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【64話】
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ソレはサイヒの一言が発端だった。
マロンの茶会においてでの事である。
「そう言えばルークは私を探すためにカカンに赴いていたのだよな?会ったのはローズ様か?カカンの街並みはどうだった?」
グッ、とルークがフルーツタルトを喉に詰めた。
隣のアンドュアイスが急いで飲み物を差し出す。
こう言う時は唯一アンドュアイスはアイスティーを飲んでいるから一気飲み出来るので大いに助かる。
熱い紅茶ではそう言う訳にはいかない。
クオンが出遅れたのはそのせいだ。
さすがに主にポーションは差し出せない。
アンドュアイスが出してアイスティーを一気に飲み干し、ルークは一息をついた。
「何故急にその話題に飛ぶんだ?」
「祖国が気になるのはおかしくないだろう?」
「それは、そうだが……」
サイヒの反応を見るにルークとローズのやり取りは見ていないらしい。
さすがにルークも口ごもる。
サイヒが大切な相手だと言ったローズがサイヒに下した評価を思い出したのだ。
だがサイヒにそれを伝えるのは躊躇われた。
「サイヒはローズ王子なんて気にしなくていいよ!サイヒをバケモノって言う意地悪な奴なんてポイってしよう!」
子供の口に戸は立てられぬものである。
ルークが隠しておきたかったことを、アンドュアイスは無邪気に口に出してしまう。
「バケモノ?ローズ様が私をバケモノと言ったのか?」
「サイヒ、あのような者の事は忘れてくれ。お前の姉もだ。7歳の子供を神殿に監禁したあげくに、利用するために上部だけの愛情を振りまいていた連中とこれ以上関わって欲しくない」
ルークがサイヒに嘆願する。
折角綺麗な顔なのに眉間に皺が寄って勿体ないとサイヒは思う。
だがルークがそんな顔をするのはベッドの上で快感を堪えている時だけなので、少しばかり気分が良い。
美人は苦悩の表情まで美しい。
己の半身の美貌に気分を良くしたサイヒは、この後たっぷりルークを可愛がろうと思った。
「サイヒ、お前の思考、話を脱線しているだろう?」
「おっと、すまない。ルークが余りにも可愛いのでな」
「それ以上話すな!どうせ碌なこと無い!!」
「私の親友達が冷たい…」
「達?あぁルーシュ殿の事か」
「2人共私にだけ冷たい…」
「お前が常識的な行動とってくれるなら私もルーシュ殿も苦労しないんだがな……」
「失礼な、私程常識をモットーに生きてる人間はいないと自称しているぞ」
「自称な!他称でもそう言われるようにして貰おうか!」
「やっぱり私の親友は冷たい……」
「楽しそうだな、クオン」
地を這うような声がクオンに問うた。
珍しく低い声を出すルークの声だ。
「いえ、楽しんでいる訳では!」
「ほう、サイヒと喋っていて楽しくないと?」
「ルーク、クオンに嫉妬したら駄目だよ。サイヒとクオンは友達なんだから、たまには楽しいお話させてあげないと!それにルークは夜に空のデート楽しんでるでしょう?」
「うっ、兄さんがそう言うなら」
子供のようだがアンドュアイスは1番の年長者だ。
決めるところは決めてくれる。
いや、子供だからこそ素直に何でも発言できるのかもしれないが。
「まぁ、話を戻そう。ルーク、ローズ様は確かに私をバケモノ言ったのだな?」
「私の言葉よりローズの言葉を信じるのか、サイヒ……?」
「あぁ、違う。そんな顔をするな、可愛くて食べてしましたくなる」
「か、可愛いなど…そんな言葉では誤魔化せないからな」
頬をバラ色に染めて言っても説得力がない。
クオンはそっ、とティーカップのポーションを口に含んだ。
「何か気になることがあるのですか、お兄様?」
ホストに徹していたマロンがサイヒに尋ねる。
恋情でも友情でも敬愛の情とも違う、マロンのサイヒに対する信頼が他の者より1歩下がった地点でサイヒの言葉に意味がある事を感づく事が出来た。
