになる覚悟が必要です」
「トイレットペーパーて何?」
「紙作りが順調に進んだら次のステップで説明します。では御2方、労働力確保宜しくお願いします」
「りょ~か~い♪」
「了解だぜ」
「ではコレ食べ終えたら人材確保に乗り出しましょう。掃除人たちと同様に一般市民も炊き出しと給金で人材を募りましょう」
昼食をモグモグしながら3人の話し合いは終了した。
チノシスとコキョウ今は別の王都改革の計画の方に手を付けていて中々時間を合わせられない。
カグウに至っては深海の要求を通す為の書類手続きや人集め、金銭の運用などやる事がありすぎて執務室に籠り切りだ。
ちょうど3人で食べるご飯が寂しかった3人にとっても新しい取り組みは良い暇つぶしでもある。
自分の団員から人を出すと言ってもすぐにフィルドとチノシスも加わって来るだろう。
紙が出来たら様々なことに使える。
自分は気持ち良くトイレに行けるし一石四鳥ぐらいはあるな、と深海はニマリと微笑んだ。
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