婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

文字の大きさ
上 下
183 / 257

《154話》

しおりを挟む
 ノーマルドラゴンは緑色。
 普通の魔物より知性も知能もずっと上。
 ブレスも吐く。
 一般の冒険者が遭遇するドラゴンはこのノーマルタイプのドラゴンである。

 レッドドラゴンは戦闘能力が高い。
 ノーマルドラゴンより知性も知能もずっと上。
 様々な言語を理解し、高い戦闘能力を誇る。
 レッドドラゴンに言わせればノーマルドラゴンのブレスなどブレスもどき。
 火の属性のレッドドラゴンのブレスはノーマルドラゴンの数十倍の威力。
 羽付きトカゲと一緒にするなとプライドも高い。

 ブルードラゴンは知能が高い。
 人間では理解も出来ない高位魔術・法術もバンバン使う。
 ドラゴンの中で唯一聖属性の法術を扱い、回復や浄化の術を使う。
 肉体能力やブレスの威力はノーマルドラゴンと変わらないが、仕える術が様々なので人間など相手にならない。
 探求心が強いので、興味を持てば人間でも力を貸してくれることもある。

 ホワイトドラゴンは速く飛ぶ。
 どのドラゴンよりも飛ぶスピードが速い。
 他の身体能力やブレスはノーマルドラゴンと変わらない。
 非常に温厚で人間にも友好的。
 互いに利益が見込めれば喜んで獣魔にもなってくれる。
 冒険者がドラゴンに出会ってチビらないのはホワイトドラゴンだけだろう。
 勿論人語も解するぞ。

 ブラックドラゴンは闇属性。
 戦闘能力は他のドラゴンよりずっと上。
 生きてる年齢もずっと上。
 知性も知能も地上の生き物の中ではトップクラス。
 プライドも高く、出会ってなら生きて帰れないと思うべし。

「で、王室の宝を奪ったドラゴンの種類は?」

「ブラックドラゴンだってよ」

「それ、詰んだ、て、いいません、か?」

 セブンの質問にレオンハルトが答えた。
 ソレを聞いてサラはがっくりと肩を落とした。
 ドラゴンの中でもブラックドラゴンにだけは敵対するなとサイヒに言われていたのだ。
 それほどブラックドラゴンは質が悪い。
 サイヒならデコピン1発なのだろうが、サラには荷が重すぎる。
 セブンの魔術とサラの法術でブラックドラゴンを倒せるだろうか?
 交渉の方がまだ分がある気がする。

 ならば魔族であるナナに命運がかかっているかもしれない。
 サラはナナの方を見た。
 ソコには険しい顔をしたナナとレオンハルトが睨み合って居た。

「ブラックドラゴンが相手なら私が交渉するのが1番でしょ!」

「たかだが淫魔の小娘の話をブラックドラゴンが聞いてくれるとは思わないがな」

「人間よりは確率が上がるじゃない!」

「ミジンコ程度の確率が上がるか?」

「それでも!2人で行くよりは!!」

 ナナが声を荒げる。
 レオンハルトがナナの意見を悉く反対するのだ。
 はっきり言って2人の間の空気が物凄く悪い。
 何時もは見てるだけで砂を吐きそうな(セブン談)ぐらい甘々な雰囲気のレオンハルトとナナの相手に取る態度が物凄く攻撃的なのである。

「セブンの魔術は1級品だ。サラちゃんの法術も1級品だ。2人とも魔術も法術もなくても身を護るだけの力もある。淫魔のお前よりもだ。
お前じゃドラゴンどころかサラちゃんの体術にも及ばない。
セブンの剣術はサラちゃんの体術以上だ。この2人と行動を共にして、お前は足手まといにならない自信が本当にあるのかナナ?」

 ナナの大きな垂れ目に水滴が堪り始める。
 瞬きをしてだけで涙は零れ落ちるだろう。
 ソレをしないように、ナナは上を向いて涙が零れるのを耐えた。
 淫魔の自分が悔しくて泣くなんてプライドが許さない。

 だがきっとこれを言ってのがセブンならナナは泣かなかっただろう。
 サラに言われても、赤の他人に言われてもナナは傷つかない。
 自分が戦力外なんて重々承知なのだ。

 レオンハルトの言葉だからはナナはこんなに傷ついている。

 レオンハルトの前でだけは、強かなイイ女で居たかった。
 弱みなんて無い、魔族の強い女だと思って欲しかった。
 でもレオンハルトにとって、ナナは庇護対象なのだ。
 それがナナは悔しくて堪らない。

 自分を認めて欲しい人に認めてくれない。

 セブンよりもサラよりも、自分を認めて欲しいのに。
 初めて認めて欲しい何と思った相手だったのに。
 レオンハルトは誰より自分を認めない。

「帰るわ」

 ナナは背を向け早足で診療所を出ていく。
 細長いピンヒールで綺麗に歩く。
 女の中の女の姿だ。
 そうナナはイイ女だ。
 それはレオンハルトも知っている。
 でも今回のは話が違う。
 あんなイイ女をドラゴンの腹の中に入れてやるほどレオンハルトは器は大きくない。
 あのイイ女は自分の女だ。
 だから危険からは遠ざける。
 自分がそのイイ女から批判を買ったとしても。

「レオンさん、良いの、です、か?」

「俺にも男の意地があるんでね。その分、俺が働くさ」

「お前ついてくる気か?宰相の仕事はどうするんだ?」

「明日1日休みを貰った。1日で方をつけるぞ」

 サラとセブンを見るレオンハルトのめは獰猛な猛禽類のような瞳であった。
 その瞳の圧に飲まれそうになりながらも、サラはレオンハルトの意図を組み、レオンハルトとナナの関係の修復のためにも、例えブラックドラゴンだろうが宝を取り返して見えると覚悟を決めたのだった。
しおりを挟む
感想 945

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

処理中です...