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《130話》淫魔side2

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「絶対ドクターの事だから昼間の出来事、ちゃんと理解してないわよね」

「まぁセブンだからな」

「もう、タバコやめて、臭いが嫌いなの!」

「サキュバスは感度だけでなく嗅覚も強いのか?」

「まぁ強いわよ。フェロモン嗅ぎ取らなきゃいけない種族だし…おかげで今まで寝た男がタバコ吸うの嫌だったのよね。そんなこと出来なくなるくらい搾り取ってやるけど。まぁ幼さゆえの過ち、てとこかしら?」

「ふ~ん、事後にタバコを吸う男は嫌い、と。でも今までは言わなかったよな?」

「どうせその場限りばっかりだったから」

「つまり俺とはその場限りにしたくない、と」

「もう、ニヤニヤ笑わないでよ!」

「ん~悪い悪い、ナナは一等に可愛いな。溺れても仕方ない、一晩の関係でないなら禁煙しよう。お前が嫌がる事はしたくないからな」

「バカ」

 ナナがシーツを頭から被ってレオンハルトに背を向けた。
 その顔が赤く染まっているであろうことをレオンハルトは知っている。
 サキュバスなのに、ナナは意外と可愛いのだ。
 その可愛いを引き出しているのが自分だとはレオンハルトは気付いていない。
 セブンと言い、類は友を呼ぶのだろうか?
 恋愛に対して情緒がバグった男2人である。

 ナナはレオンハルトと関係を持ってから別の男とは関係を持っていない。
 レオンハルトで1度慣れてしまった体は他の男を受け付けない。
 ただ気持ちイイだけじゃない、何かがレオンハルトにはあるのだ。
 サキュバスのナナはそれに気付かない。
 恋なんて、サキュバスには無縁の感情だ。
 自分がそんなものに溺れているなんて思いもしないのだ。

 だがレオンハルトの方もナナと関係を持って以来、1度娼館に行っただけでそれ以外別の女に手を出していない。

 娼館で抱いた女は何かが違った。
 それが何かは分からない。
 ディノートの一級の娼館の女を全員抱いたが、何かが満ち足りない。
 そしてナナを抱いて「あぁこれだ」と思った。

 ナナがサキュバス仲間を連れて来た時に全員抱き潰してやったが、それでも満ち足りたのはナナの身体だけだった。
 サキュバスだから、と言うのが原因でないらしい。
 余程相性が良いのだろうな、とレオンハルトは思っている。

 きっと2人の関係を見たものが居れば、それは『初恋』だと教えてくれただろう。

 女に困った事のないレオンハルトとサキュバスのナナでは”恋愛”の思考にはたどり着けないのだ。

 ただ抱き合うと酷く気持ちが良い。
 女なんて抱き潰すものだと思っていたが、ナナとなら数度交われば満足だ。
 ナナもレオンハルトの全てを搾り取ろうなど思っていない。
 ただ、普通の人間の女のように抱かれるだけで満足してしまう。

 セブンとサラをお子ちゃま呼ばわりしている2人だが、結局類は友を呼んでいるのだ。

 甘酸っぱい初恋をしているのはセブンとサラだけでは無いのである。
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