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【72話】
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「この焼き菓子、随分と美味しいな。手作りだと言ってましたが女王の御付きの侍女が作っものだろうか?
帝国の随一の腕を持つパティシエにも負けず劣らずの美味しさだ。特にこのタルト、すごく癖になる」
「本当ですか?それは季節の春夏・秋冬でタルトのフレーバーを変えてんるんですよ。春夏はアプリコットと、ココナッツをを使用した【アブリコ・ココ】、マンゴー、パイナップル、パパイヤを使用した【マング・アナナス】、
冬は、栗を使用した【マロン・ショコラ】、りんご、レーズンを使用した【ポム・キャラメル】な。ジェノワーズ(スポンジ生地)をサンドしたり、パウンド生地にシロップをしっとり含ませ、タルト生地との食感に違いを出したり、
それぞれに趣向を凝らした生地との組み合わせが、フルーツの甘みや酸味を引き立てるように意識してるんです。ルクティエス皇太子のお前の口に合うなら上出来ですかね?」
「侍女が作られたんですよね?」
「それは女王様の手作りですよ~」
何時の間にかチョコレートケーキを食べていたマガクが嬉しそうに弾んだ声で言った。
「因みにこのチョコレートケーキはねっとりと濃厚です。ほろ苦い甘さで、大人のチョコレートケーキと言った感じで大変おいしいですよ。
1本は16センチと小ぶりだけど、どっしりとした味なので、少量でも腹にたまる。口の中でふわふわと・・とろけ、上のチョコのコーティングはフォークを入れるとやっぱりパリッと割れて、口の中でチョコもとろける・・・でもさっぱりしていて幾らでも食べたくなるダイエット中の女子泣かせな一品です」
「こっちのマカロンも食べてみて下さい?ショコラ、ピスタージュ、サティーヌ、ローズ、カラメル、アールグレイの6種です。
最近ではいろんなパティスリーでマカロンを出されているが、このマカロンは格差を出す様に手を加えてるんです。
美味しくないマカロンは、外がザクザクとし過ぎていたり、中がネチネチとして、歯にくっつくような食感がしたりするが、このマカロンは、外はサクッと軽く、中はしっとりとしていながら歯切れが良いように。
また、しっかりと甘みがありながら、しつこさはなく、上品に。
今回は6種類の味だが、やはり奇をてらったフレーバーより、わりとベーシックなものがオススメですね。とくにショコラ、ピスタージュは人気ですよ」
マカロンを指差しながら聖女王が説明する。
「これも女王が?」
「女王様は凄いんです~♬」
マガクがキラキラした目で聖女王を見ていた。
「女王様は菓子だけじゃなく料理も上手いんですよ!」
何故かマガクがドヤ顔で言い張る。
「それにしても流石は魔王。呆気なかったですね~」
「私たちの出番は無かったな」
聖女王とマガクが呆れた目をしてルークを見ていた。
「私は功労の菓子の提供しか役に立たなかったな」
「俺なんていい所見して女王様が俺に惚れる予定だったのにー!瞬殺しちゃうなんてー!」
「こら、マガク。感謝するならともかく文句を言うとは何事だ」
「だって~」
女王がぽこ、とマガクの頭を殴る。
大変優しい殴り方である。
本気で怒っている訳ではないのだ。
それどころか気持ちは嬉しいと思っている。
「いや、だが本当に感謝するルクティエス皇太子。貴方が魔王であろうとも人間の敵でないことが分かって良かった。さすがに魔王に勝つ自信はないですからね」
「私は人間に敵対する気も悪魔に味方する気も無い。ただ愛する者が傍に居ればよい…」
ルークの怜悧な瞳が優しさを取り戻す。
サイヒを思う時、ルークはどんな場面でもその心に暖かな灯がともる。
冷徹の皇太子の仮面は剥がれ落ち、1人の恋する男の顔がそこにはあった。
その変貌ぶりに聖女王とマガクは驚きを隠せない。
「それがルクティエス皇太子が人を守る理由ですか?」
「じゃぁその愛する者が「人間嫌いー!」って言ったら人間滅ぼすんですかー?」
