婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

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《107話》

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「検査の結果、国王は急性骨髄性白血病だと思われます」

 再び王城に来たセブンが周囲の医師と宰相に伝えた。

「急性骨髄性白血病?」

「白血病の中の急性リンパ性白血病には、ウイルスが原因で白血病を発症するものもあります。急性骨髄性白血病に関してはウイルスの関与が明らかになっているものはありません。
つまり急性骨髄性白血病(AML)は、はしかや水疱瘡のように伝染する病気ではありません。
白血病は遺伝性の疾患ではなく、したがって親から子に伝わることはありません」

 その言葉に最初は小さくほっ、と息を吐いた。
 これならアポロ王子が同じ病にかかる言葉は無いだろう。
 宰相はアポロ王子を後継として立てたいのだ。
 正直王の病気など何でも良かった。
 適当に医者に直せない大病にかかって今亡くなってくれたほうが、宰相には都合が良い。
 国王が死んだら下町の3流石に全ての罪を被せてやれば良い。
 そう宰相は考えていた。

「白血病の進行に伴い、異常な細胞がますます増殖して優勢となり、骨髄および血流から正常な細胞を締め出してしまいます。
そのため、治療をしないで放置しておくと、感染と闘える正常な白血球の数が足りなくなり、感染症を引き起こす可能性があります。また、赤血球の不足から重度の貧血に至ったり、血小板の不足によりアザや出血が起こる可能性があります。
このように、未治療は極めて重篤な疾患となるので、早期の診断と治療が不可欠です」

「具体的にはどうすれば良いのだセブン医師!?」

 国王専属医師がセブンに問うた。
 この医師は国王への忠誠が熱い。
 共に国王の病と闘うには欠かせない人材の1人であるとセブンは考えていた。

「急性骨髄性白血病の患者の治療法として、化学療法のほかに、造血幹細胞移植があります。
造血幹細胞移植は、もともとは白血病細胞だけではなく正常な血液細胞も併せて死滅させる程の強力な抗がん剤や放射線治療を最大限行って、その後に、健康な提供者あるいは自身の骨髄から白血病細胞を除いた幹細胞を移植して正常な血液細胞を補充する、という考え方で行われていました。
造血幹細胞移植で用いる幹細胞には、骨髄、末梢血幹細胞、さい帯血があります。そして、ドナーとなる人が血縁者や非血縁者という違いがあります。
造血幹細胞移植が数多く行われるようになり、自分以外の血縁者や非血縁者から移植をすると、提供者由来の白血球が患者の体に残る白血病細胞をやっつける免疫反応を持つことがわかってきました。
その為、造血幹細胞移植は、抗がん剤や放射線だけではなく移植後に起こる免疫反応の力も使って白血病細胞を死滅させる治療という考方に変わっています。
造血幹細胞移植では、抗がん剤や放射線の治療を受けたあと、幹細胞が投与されます。この時患者さんは通常、無菌室に入っています。
そして、点滴のチューブから幹細胞が移植されます。そして、幹細胞が患者の体の中になじむように、患者には免疫抑制剤が点滴または飲み薬で投与されます。うまくいけば、移植後2~3週間でドナーさんの血液細胞が増えてきます」

「なら王様は助かるのだな!」

「ドナーさえ見つかれば…助かる見込みはあります………」

「血族の誰かではダメなのか?」

「ヒト白血球抗原が一致する確率はきょうだい間で25%、両親や親戚では1%以下、他人同士では数百人から10万人に1人です」

「そんなに…少ないのか………」

「こればかりはどうしようもありません。王族の方の全員の骨髄を調べてみましょう。適合者を祈るばかりです。ただ心配なのが造血幹細胞移植に特異的な合併症である移植片対宿主病です。
ドナーの細胞が白血病細胞を攻撃することは造血幹細胞移植における重要な治療効果のひとつなのですが、患者自身を攻撃する場合は、移植片対宿主病という病気になります。
移植片とはドナーの事、宿主とは患者の事を意味しています。
急性移植片対宿主病は、皮膚、肝臓そして腸に主に現れます。
軽微な症状で治療を要さない場合から、重い症状が出て治療としても致死的な状態になる場合まで症状の重さは様々です。
慢性移植片対宿主病は、皮膚や関節が硬くなったり、口の粘膜が荒れたりする症状で、膠原病の症状とよく似ています。数か月から数年の治療が必要となる場合があり、患者の生活の質が低下します」

「そんな……」

 国王専属医師が膝をつく。
 その顔は絶望に染まっていた。

「だが手術をしなければ私はもうすぐ死ぬのだろう?ならそこのセブン医師に手術をお願いする。せめてアポロが政を己の力で回せるようになるまでは、この寿命を持たせたい」

「国王様………」

「泣く出ない。何時もの様に毅然としておれ、其方は私の専属医師であろうが」

「はい…はい、国王様!」

 国王専属医師が立ち上がる。
 そしてセブンの手を取った。

「私も出来る範囲で協力させていただく。どうか国王様の手術をお願いする!」

「確かに、その命承りました」

 セブンの手を握り締める国王専属医師の手は震えていて、その瞳はまるで祈りを捧げるように透き通っていた。
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