「あぁ、ローズ様が私を恐れているのは昔からだ。だからこそローズ様は私をバケモノなどと言わない。
ローズ様と姉上は私の事を心の底から恐れているからな。それでいて私をただの妹として、理解者として接してくれていた。
私の力が己に、カカンと言う国に牙を剥かない様にな。それが堂々化け物呼ばわり…晩餐会で再開した時に私に対して恐れが一切無かったからおかしいとは思っていたのだ。
カカンが一切悪意を感じぬ国であったとルークから聞いて疑問がほぼ確信にかわったな」
「勿体ぶらず話せ」
責める様にクオンが言う。
「カカンはすでに何者かに征服されている」
「「なっ!?」」
声をあげたのはルークとクオンだった。
アンドュアイスは沈黙したまま。
マロンはこの手の類の話しに疎いので今一ピンと来ていないようだ。
「いや、カカンだけでは無いな。おそらくフレイムアーチャとディノートの上層部も怪しい」
「フレイムアーチャにディノートもだと!?」
「ほぼ間違いないな。国か神殿が聖女の力を削ぎにかかっている。フレイムアーチャの新聖女は能力が低すぎるし、3ヵ月ほどまえからディノートの聖女が姿を消した。
まぁこちらは平民として国にいるようだが…破邪結界は機能していないものとみて良いだろう。大国が3つも上層部が落とされている。他の国も調べる余地があるな」
「考え過ぎでは…ないのだな」
「私は笑えん冗談は言わん質だ」
クオン問いにサイヒが答える。
「私が消えた直ぐに我が祖国を乗っ取るとは面白い真似をしてくれる。鬼が出るか蛇が出るか、見に行ってみようでないか花と美の国カカンに」
いつもと変わらない様子でサイヒが言う。
だが手が付けられていないタルトがサイヒの怒りを表しているようだった。
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お久しぶりです。
9月になったので復帰をば!
3日間だらけたので体力チャージたっぷりです!!
話が大事になってきましたが、これからも良ければお付き合いください(*- -)(*_ _)ペコリ
マロンの茶会においてでの事である。
「そう言えばルークは私を探すためにカカンに赴いていたのだよな?会ったのはローズ様か?カカンの街並みはどうだった?」
グッ、とルークがフルーツタルトを喉に詰めた。
隣のアンドュアイスが急いで飲み物を差し出す。
こう言う時は唯一アンドュアイスはアイスティーを飲んでいるから一気飲み出来るので大いに助かる。
熱い紅茶ではそう言う訳にはいかない。
クオンが出遅れたのはそのせいだ。
さすがに主にポーションは差し出せない。
アンドュアイスが出してアイスティーを一気に飲み干し、ルークは一息をついた。
「何故急にその話題に飛ぶんだ?」
「祖国が気になるのはおかしくないだろう?」
「それは、そうだが……」
サイヒの反応を見るにルークとローズのやり取りは見ていないらしい。
さすがにルークも口ごもる。
サイヒが大切な相手だと言ったローズがサイヒに下した評価を思い出したのだ。
だがサイヒにそれを伝えるのは躊躇われた。
「サイヒはローズ王子なんて気にしなくていいよ!サイヒをバケモノって言う意地悪な奴なんてポイってしよう!」
子供の口に戸は立てられぬものである。
ルークが隠しておきたかったことを、アンドュアイスは無邪気に口に出してしまう。
「バケモノ?ローズ様が私をバケモノと言ったのか?」
「サイヒ、あのような者の事は忘れてくれ。お前の姉もだ。7歳の子供を神殿に監禁したあげくに、利用するために上部だけの愛情を振りまいていた連中とこれ以上関わって欲しくない」
ルークがサイヒに嘆願する。
折角綺麗な顔なのに眉間に皺が寄って勿体ないとサイヒは思う。
だがルークがそんな顔をするのはベッドの上で快感を堪えている時だけなので、少しばかり気分が良い。
美人は苦悩の表情まで美しい。
己の半身の美貌に気分を良くしたサイヒは、この後たっぷりルークを可愛がろうと思った。
「サイヒ、お前の思考、話を脱線しているだろう?」
