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【序章】
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漣深海は目を覚まして自分は夢を見ているのかと思った。
目の前に広がる光景は中世ヨーロッパ調の城内、もしくはファンタジーにおける城内のような所に居たからだ。
自分は確か下校中だったはずなのだが。
その時の記憶があやふやになっている。
自分の隣には二卵性の双子の兄妹である鳴海も意識を失って身体を床に横たえていた。
二人の居る場所の床には青白く発光するゲームやアニメでよく見る魔法陣のようなものが描かれていた。
(これはネット小説とかで見るアレか………)
深海はオタクである。
商業誌のライトノベルもハードカバーのミステリーも自己啓発本もネット小説も宗教の本もエロ本も、どんな本でも読み漁る活字中毒だ。
そんなオタクの深海だからこそ現在の状況を冷静に判断できた。
自分たちはおそらく異世界召喚されたのだ、と。
深海と鳴海の周りにはガヤガヤとざわめく位の高そうな、恐らく貴族や王族であろう良い身なりの者が困惑している様子が伺える。
「クロナ様、これは一体………?」
巫女のような衣装を着た茶髪のショートカットの気の強そうな美少女が魔法陣の前に立っているこれまた飛び切りの美少女に声をかけた。
声をかけられた少女―クロナと言うらしい―は綺麗な柳眉を寄せて困った表情を作っている。
巫女っぽい少女も美人だがクロナと呼ばれた少女は更に格上の美少女だった。
色素の薄い湖色の髪、同色の透き通った湖色の瞳、色合いゆえに派手さはなく儚げな印象だが形の良いパーツが絶妙に顔の上で配置されている超美少女だ。
着ている物も周囲の物より豪華な印象だ。
白を基調に薄いグリーンの入った豪奢なドレス。
色とりどりの細やかな細工のされた身に付けられた宝石。
それはクロナに良く似合っていた。
「私が行ったのは王家に代々伝わる聖女召喚の儀式だったはずなのですが…何故聖女でなく異物まで召喚されてしまったのでしょう……」
(この女、今異物って言ったぞ!外見とは裏腹に腹グロか!?)
深海が心の中で突っ込む。
おそらくクロナが言った異物とは自分の自分のことだと深海はすぐに分かった。
クロナは”聖女召喚の儀式”と言った。
深海の隣には女性物の制服の長い黒髪が美麗な寝ていても美少女と分かる片割れ。
そして男子高校生としてはかなり低い身長でオタクで目つきが少々きつめだが片割れ同様整った顔立ちをしているがどうみても男物の衣服に身を包んだ自分。
聖女一人を召喚する手はずだったなら今この場に居る者の全てが男であろう深海を異物と捉えているだろう。
その証拠に皆の怪訝なまなざしは深海に注がれている。
「……ん」
「ナル、起きたか!?」
深海の隣で鳴海が身動ぎした。
「聖女様!お目覚めになられましたか!」
憂いを帯びた表情をしていたクロナや巫女たちが喜色ばんだ。
「ふーちゃん、ここ、何処?」
鳴海は目が覚めるや否や見たことのない場所で明らかにコスプレ染みた衣装を着ている者に迫られて怯えている。
証拠に深海の制服の袖を掴む手が震えていた。
「ナル、これは多分小説とかでよく見る異世界召喚だ。幾らネットで流行ってるからって本当に起こるなんてありえねーだろ普通……」
「え、じゃぁ私たち魔王とか倒さなきゃいけないの?」
ふにゃりと鳴海の顔が歪んで泣きそうな表情になる。
「大丈夫だ、ナルは俺が守るから」
袖を掴んでいる鳴海の手を深海は上から包み込むように握り込んでやる。
鳴海の顔が少しだけ緊張が削ぎ落された。
「で、聖女様召喚して何させる気だよお姫様?」
「何故私が姫だと?」
「あんた王家に伝わる儀式っつたろ?そして周りの者の態度。どう考えてもあんた王族としか思えねーからな」
深海は睨みつけるようにクロナに言い放つ。
