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《110話》

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「くそっ、やはりこうなったか…」

 セブンは暗い部屋の中、電子の光を見て頭を抱え唸った。
 骨髄液の検査の結果…該当者無し。
 予想はしていた。
 ディノートは貴族の血を護る傾向は薄い。
 外の国からでも嫁を貰うし、平民であっても嫁に貰う。

 それ故に、最も異種婚の多い王族は血が薄まっているのだ。

「ディノートの国民中の骨髄液を採取しろってか?」

 誰に言う訳でもなく1人愚痴る。
 文句も言いたくなる。
 どれだけセブンが良い腕の医者だろうと、必要なものが不揃いでは手術には踏み込めない。

 麻酔はナナが居る。
 サラと言う最高の補助看も居る。
 己と言う最高の医師も居る。

 だが、ツキに見放されたのか1番必要なものが見つからない。

「探し物は案外近くにあるぞ?神話の時代で”灯台下暗し”と言うらしい」

 甘いアルトの声がセブンの後ろからかけられた。
 その声の甘さと圧にセブンは身動きが取れない。
 振り向いて相手を確認したくても出来ない。
 それをさせない格の違いが声の主にはある。

 だがセブンは相手を間違う事なく確信していた。

 こんな声の持ち主は1人しか知らない。

「神様が特定の人間に肩入れしても良いのですか、最高神?」

「神がお気に入りに加担しないなんて人間の想像でしかない。しかも私は元人間だ。お気に入りに力を貸してやりたくなるのも仕方あるまい?
まぁ天道に反しないレベルでしか手は貸せんがな」

「具体的にはどのくらいに?」

「己の血を思い出せアシュバット王子、言っただろう”灯台下暗し”だ。そしてサラは聖女、聖女の浄化の力は不浄の気が一切ない空間を作れる。医学的に言ったら”無菌状態”と言うやつだな」

「なっ、本当ですか!?」

 ガバリ、とセブンが振り返る。
 しかしそこにあるのは暗闇の中にある自分の部屋の家具だけ。
 声の主は姿を消していた。

「ふ、ふふふふふふ神様のお墨付きか!今日ほどお前に感謝したことはないぞサラ!」

 そしてセブンは己の骨髄液を魔術で採取する。
 セブンは元々魔術の達人なのだ。
 コレ位は造作もない。
 普段は己の身分を隠すため力をひた隠しにする傾向があるが。

 その己の骨髄液を検査にかけて、セブンは出た結果に拳を高くつき上げたのだった。
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