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《179話》
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「うむ、旨い酒だ」
「お口にあって良かったです」
「セブン氏の手作りか?」
「手前味噌ですが」
「自分の女が口にするものは全部手を加えたい派か」
「反論の余地もありません」
セブン手作りの蜂蜜酒を飲みながらサイヒがナッツを頬張っている。
それだけで芸術的に美しいのだから罪なものである。
童貞を拗らせた上にサラに執着しているセブンは悩殺されたりしないが。
普通の人間なら魂を捧げかねない。
そしてこの全能神、ちゃんと地上に降りるときは変装している。
身内の家でもソレはするらしい。
特に人に会う予定も無いが、空色の髪に翡翠色の瞳のリリィ・オブ・ザ・ヴァリーである。
ニヤニヤ笑う顔は大変楽しそうである。
「随分入れ込んでるではないか。愛玩動物ではなかったのか?」
「愛玩動物ですよ、今は。将来的には私の伴侶ですけどね」
「フフフ、酒が甘く感じるな」
「幾らでも甘い話しならして差し上げますよ」
セブンは余裕をもって笑みを浮かべる。
サイヒの存在に振り回された前回と違い余裕があるようだ。
恋は全くもって人を変えてしまうものである。
セブンは男として数段階高みに登ったらしい。
まぁサイヒはその高みをまだまだ見下ろす位置に居るが。
これは全人類に対して共通なので卑下する必要性は無い。
他人の家に酒をただ吞みしにくるが、ちゃんと世界を治める全能神様様なのである。
「サラは手に入りそうか?」
「今のところ順調、ですかね?」
「疑問形か」
「サラにとっては私はまだご主人様みたいなものですよ。己から愛玩動物になってくる。私は自分の女になって欲しいんですけどね」
「その割には長期戦に持ち込むつもりのようではないか。手を出そうと思えばすぐにでも手が届く位置にサラは居ると思うが?体から自覚するのも恋の1つの在りようだぞ?サラはそれでセブン氏を避けたりはせんだろう」
「私は、サラに自分で気付いて欲しいんですよ。それに、徐々に私に惹かれていくサラを見ているのは楽しいものです。自分如きに染めるのもね」
「まだ真っ新だからな。色に染めがいがあろう」
「私の色に染め切ります。他人の色なんかに染めさせしないです…それが、貴方でも」
「ふふ、私は恋敵か。それはそれで愉快だが、食事と酒は提供してくれると嬉しいぞ」
「恋敵でも敬う神様ですよ。ちゃんと食事と酒は提供します。今までのように何時来ていただいても構いません。ただサラをその場に居させることはさせないですけどね」
「随分と敵意を向けられたものだ。それも久しくて楽しいがな」
クスクスとサイヒが笑う。
魅了されはしないが、この全能神の魅力がとんでもないことはセブンでも理解できる。
男も女も虜にする全能神。
こんな相手の傍に恋する少女を近づけさせる訳にはいかない。
ただでさえサラはサイヒ相手に淡い初恋に近い感情を抱いているのだから。
「まぁ座れセブン氏、惚気を聞いてやろう。夜はまだまだ長いのだからな。旨い酒を楽しもうじゃないか」
クイ、とグラスを傾けながら、上機嫌の全能神はそう言った。
「お口にあって良かったです」
「セブン氏の手作りか?」
「手前味噌ですが」
「自分の女が口にするものは全部手を加えたい派か」
「反論の余地もありません」
セブン手作りの蜂蜜酒を飲みながらサイヒがナッツを頬張っている。
それだけで芸術的に美しいのだから罪なものである。
童貞を拗らせた上にサラに執着しているセブンは悩殺されたりしないが。
普通の人間なら魂を捧げかねない。
そしてこの全能神、ちゃんと地上に降りるときは変装している。
身内の家でもソレはするらしい。
特に人に会う予定も無いが、空色の髪に翡翠色の瞳のリリィ・オブ・ザ・ヴァリーである。
ニヤニヤ笑う顔は大変楽しそうである。
「随分入れ込んでるではないか。愛玩動物ではなかったのか?」
「愛玩動物ですよ、今は。将来的には私の伴侶ですけどね」
「フフフ、酒が甘く感じるな」
「幾らでも甘い話しならして差し上げますよ」
セブンは余裕をもって笑みを浮かべる。
サイヒの存在に振り回された前回と違い余裕があるようだ。
恋は全くもって人を変えてしまうものである。
セブンは男として数段階高みに登ったらしい。
まぁサイヒはその高みをまだまだ見下ろす位置に居るが。
これは全人類に対して共通なので卑下する必要性は無い。
他人の家に酒をただ吞みしにくるが、ちゃんと世界を治める全能神様様なのである。
「サラは手に入りそうか?」
「今のところ順調、ですかね?」
「疑問形か」
「サラにとっては私はまだご主人様みたいなものですよ。己から愛玩動物になってくる。私は自分の女になって欲しいんですけどね」
「その割には長期戦に持ち込むつもりのようではないか。手を出そうと思えばすぐにでも手が届く位置にサラは居ると思うが?体から自覚するのも恋の1つの在りようだぞ?サラはそれでセブン氏を避けたりはせんだろう」
「私は、サラに自分で気付いて欲しいんですよ。それに、徐々に私に惹かれていくサラを見ているのは楽しいものです。自分如きに染めるのもね」
「まだ真っ新だからな。色に染めがいがあろう」
「私の色に染め切ります。他人の色なんかに染めさせしないです…それが、貴方でも」
「ふふ、私は恋敵か。それはそれで愉快だが、食事と酒は提供してくれると嬉しいぞ」
「恋敵でも敬う神様ですよ。ちゃんと食事と酒は提供します。今までのように何時来ていただいても構いません。ただサラをその場に居させることはさせないですけどね」
「随分と敵意を向けられたものだ。それも久しくて楽しいがな」
クスクスとサイヒが笑う。
魅了されはしないが、この全能神の魅力がとんでもないことはセブンでも理解できる。
男も女も虜にする全能神。
こんな相手の傍に恋する少女を近づけさせる訳にはいかない。
ただでさえサラはサイヒ相手に淡い初恋に近い感情を抱いているのだから。
「まぁ座れセブン氏、惚気を聞いてやろう。夜はまだまだ長いのだからな。旨い酒を楽しもうじゃないか」
クイ、とグラスを傾けながら、上機嫌の全能神はそう言った。
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