「滅ぼすな」
「「怖っ!!」」
聖女王とマガクが真顔で同じ反応をした。
「その愛する人が人間の味方であり続ける事を願いますよ~…」
「大丈夫だ、サイヒは人を見捨てない」
「サイヒ?もしかしてカカンの先代聖女のサイヒですか!?」
「知っているのか?」
「サイヒならここ最近聖女になったばかりのフレイムアーチャ以外の聖女なら誰でも知ってますよ。成程、聖女を止めて何処に行っていたのかと思っていたら、まさか魔王の心を射止めていたとは…相変わらず規格外な……」
聖女王がクスクス笑う。
反応からしてサイヒとは仲が良い様だ。
「サイヒ様が恋人なら魔王様が人間の敵になる心配は無いですね!サイヒ様優しいし♬」
マガクもマカロンをパクつきながら楽しそうに言う。
「2人はサイヒの事に詳しそうだな?」
「まぁ10年来の付き合いですから」
「10年!?聖女王、是非サイヒの幼いころの話を聞かせていただきたい!!」
突然必死になるルークに聖女王は笑いが止まらなくなった。
お腹を抱えながらも下品になり過ぎないように大笑いしている。
「サイヒの話しで国を救って頂いた礼が出来そうですね。ではサイヒが7歳の頃から話しましょう」
「その時来ていた服や髪形の説明も頼みたい!」
「ガチですね魔王様。でもさっきの前国王を、真名を呼ぶだけで一瞬で消滅させた人物と同一人物とは思えない!」
「マガクもサイヒと10年の付き合いが?」
「年近いですし結構なかよかっ…ルクティエス皇太子、目が怖い!目が怖い!!」
瞬殺でジャクタルの悪魔を滅ぼしたルークだが、人を滅ぼす危険性のある悪魔よりも自分より先にサイヒと仲良くなっていた男に対しての方が危険度が高いらしい。
ジャクタル聖女王の手作りの菓子を嗜みながら、ルークはサイヒの幼い日の話しを聞いてご満悦で帰国する事となるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
過去最速で決着がついた戦闘(笑)
瞬殺の場面すら書かれず、仕事の後のお茶とばかりに菓子を摘まみながらサイヒの話しで盛り上がるルーク。
魔王って何なんだろう…(;^ω^)
帝国の随一の腕を持つパティシエにも負けず劣らずの美味しさだ。特にこのタルト、すごく癖になる」
「本当ですか?それは季節の春夏・秋冬でタルトのフレーバーを変えてんるんですよ。春夏はアプリコットと、ココナッツをを使用した【アブリコ・ココ】、マンゴー、パイナップル、パパイヤを使用した【マング・アナナス】、
冬は、栗を使用した【マロン・ショコラ】、りんご、レーズンを使用した【ポム・キャラメル】な。ジェノワーズ(スポンジ生地)をサンドしたり、パウンド生地にシロップをしっとり含ませ、タルト生地との食感に違いを出したり、
それぞれに趣向を凝らした生地との組み合わせが、フルーツの甘みや酸味を引き立てるように意識してるんです。ルクティエス皇太子のお前の口に合うなら上出来ですかね?」
「侍女が作られたんですよね?」
「それは女王様の手作りですよ~」
何時の間にかチョコレートケーキを食べていたマガクが嬉しそうに弾んだ声で言った。
「因みにこのチョコレートケーキはねっとりと濃厚です。ほろ苦い甘さで、大人のチョコレートケーキと言った感じで大変おいしいですよ。
1本は16センチと小ぶりだけど、どっしりとした味なので、少量でも腹にたまる。口の中でふわふわと・・とろけ、上のチョコのコーティングはフォークを入れるとやっぱりパリッと割れて、口の中でチョコもとろける・・・でもさっぱりしていて幾らでも食べたくなるダイエット中の女子泣かせな一品です」
「こっちのマカロンも食べてみて下さい?ショコラ、ピスタージュ、サティーヌ、ローズ、カラメル、アールグレイの6種です。
最近ではいろんなパティスリーでマカロンを出されているが、このマカロンは格差を出す様に手を加えてるんです。
美味しくないマカロンは、外がザクザクとし過ぎていたり、中がネチネチとして、歯にくっつくような食感がしたりするが、このマカロンは、外はサクッと軽く、中はしっとりとしていながら歯切れが良いように。
