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《147話》

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「うむ、相変わらず美味だな。酒の肴に丁度良い料理だ。流石は己も酒を嗜むだけあって酒飲みの好みを良く把握している。
ワインも赤白、軽めから重めまで揃えて合って飲んでいて飽きん」

 美貌の少年がグラスを傾け血のように赤い液体を己の口内に流し込む。
 ソレだけで腰が抜けそうな色気を醸し出している。
 だが今目の前に居るのは性欲0の男(とある珍獣除く)である。
 空色の髪に翡翠の瞳の美少年が液体を嚥下する仕草を見ても、これと言って反応はしない。
 どちらかと言うと料理を褒められて事により、興奮で頬を赤くしている。
 決して少年の色香に中てられた訳では無いのだ。

「専属侍女様にも負けませんかね?」

「五分五分…いや、今回はセブン氏の勝ちかも知れんな」

(よっしゃ――――――っ!!!)

 セブンがテーブルの下で拳を握り締めガッツポーズをした。
 この男、医療中毒だが同時に料理中毒でもある。
 そして現在の1番のライバルが全能神の専属侍女なのである。
 数々の美味なる食事を作り出す専属侍女。
 薬学にも詳しくポーション造りの天才でもある。

 どちらの分野も拘りと自信を持っているセブンのプライドを擽る人物なのだ。
 その専属侍女ーマロンに僅差であるが今日は勝利したらしい。
 国王の骨髄移植が成功した時と同じくらい歓喜の声を心の中で上げていた。

 もっと兄を労わってやれ王弟………。

「まだ酒も食事もあります、幾らでも堪能して言って下さい」

「ほぅ、それはサービスが行き届いているな。こうまで持て成されては私の立場としても褒美を取らさない訳にはいかん。
地上の一般人の家に酒を強請りに行くなとウチの宰相が五月蠅くてな」

「いえ、私は褒美のためにサイヒ様を御持て成しさせて頂いている訳ではありませんので」

「謙虚も良いが、たまには人に甘えるが良い。いや、この場合神に甘えるだな」

「もう十分に恩恵を頂いております」

「ふふ、本当に謙虚な。いや、己の、人間の手で病に立ち向かいたい医師としてのプライドからか?」

「お恥ずかしい話しその通りでございます。申し訳ありません」

「良い良い謝るでない。私はセブン氏のその姿勢は好ましいと思うぞ?そうだな、では”奇跡”ではない恩恵を人々に授けよう。明日の朝にでも南の森に向かうと良い。
ナビはサラの本能にさせればよい。元聖女なだけあってそう言う加護の気配には鋭いであろう。これからセブン氏でなく、ディノート全体において利になるようにするので予期に計らうが良い」

「あ、有難うございますサイヒ様!」

 セブンが頭を下げる。
 正直セブンとしても己の利だけより、国中に齎せる利を得られる方が有難い。
 王族として政を見てきたゆえの意識なのだろう。
 国が潤う事が1番大切なのだ。
 国民無しにして国は成り立たない。
 国の利は王族の利にも繋がってくる。
 サイヒが何を加護としたのかは分からないが、この神はセブンの期待を裏切ったことが無い。
 だからセブンは感謝を盛大に向け、頭を下げたのだ。

 そして反応が無いのでセブンは頭をあげた。
 ソコにサイヒの姿は無かった。

 かわりにテーブルの上の料理と酒瓶全てが消えていた。
 確かめてみるとキッチンの料理もすべて消えていた。
 お布施変わりなのだろう。

「明日はサラと森の探索か」

 既にセブンの頭の中は、ピクニックに行くなら何をバスケットに詰めようかと料理の事でいっぱいになるのであった。
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