婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

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《180話》

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「ナナさん、最近お家に帰って来ないです、ね。レオンハルトさん、と、居るからです、か?」

 診療所が終わって後片付けだ。
 セブンは先に帰っている。
 夕飯の仕込みがあるからだ。
 なので診療所の後片付けはサラとナナがすることになっているのだ。

 ちなみにラックの薬局は雇っている従業員が後片付けをしている。
 ドラゴンのラックに片付けを求めてはいけない。
 従業員に薬の指導をしてくれてるだけでもありがたいものだ。
 
 レオンハルトは王宮で仕事の〆に入っている事だろう。
 何時でもセブンの診療所に居る訳では無い。
 忘れている人も多いだろうが、レオンハルトはクロイツ王国の宰相なのである。
 セブンと釣るんでいる事が多いが、ちゃんと宰相としての仕事もしている。
 その後にナナとラックの相手もしているのだ。
 精剛過ぎるにも程がある。

 そしてナナはレオンハルトがラックと一線を越えない様に見張りをしている。
 2人の間で交わされた契約はあくまで”手”で満足させることである。
 満足できるならラック的にソレで良いらしい。
 だがあのレオンハルトである。
 サキュバス5人がかりでも敵わないレオンハルトである。
 美女のラックの痴態を前に、一線を踏み外しかねない。
 少なくともナナはソレを懸念している。
 なのでレオンハルトの王宮で与えられた客室に寝泊まりしているのだ。
 勿論ラックも同じである。

 それを何とサラに説明したらよいであろうか?
 ナナは困った。

「サラちゃんドクターと2人きりじゃ不満なの?」

 仕方ないので質問に質問で返して話を逸らす。
 微妙に内容は同じようで方向性を違う所に逸らすのがテクニックである。

「不満、ない、です。ただ、最近セブンさんと、2人…何だか恥ずかしい、です………」

(おぉぉぉぉぉっぉぉサラちゃんがドクターを意識してる!?何ソレ楽しそう!いつの間にそんな面白い事になっていたの!?)

 自分のコイバナはストレス満載だが、て人のコイバナほど美味しい者も無い。
 食事をしながらする恋バナと人の悪口は美味しいものなのだ。

「ぐ、具体的にどう恥ずかしいの?」

 ゴクリ、と唾を飲む。
 どんな返答が返って来るであろうか?
 拗らせDTのセブンがどう言う行動でサラに意識させたか非常に気になるところである。

「え、笑顔が…キラキラして、ます………」

「ドクターが笑顔っ!?」

「凄く、優しくて、頭撫でてくれたり、とか」

「頭を撫でる!?」

「たま、に、お菓子あーんされる、です」

「あーん!?!?」

 暫く離れている間に何があったのだ!?
 と言うかソレは本当にセブンであろうか?
 よく似た誰かが家で入れ替わってると言われた方がまだ信用できる。

「ドクターが笑って優しくてあーんしてくれる…………」

 見たい。
 超見たい。
 多分レオンハルトも見たいはずだ。

「サラちゃん!明日は私とレオも帰るからドクターに伝えておいてね!!」

「はい、です」

 こうしてナナとレオンハルトがセブン邸に行くことが決まった。
 最早珍獣扱いのセブンである。

 そしてナナの言葉をセブンに伝える役目をもったサラは、自分の相談が一向に出来ていないことは頭の片隅にやってしまったのであった。
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