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【51話】
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やっかいな大型犬に懐かれた気がする…。
それがサイヒの感想だった。
(又会えるかと言っていたしな…つまりは又会いたいと言う事と思って間違いないだろう。それにしても泣くほど女嫌いとはアンドュアイスの過去に何があったんだ?その辺りを突き止めれば何か有利に働く事柄が見つかるかもしれん……)
頭に浮かぶのはポロポロ涙を流すアンドゥアイスの顔。
顔の造形は似ていないのに泣き方がルークによく似ていた。
なので、敵だからと一蹴してしまう事が出来なくなった。
それなりの罪の償いはさせねば、とは思うのだが。
少しくらい温情をかけてやる余地はないかと、つい考えてしまう。
もし今のサイヒの脳内をルークが覗くことが出来たなら、おそらくサイヒが見た事のない嫉妬に狂ったルークが見れた事だろう。
【認識阻害】をかけているのでワンピース姿だが、誰にも咎められずに後宮に入ることが出来る。
そのまま宦官用宿舎の自室へ帰る。
ワンピースを脱いだら晒を巻き、着慣れた宦官用の服に着替える。
「すっかりコッチの方が着慣れてしまったな」
そして香袋を取り出し懐にしまった。
これでサイヒから香るのは香袋の匂いのみだろう。
決してアンドゥアイスの匂いを消すためではない。
もしアンドゥアイスの匂いを消すだけだったらサイヒは【消臭】の魔術を使う。
アンドュアイスの匂いを誤魔化すためでなく、自らから出る血液の匂いを隠すためだ。
コンコンコン
何時もの時刻、軽いノックの音。
ドアの向こうには愛おしい気配。
「おかえり、ルーク」
「ただいまサイヒ」
ルークがサイヒを腕の中に閉じ込める。
首筋に顔を埋めその香りを堪能しようとして。
「何時もの匂いじゃない…?たまに使う香の匂いだ……」
ルークが首を捻った。
「あぁ、血の匂いを誤魔化したくてな」
「怪我をしているのかっ!?」
「そう定期的に怪我はせんよ」
クスクスとサイヒが笑う。
「女特有の月の物だ」
「月の物……っ!?」
サイヒの言葉の意味を理解してルークが少し赤くなる。
「何だ、私に月の物があるのは不自然か?これでも私も年頃の女だぞ」
「不自然…と言うか、しっくり来ない……」
「素直だな。まぁ私も今まで自分のこの現象が煩わしくて、何度機能停止させてやろうと思ったことか。だが今ではこの煩わしいのも腹が痛むのも悪くない。これのお陰でルークの子を宿せるからな」
「私の子?」
「私との間の子はいらないか?」
「いる!私はサイヒに似た男の子が欲しい!!」
「私はルークに似た女の子が欲しいな」
「では双子だな」
「ふふ、気の早い事だ。だがそれも悪くない」
唇を合わせ【解毒】の法術を体内に流し込む。
何度も角度を変えて口付ける。
ルークもすっかり口付けの仕方を覚えたようで、最初の頃のように呼吸が困難になることはない。
「今日は私がサイヒに所有印を付けたい」
「ルークのしたい様に、好きに自分のモノだと言う証を付けるがいい」
結局、ルークはサイヒの首筋に所有印を1つ付けるに終わった。
脱がそうと思ったら、前に見たサイヒの裸体を思い出して男の生理現象が起きたので。
今のサイヒにはそう言う行為は負担になる訳で。
手を繋いでベッドで昼寝をするだけになった。
:::
モキュモキュとサイヒはビスコッティを頬張る。
実に幸せそうである。
今日も手作りの菓子にはルークの愛情がたっぷりだ。
チラチラとルークの視線がサイヒに向けられる。
「旨いな」
舌でペロリと唇を舐めるサイヒが無駄に色気を垂れ流す。
初心な少女ならそれだけで腰を抜かしそうな色香だ。
(今日も格好良いですわお兄様!)
(((((サイヒ様が今日も男らしい!!)))))
マロンと従者たちは大満足だ。
《クオン、誰にも聞かれたくない話がある。後で時間を融通してくれ》
サイヒの【念話】がクオンの脳内に届いた。
《お前、今度は何をした…?》
既にクオンが胃に手を当てている。
キリキリと痛むのだろう。
サイヒが時間を融通してくれと言う事は、ルークに聞かれたくないと言う事。
基本サイヒはルークに隠し事はしない。
もし何かあるとするならば、それはルークの嫉妬をかう内容であろう。
《今度は誰を誑し込んだ?》
《どうもアンドュアイスに懐かれた様だ》
《……………》
クオンが従者に頼んでバスタオルを持って来て貰う。
それを受け取り、顔を背けると。
ゴフッ!