「おっと、すまない。ルークが余りにも可愛いのでな」
「それ以上話すな!どうせ碌なこと無い!!」
「私の親友達が冷たい…」
「達?あぁルーシュ殿の事か」
「2人共私にだけ冷たい…」
「お前が常識的な行動とってくれるなら私もルーシュ殿も苦労しないんだがな……」
「失礼な、私程常識をモットーに生きてる人間はいないと自称しているぞ」
「自称な!他称でもそう言われるようにして貰おうか!」
「やっぱり私の親友は冷たい……」
「楽しそうだな、クオン」
地を這うような声がクオンに問うた。
珍しく低い声を出すルークの声だ。
「いえ、楽しんでいる訳では!」
「ほう、サイヒと喋っていて楽しくないと?」
「ルーク、クオンに嫉妬したら駄目だよ。サイヒとクオンは友達なんだから、たまには楽しいお話させてあげないと!それにルークは夜に空のデート楽しんでるでしょう?」
「うっ、兄さんがそう言うなら」
子供のようだがアンドュアイスは1番の年長者だ。
決めるところは決めてくれる。
いや、子供だからこそ素直に何でも発言できるのかもしれないが。
「まぁ、話を戻そう。ルーク、ローズ様は確かに私をバケモノ言ったのだな?」
「私の言葉よりローズの言葉を信じるのか、サイヒ……?」
「あぁ、違う。そんな顔をするな、可愛くて食べてしましたくなる」
「か、可愛いなど…そんな言葉では誤魔化せないからな」
頬をバラ色に染めて言っても説得力がない。
クオンはそっ、とティーカップのポーションを口に含んだ。
「何か気になることがあるのですか、お兄様?」
ホストに徹していたマロンがサイヒに尋ねる。
恋情でも友情でも敬愛の情とも違う、マロンのサイヒに対する信頼が他の者より1歩下がった地点でサイヒの言葉に意味がある事を感づく事が出来た。
「あぁ、ローズ様が私を恐れているのは昔からだ。だからこそローズ様は私をバケモノなどと言わない。
ローズ様と姉上は私の事を心の底から恐れているからな。それでいて私をただの妹として、理解者として接してくれていた。
私の力が己に、カカンと言う国に牙を剥かない様にな。それが堂々化け物呼ばわり…晩餐会で再開した時に私に対して恐れが一切無かったからおかしいとは思っていたのだ。
カカンが一切悪意を感じぬ国であったとルークから聞いて疑問がほぼ確信にかわったな」
「勿体ぶらず話せ」
責める様にクオンが言う。
「カカンはすでに何者かに征服されている」
「「なっ!?」」
声をあげたのはルークとクオンだった。
アンドュアイスは沈黙したまま。
マロンはこの手の類の話しに疎いので今一ピンと来ていないようだ。
「いや、カカンだけでは無いな。おそらくフレイムアーチャとディノートの上層部も怪しい」
「フレイムアーチャにディノートもだと!?」
「ほぼ間違いないな。国か神殿が聖女の力を削ぎにかかっている。フレイムアーチャの新聖女は能力が低すぎるし、3ヵ月ほどまえからディノートの聖女が姿を消した。
まぁこちらは平民として国にいるようだが…破邪結界は機能していないものとみて良いだろう。大国が3つも上層部が落とされている。他の国も調べる余地があるな」
「考え過ぎでは…ないのだな」
「私は笑えん冗談は言わん質だ」
クオン問いにサイヒが答える。
「私が消えた直ぐに我が祖国を乗っ取るとは面白い真似をしてくれる。鬼が出るか蛇が出るか、見に行ってみようでないか花と美の国カカンに」
いつもと変わらない様子でサイヒが言う。
だが手が付けられていないタルトがサイヒの怒りを表しているようだった。
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お久しぶりです。
9月になったので復帰をば!
3日間だらけたので体力チャージたっぷりです!!
話が大事になってきましたが、これからも良ければお付き合いください(*- -)(*_ _)ペコリ
応援ありがとうございます!
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