また、しっかりと甘みがありながら、しつこさはなく、上品に。
今回は6種類の味だが、やはり奇をてらったフレーバーより、わりとベーシックなものがオススメですね。とくにショコラ、ピスタージュは人気ですよ」
マカロンを指差しながら聖女王が説明する。
「これも女王が?」
「女王様は凄いんです~♬」
マガクがキラキラした目で聖女王を見ていた。
「女王様は菓子だけじゃなく料理も上手いんですよ!」
何故かマガクがドヤ顔で言い張る。
「それにしても流石は魔王。呆気なかったですね~」
「私たちの出番は無かったな」
聖女王とマガクが呆れた目をしてルークを見ていた。
「私は功労の菓子の提供しか役に立たなかったな」
「俺なんていい所見して女王様が俺に惚れる予定だったのにー!瞬殺しちゃうなんてー!」
「こら、マガク。感謝するならともかく文句を言うとは何事だ」
「だって~」
女王がぽこ、とマガクの頭を殴る。
大変優しい殴り方である。
本気で怒っている訳ではないのだ。
それどころか気持ちは嬉しいと思っている。
「いや、だが本当に感謝するルクティエス皇太子。貴方が魔王であろうとも人間の敵でないことが分かって良かった。さすがに魔王に勝つ自信はないですからね」
「私は人間に敵対する気も悪魔に味方する気も無い。ただ愛する者が傍に居ればよい…」
ルークの怜悧な瞳が優しさを取り戻す。
サイヒを思う時、ルークはどんな場面でもその心に暖かな灯がともる。
冷徹の皇太子の仮面は剥がれ落ち、1人の恋する男の顔がそこにはあった。
その変貌ぶりに聖女王とマガクは驚きを隠せない。
「それがルクティエス皇太子が人を守る理由ですか?」
「じゃぁその愛する者が「人間嫌いー!」って言ったら人間滅ぼすんですかー?」
「滅ぼすな」
「「怖っ!!」」
聖女王とマガクが真顔で同じ反応をした。
「その愛する人が人間の味方であり続ける事を願いますよ~…」
「大丈夫だ、サイヒは人を見捨てない」
「サイヒ?もしかしてカカンの先代聖女のサイヒですか!?」
「知っているのか?」
「サイヒならここ最近聖女になったばかりのフレイムアーチャ以外の聖女なら誰でも知ってますよ。成程、聖女を止めて何処に行っていたのかと思っていたら、まさか魔王の心を射止めていたとは…相変わらず規格外な……」
聖女王がクスクス笑う。
反応からしてサイヒとは仲が良い様だ。
「サイヒ様が恋人なら魔王様が人間の敵になる心配は無いですね!サイヒ様優しいし♬」
マガクもマカロンをパクつきながら楽しそうに言う。
「2人はサイヒの事に詳しそうだな?」
「まぁ10年来の付き合いですから」
「10年!?聖女王、是非サイヒの幼いころの話を聞かせていただきたい!!」
突然必死になるルークに聖女王は笑いが止まらなくなった。
お腹を抱えながらも下品になり過ぎないように大笑いしている。
「サイヒの話しで国を救って頂いた礼が出来そうですね。ではサイヒが7歳の頃から話しましょう」
「その時来ていた服や髪形の説明も頼みたい!」
「ガチですね魔王様。でもさっきの前国王を、真名を呼ぶだけで一瞬で消滅させた人物と同一人物とは思えない!」
「マガクもサイヒと10年の付き合いが?」
「年近いですし結構なかよかっ…ルクティエス皇太子、目が怖い!目が怖い!!」
瞬殺でジャクタルの悪魔を滅ぼしたルークだが、人を滅ぼす危険性のある悪魔よりも自分より先にサイヒと仲良くなっていた男に対しての方が危険度が高いらしい。
ジャクタル聖女王の手作りの菓子を嗜みながら、ルークはサイヒの幼い日の話しを聞いてご満悦で帰国する事となるのであった。
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過去最速で決着がついた戦闘(笑)
瞬殺の場面すら書かれず、仕事の後のお茶とばかりに菓子を摘まみながらサイヒの話しで盛り上がるルーク。
魔王って何なんだろう…(;^ω^)
応援ありがとうございます!
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