真っ赤なバスタオルが出来上がった。
綺麗な紅色だ。
染め職人もうっとりとする見事な出来栄えの赤のバスタオルが出来た。
ソレをモンラーンが無言で受け取り下がる。
クオンはティーカップの液体を飲みほして、お代わりをマロンに頼んでいた。
その1連の行動に驚かされる者はココに存在しない。
”また厄介事を思い出したのであろう”
そんな認識だ。
実際には厄介事は今持ち出された出来立てホヤホヤだ。
《今日の夜、俺の部屋で良いか?》
《では窓のカギは開けておいてくれ》
素知らぬ顔で念話を交わす。
今日の夜も吐血すること間違いないだろう。
そうクオンは覚悟を決めた。
それがサイヒの感想だった。
(又会えるかと言っていたしな…つまりは又会いたいと言う事と思って間違いないだろう。それにしても泣くほど女嫌いとはアンドュアイスの過去に何があったんだ?その辺りを突き止めれば何か有利に働く事柄が見つかるかもしれん……)
頭に浮かぶのはポロポロ涙を流すアンドゥアイスの顔。
顔の造形は似ていないのに泣き方がルークによく似ていた。
なので、敵だからと一蹴してしまう事が出来なくなった。
それなりの罪の償いはさせねば、とは思うのだが。
少しくらい温情をかけてやる余地はないかと、つい考えてしまう。
もし今のサイヒの脳内をルークが覗くことが出来たなら、おそらくサイヒが見た事のない嫉妬に狂ったルークが見れた事だろう。
【認識阻害】をかけているのでワンピース姿だが、誰にも咎められずに後宮に入ることが出来る。
そのまま宦官用宿舎の自室へ帰る。
ワンピースを脱いだら晒を巻き、着慣れた宦官用の服に着替える。
「すっかりコッチの方が着慣れてしまったな」
そして香袋を取り出し懐にしまった。
これでサイヒから香るのは香袋の匂いのみだろう。
決してアンドゥアイスの匂いを消すためではない。
もしアンドゥアイスの匂いを消すだけだったらサイヒは【消臭】の魔術を使う。
アンドュアイスの匂いを誤魔化すためでなく、自らから出る血液の匂いを隠すためだ。
コンコンコン
何時もの時刻、軽いノックの音。
ドアの向こうには愛おしい気配。
「おかえり、ルーク」
「ただいまサイヒ」
ルークがサイヒを腕の中に閉じ込める。
首筋に顔を埋めその香りを堪能しようとして。
「何時もの匂いじゃない…?たまに使う香の匂いだ……」
ルークが首を捻った。
「あぁ、血の匂いを誤魔化したくてな」
「怪我をしているのかっ!?」
「そう定期的に怪我はせんよ」
クスクスとサイヒが笑う。
「女特有の月の物だ」
「月の物……っ!?」
サイヒの言葉の意味を理解してルークが少し赤くなる。
「何だ、私に月の物があるのは不自然か?これでも私も年頃の女だぞ」
「不自然…と言うか、しっくり来ない……」
「素直だな。まぁ私も今まで自分のこの現象が煩わしくて、何度機能停止させてやろうと思ったことか。だが今ではこの煩わしいのも腹が痛むのも悪くない。これのお陰でルークの子を宿せるからな」
「私の子?」
「私との間の子はいらないか?」
「いる!私はサイヒに似た男の子が欲しい!!」
「私はルークに似た女の子が欲しいな」
「では双子だな」
「ふふ、気の早い事だ。だがそれも悪くない」
唇を合わせ【解毒】の法術を体内に流し込む。
何度も角度を変えて口付ける。
ルークもすっかり口付けの仕方を覚えたようで、最初の頃のように呼吸が困難になることはない。
「今日は私がサイヒに所有印を付けたい」
「ルークのしたい様に、好きに自分のモノだと言う証を付けるがいい」
結局、ルークはサイヒの首筋に所有印を1つ付けるに終わった。
脱がそうと思ったら、前に見たサイヒの裸体を思い出して男の生理現象が起きたので。
今のサイヒにはそう言う行為は負担になる訳で。
手を繋いでベッドで昼寝をするだけになった。
:::
モキュモキュとサイヒはビスコッティを頬張る。
実に幸せそうである。
今日も手作りの菓子にはルークの愛情がたっぷりだ。
チラチラとルークの視線がサイヒに向けられる。
「旨いな」
舌でペロリと唇を舐めるサイヒが無駄に色気を垂れ流す。
初心な少女ならそれだけで腰を抜かしそうな色香だ。
(今日も格好良いですわお兄様!)
(((((サイヒ様が今日も男らしい!!)))))
マロンと従者たちは大満足だ。
《クオン、誰にも聞かれたくない話がある。後で時間を融通してくれ》
サイヒの【念話】がクオンの脳内に届いた。
《お前、今度は何をした…?》
既にクオンが胃に手を当てている。
キリキリと痛むのだろう。
サイヒが時間を融通してくれと言う事は、ルークに聞かれたくないと言う事。
基本サイヒはルークに隠し事はしない。
もし何かあるとするならば、それはルークの嫉妬をかう内容であろう。
《今度は誰を誑し込んだ?》
《どうもアンドュアイスに懐かれた様だ》
《……………》
クオンが従者に頼んでバスタオルを持って来て貰う。
それを受け取り、顔を背けると。
ゴフッ!
真っ赤なバスタオルが出来上がった。
綺麗な紅色だ。
染め職人もうっとりとする見事な出来栄えの赤のバスタオルが出来た。
ソレをモンラーンが無言で受け取り下がる。
クオンはティーカップの液体を飲みほして、お代わりをマロンに頼んでいた。
その1連の行動に驚かされる者はココに存在しない。
”また厄介事を思い出したのであろう”
そんな認識だ。
実際には厄介事は今持ち出された出来立てホヤホヤだ。
《今日の夜、俺の部屋で良いか?》
《では窓のカギは開けておいてくれ》
素知らぬ顔で念話を交わす。
今日の夜も吐血すること間違いないだろう。
そうクオンは覚悟を決めた。
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