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《121話》

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「サラは居るか?」

 中心街に近い位置にある平民街の小さな診療所。
 今日も患者で賑わっている。
 それもそうである。
 何せこの診療所の医師は、国王陛下の命を救ったことで有名なのだ。

 そこにとんでもない美少年が現れた。

 空色の髪と翡翠の瞳。 
 中性的な顔立ち。
 やや小柄ながらもスラリとした若木の様な肢体の魅力は服の上からでも分かる。

 診療所はこの客が来たことで一瞬静まり返った。

「さ、サササササササイヒ様ぁぁぁぁぁっ!!」

 珍獣が黄色い声を上げた。
 本日の楽しい1日の始まりだった。

 :::

 午前診が終わり、昼休憩にはいった診療所。
 休憩室でセブンが居れたお茶を美少年はご馳走になっていた。
 目の前のサラは顔が蕩け切っている。
 現在美少年は【認識阻害】を使っていない。
 美少年本来の魅力が前面に出ている。
 これを相手にして平然とできる者がいるなら見てみたいモノである。
 サキュバスのナナですらモジモジしている。

 椅子を汚すなよエロナース…そうセブンは思った。

「で、何の用事で降臨されたんですか?」

「この前貰った酒が旨くてな、買いだめしようかと思ったところだ」

「その節はお世話になりました」

「いやいや、美味い酒であった。是非帰る前に店に連れて行ってくれ」

「それは良いのですが…ソコの珍獣に用があったのでは?」

「うむ、可愛い珍獣と美味しいものでも食べに行こうと思ってな。出来れば甘味を楽しみたい」

「なら今日は午前診で終わって午後からは休診にします。アラが居ないと仕事もパフォーマンスが落ちますからね。俺とエロナースも同行しても?」

「ほーぅ、良い良い。皆で美味しいものを食べに行こうではないか」

 セブンの言葉に美少年…男装のサイヒは答えた。
 何かニヤニヤしている。
 思う所があるらしい。
 そんないやらしい笑みでさえフェロモンを垂れ流すのだから質が悪い。

 ナナがビクビク痙攣している。
 声とフェロモンだけでサキュバスを絶頂させる存在。
 エロン…レオンハルトでもこの全能神の前でも子ネコちゃんになるだろう。
 是非会わせたいものである。

 残念ながら本日はレオンハルトは仕事でディノートの王宮に行っている。
 
 全能神とインキュバス越えの淫魔。
 2人の対決を見たかったセブンは少し残念に思った。
 こんなにレオンハルトが居ないことを残念に思ったことはない。
 やはり全能神は凄い影響力を与える存在である。

「では何時もの洋菓子店でも宜しいでしょうか?」

「支払いはこちらが持つ。楽しい話でも聞かせてくれ」

「承知しました」

 セブンは意外とこの全能神を敬っているのである。
 己の兄の命が救えたのもサイヒのお陰だ。
 敬わない訳がない。
 ついでに少々プライドも刺激されてしまうが。
 それについてはセブンは自覚症状が無い。
 自覚するのはもう少し進展してからだろう。
 
 進展とは何かとは?

 それは勿論アレだアレ。

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁ…サイヒ様サイヒ様サイヒ様サイヒ様…………」

 珍獣は再び念仏を唱えていた。
 唱えているのが全能神の名前なので何かご利益があるかもしれない。

 こうして4人は診療所を後にした。

 美味な甘味を貪るべく。
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