婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

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《111話》

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「セブンさん、骨髄液適性者が見つかった、本当、ですか?」

「匿名希望だから相手は話せないがな。適合率はかなり高い」

「じゃぁ後は手術、だけ、ですね!」

「そう、手術だけ…なんだがなぁ…手術室が無い………詰んだ」

 セブンが遠い目をする。
 一応セブンの診療所には小さな手術室はある。
 そこで本来手術を受けてもらう予定だったのだが。
 周りの貴族のうるさいことうるさい事。

 国王を町医者の診療所で手術させるなんて不敬なことが出来るかと文句をつけられたのだ。

 文句をつけられるだけなら問題はない。
 何と議会まで開いて診療所の利用禁止にされてしまった。

 なので現在は診療所から運べるものだけ運んで、あとは王宮の医務室で国王を診ている状態なのだが、状態がかんばしく無い。
 これでも医務室に運べただけ良い方なのだ。
 宰相などは始め国王を自室から動かすことすら反対した。
 確かに国王の自室は何があっても良いように色々なものが常備してある。
 警護だって万全だ。

 だが今必要なのは警護ではなく手術なのだ。

 どうやってスプリングの柔らかいキングサイズのベッドで手術をしろと言うのだ?
 手術台は堅くて程よい大きさのモノものが良い。

「私は大きくて硬いのが1番だと思うけど♡」

「お前は黙れエロナース」

 セブンの掌から冷気が放たれた。
 見事に美女の氷像が一瞬で出来上がった。
 いきなりなのにポーズをしっかりとってる辺り、流石はサキュバスである。

「手術室、あれば、良いです、か?」

「王宮内にな、出来ればクロイツの平均レベルの手術が行える手術室が欲しい」

「レオンハルト様に頼めば?」

「何時溶けたエロナース?それよりレオンに頼んでも無理だ。機材が多すぎるし大きすぎる。運ぶのにかかる日数を考えたら国王の手術に間に合わない………」

「じゃぁ王宮に手術室を、造る、です」

「「はい?」」

 セブンとナナの声がはもった。
 何を言ってるこの生き物、と珍獣を見る目つきでサラを見る。
 聖女には手術室を作れる法術でもあるのだろうか?
 あるのならそれに越したことはない。
 だが最高神ですら聖女の能力は”無菌室を作れる”としか言われていないのだ。
 流石にサラが元聖女でも王宮に手術室を造る事は不可能なはずなのだ。
 本来なら。

「サイヒ様から、誕生日プレゼント、聞かれた、です…まだ頼んでないので、ディノートの王宮に最高の手術室、作って貰う…です!」

 ニッコリとサラが無邪気に笑う。
 無垢な笑顔は微笑ましいが、言って居る内容はぶっ飛んでいる。
 天界の最高神…少し身内に甘すぎないか………?

 セブンとナナはそう思った。

 だがこれ程乗り込むのに相応しい大船はない。
 もはや戦艦レベルの船である。
 最高神の寵愛が凄い。

「感謝するサラ!」

 チュッ!

 セブンがサラを抱きしめ頬にキスをした。
 相当嬉しかったらしい。

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 バターン

 悲鳴を上げてサラは倒れた。
 全身茹蛸みたいに真っ赤になって。

「ドクター普段しないような事するから…」

「いや、俺も羽目を外しすぎたと思っている。反省している、ついでに後悔はもっとしている………」

「起きてから頼んでもらいましょうか手術室」

「だな」

 サラを持ち上げ、ソファに寝かせる。
 随分と女慣れしたものであるこの童貞が。
 
 毅然としている姿のセブンが、サラに負けず茹蛸になっているのを指摘しないのはナナの優しさであった。
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