「異物であっても無能ではなさそうですね」
クロナが小さな声で冷たく言い放った。
目の前に広がる光景は中世ヨーロッパ調の城内、もしくはファンタジーにおける城内のような所に居たからだ。
自分は確か下校中だったはずなのだが。
その時の記憶があやふやになっている。
自分の隣には二卵性の双子の兄妹である鳴海も意識を失って身体を床に横たえていた。
二人の居る場所の床には青白く発光するゲームやアニメでよく見る魔法陣のようなものが描かれていた。
(これはネット小説とかで見るアレか………)
深海はオタクである。
商業誌のライトノベルもハードカバーのミステリーも自己啓発本もネット小説も宗教の本もエロ本も、どんな本でも読み漁る活字中毒だ。
そんなオタクの深海だからこそ現在の状況を冷静に判断できた。
自分たちはおそらく異世界召喚されたのだ、と。
深海と鳴海の周りにはガヤガヤとざわめく位の高そうな、恐らく貴族や王族であろう良い身なりの者が困惑している様子が伺える。
「クロナ様、これは一体………?」
巫女のような衣装を着た茶髪のショートカットの気の強そうな美少女が魔法陣の前に立っているこれまた飛び切りの美少女に声をかけた。
声をかけられた少女―クロナと言うらしい―は綺麗な柳眉を寄せて困った表情を作っている。
巫女っぽい少女も美人だがクロナと呼ばれた少女は更に格上の美少女だった。
色素の薄い湖色の髪、同色の透き通った湖色の瞳、色合いゆえに派手さはなく儚げな印象だが形の良いパーツが絶妙に顔の上で配置されている超美少女だ。
着ている物も周囲の物より豪華な印象だ。
白を基調に薄いグリーンの入った豪奢なドレス。
色とりどりの細やかな細工のされた身に付けられた宝石。
それはクロナに良く似合っていた。
「私が行ったのは王家に代々伝わる聖女召喚の儀式だったはずなのですが…何故聖女でなく異物まで召喚されてしまったのでしょう……」
(この女、今異物って言ったぞ!外見とは裏腹に腹グロか!?)
深海が心の中で突っ込む。
おそらくクロナが言った異物とは自分の自分のことだと深海はすぐに分かった。
クロナは”聖女召喚の儀式”と言った。
深海の隣には女性物の制服の長い黒髪が美麗な寝ていても美少女と分かる片割れ。
そして男子高校生としてはかなり低い身長でオタクで目つきが少々きつめだが片割れ同様整った顔立ちをしているがどうみても男物の衣服に身を包んだ自分。
聖女一人を召喚する手はずだったなら今この場に居る者の全てが男であろう深海を異物と捉えているだろう。
その証拠に皆の怪訝なまなざしは深海に注がれている。
「……ん」
「ナル、起きたか!?」
深海の隣で鳴海が身動ぎした。
「聖女様!お目覚めになられましたか!」
憂いを帯びた表情をしていたクロナや巫女たちが喜色ばんだ。
「ふーちゃん、ここ、何処?」
鳴海は目が覚めるや否や見たことのない場所で明らかにコスプレ染みた衣装を着ている者に迫られて怯えている。
証拠に深海の制服の袖を掴む手が震えていた。
「ナル、これは多分小説とかでよく見る異世界召喚だ。幾らネットで流行ってるからって本当に起こるなんてありえねーだろ普通……」
「え、じゃぁ私たち魔王とか倒さなきゃいけないの?」
ふにゃりと鳴海の顔が歪んで泣きそうな表情になる。
「大丈夫だ、ナルは俺が守るから」
袖を掴んでいる鳴海の手を深海は上から包み込むように握り込んでやる。
鳴海の顔が少しだけ緊張が削ぎ落された。
「で、聖女様召喚して何させる気だよお姫様?」
「何故私が姫だと?」
「あんた王家に伝わる儀式っつたろ?そして周りの者の態度。どう考えてもあんた王族としか思えねーからな」
深海は睨みつけるようにクロナに言い放つ。
「異物であっても無能ではなさそうですね」
クロナが小さな声で冷たく言い放った。
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