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そして全能神は愉快犯となった

【128話】

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 サイヒは自分が対面している相手がこんなに嬉しそうなのを初めて見た。

 お茶とお菓子が用意されたテーブルを挟んで、サイヒは今1人の女性と対峙している。
 真っ白な空間で、白い髪に白いローブのその女性は瞳の金緑の色以外、色を見に纏っていなかった。
 肌迄ローブとの境が微かにわかる程度にしか色素が無い。
 真っ白な雪のような肌だ。
 唇の色はうっすらとピンクで、相手が生きている存在だと認識出来て安心する。

「お久しぶりですが、随分と機嫌が良いですねミラーア殿」

「ふふふ、分かりますかサイヒ様?」

 笑う顔は慈愛に満ちた慈母の微笑。
 サイヒの肉体年齢は18で止まっているが、相手の年齢は20代半ば位で”淑女”と言った雰囲気を醸し出している。
 外見だけなら接点の無さそうな2人である。
 ならば2人の関係とは何か?

 2人の関係は20年程前に始まった。
 サイヒが全能神になった頃である。
 そう、女性は人間ではない。
 だがサイヒと同じ天界の者でもない。

 しかしサイヒは女性を敬って敬語を使っている。

 世界で1番偉いであろうサイヒが敬語を使う相手。
 そう、相手もサイヒと同じクラスの神であるからだ。
 ただし、サイヒとは違う世界のだが。

「私に娘が出来たのですよ」

「ほう、それは目出度い。卵の中の雛の魂が不完全だと仰ってたので心配していましたが、女児でしたか」

「ふふふ、そう私の子供の魂は不完全だったけど…同じ不完全な人間の娘の魂と融合して完全体になれたのです」

「それは、極めて稀な例なのでは?」

「私も魂の融合など産まれて初めて見ました。でも私の娘はそれはそれはイイ子ですのよ」

 嬉しそうに白い存在が笑う。
 白い存在、ミアーラの今の姿は仮の姿である。
 本来は美しい白い鳥なのだ。
 そして世界の生命を司る聖獣の1柱でもある。

「それにしても何故そんな事が起こったのですか?」

「ふふ、私の卵を盗んだ輩が居ましてね、その輩が娘に玉子を食べさしたのです」

「そ、れは…偶然成功したとはいえ…随分と恥も怖さも知らない愚かな者が居た者ですね。神鳥の卵を食べさせようとするなど………」

「本当に、お馬鹿さん達ですよねぇ。何時かは鉄槌を落とさねばと思っているのですけど…娘の様子を見るのが楽しくてそっちまで手が回らないんですの」

「それで今日のお茶会ですか?」

「えぇ、サイヒ様に何かしらお仕置きをして貰えないかと」

「別世界の神が罰を与えるのは因果律に反してはいないですか?反していないのなら別に構いませんが」

 ふぅ、とミアーラは気だるげに溜息をついた。
 そしてチョコレートを摘まみ、口に入れる。
 ソレだけの仕種が驚くほどに洗礼されている。
 流石は神である。
 神になりたてのサイヒとは年季が違う。

「そうねぇ、他の者にも聞くべきかしら…?」

「私も流石に因果律に消されたくないですからね?ちゃんと大丈夫か知らべてから頼んでくれませんかね?」

「サイヒ様なら良い鉄槌くだしてくれると思ったら居ても立ってもいられなくて…」

「まぁ最初に思いついたのが私だと言う事は嬉しいですけどね」

「じゃぁ鉄槌下して下さる?」

「因果律を調べてセーフだったらですよ?」

「うふふ、有難うサイヒ様。ちゃんと次のお茶会までに調べておきますわ」

「お願いしますよ?」

 サイヒがカップを口に付ける。
 中身はアールグレイのホットティー。
 ミルクと砂糖はタップリで。

 ミルクが投入した時に混ざっていく、その光景が好きなサイヒはスプーンでかき混ぜないで紅茶を飲む。
 そうすると味が均一にならなく、味覚が変わって味を何回も楽しめるのだ。
 通のする飲み方である。

 この後、2人はサイヒの【全知全能】で出したお茶をたっぷり楽しんで己の世界へと帰って行った。

 長時間天界から姿を消したサイヒを心配して、ルークが1人で寝室で泣きながらシーツで包まっているのを見つけ、サイヒはその可愛さにルークを堪能する事になる。

 月日がたってもこの2人の中の良さは変わらない。
 サイヒはルークの可愛さに慣れないし、ルークはサイヒの色気に慣れない。
 どうやらサイヒが収める世界は平和なのであろう。
 全能神が好きに営みが出来る世界が危険なはずがない。

「私の方も子供から目を離せないし、ミアーラ様の事を言えない親バカだな」

「何か言ったかサイヒ?」

「いや、ただの独り言だよ。ソレより寝ないのならもう少し、お前を味わおうかルーク?」

「ひゃぃ……」

 真っ赤な顔でシーツに包まったルークが頷いた。

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 【騙されて神鳥の卵を食べさせられた令嬢、国を追放されるーしかし神鳥と同化した令嬢は人々を救う聖女となったー】の方も御贔屓お願いします(*´▽`*)
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