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《92話》
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「ふわぁぁあ、人間、てあんなに、軽やかに踊る、のです、ね。衣装の羽、を、揺らしながら、クルクルクルクル綺麗、です」
「あれは黒鳥の32回スピンだな。ヒロインをこなしも黒鳥こなす一人二役。大した能力だな。優れた才能の持ち主ってことだ」
「セブン、さん。前にも見た事、ある、ですか?」
「だいぶ昔だからな…ストーリーもうろ覚えだ」
「何となく、白い鳥さんと、黒い鳥、さんが王子様を、取り合っている、のは、分かります」
「神話時代から続く物語だからな。
『白鳥の湖』
第1幕第1場
ドイツのとある王宮の前庭。王子ジークフリートの成人を祝う宴が開かれており、王子の友人たちが祝福の踊りを踊っている。そこに王子の母親が現れ、明日行われる舞踏会で花嫁を選ぶよう命じる。まだ結婚したくない王子は憂鬱な気分になる。やがて日が暮れると、白鳥の群れが空を飛んでいくのが見え、王子は白鳥狩りをしようと湖へ向かう。
第1幕第2場
静かな湖のほとり。弓を構えている王子の目の前で、1羽の白鳥が岸辺に上がり、美しい娘に変身する。王子の姿に気づいた娘は驚き、怯えるが、やがて身の上話を始める。娘の名はオデットといい、とある国の王女だったが、侍女たちと共に悪魔ロットバルトから呪いをかけられてしまった。
そのために昼は白鳥の姿となり、夜だけ人間の姿に戻るのである。この呪いを解くただ一つの方法は、まだ誰にも愛を誓ったことのない男が、オデットに愛を捧げることである。2人は惹かれ合い、王子は自分が愛を誓おうと申し出るが、夜明けとともにオデットたちは白鳥の姿に戻り、飛び去って行く。
第2幕
王宮の舞踏会場。ジークフリートの花嫁候補が様々な国から訪れるが、王子は彼女たちには目もくれず、オデットのことを思い続けている。
そこへ、客人に変装した悪魔ロットバルトとその娘オディールが現れる。オディールは悪魔の魔法によって、オデットと瓜二つの姿になっている。
オディールをオデットと思い込んだ王子は、その場で結婚の誓いを立ててしまう。
その途端、ロットバルトたちは正体を現し、広間の窓に映る悲しげなオデットの姿を示しながら、王子をあざ笑って去っていく。王子は自分の過ちを悔い、急いでオデットのもとへ向かう。
第3幕
再び湖のほとり。侍女たちのもとへ戻ったオデットは、王子の誓いが破られたことを告げる。後を追ってきた王子はオデットに赦しを請う。オデットは王子を赦し、2人は湖に身を投げる。2人の愛の力を前にした悪魔は滅び、恋人たちの魂は永遠に結ばれる。
と言う話だ。踊りだけ見ても分からんだろう?」
「オデットも、王子、も死んじゃう、です、か?私なら好きな人、の傍には…白鳥の姿、でも、近くに居たい…です………」
ムカッ
サラの一言にセブンの胸が苛立った。
(また不整脈か?今度1度きちんと調べよう)
それは嫉妬と言うものだがセブンはDTを拗らせているのだ。
生暖かい目で見守ってやって欲しい。
「俺が王子なら黒鳥と白鳥間違えたりしねーよ。どんなに似てても、好きな相手なら分かるはずだ。逆にどんなに姿が変わってても好きな相手なら見極められる…多分」
恋愛童貞なので多分を加えるセブン。
前半の折角の良い台詞が可哀そうである。
「姿を、変えて、も…分かる………」
サラはセブンを見つめた。
髪も瞳の色も黒。
眼鏡をかけており、その下には切れ長の目がのぞいている。
黒髪は長いが適当に縛られておりぼさぼさだ。
そして何処か人を寄せ付けない壁のような物がある気がする。
サラはその壁の中でも、自分はかなり深いところまで受け入れてくれていると感じているが。
(アーシュさん、は、金髪で、湖色の瞳、で柔らかな笑顔の人、です。セブンさんとは真逆の…でも、本当に、姿が違う同一人物、があったら………そんな訳、ない、ですよね…………?)
もし同一人物ならサラはどうしていたであろうか?
少なくとも今のサラはセブンがアーシュと同一人物であることを、心の奥底で願っている節がある。
セブンの餌付けが先か、サラの庇護欲が先か?
今はまだ分からないが、2人の中が進んでいくには、歩みは遅いが間違いなく前へと進んでいるようであった。
「あれは黒鳥の32回スピンだな。ヒロインをこなしも黒鳥こなす一人二役。大した能力だな。優れた才能の持ち主ってことだ」
「セブン、さん。前にも見た事、ある、ですか?」
「だいぶ昔だからな…ストーリーもうろ覚えだ」
「何となく、白い鳥さんと、黒い鳥、さんが王子様を、取り合っている、のは、分かります」
「神話時代から続く物語だからな。
『白鳥の湖』
第1幕第1場
ドイツのとある王宮の前庭。王子ジークフリートの成人を祝う宴が開かれており、王子の友人たちが祝福の踊りを踊っている。そこに王子の母親が現れ、明日行われる舞踏会で花嫁を選ぶよう命じる。まだ結婚したくない王子は憂鬱な気分になる。やがて日が暮れると、白鳥の群れが空を飛んでいくのが見え、王子は白鳥狩りをしようと湖へ向かう。
第1幕第2場
静かな湖のほとり。弓を構えている王子の目の前で、1羽の白鳥が岸辺に上がり、美しい娘に変身する。王子の姿に気づいた娘は驚き、怯えるが、やがて身の上話を始める。娘の名はオデットといい、とある国の王女だったが、侍女たちと共に悪魔ロットバルトから呪いをかけられてしまった。
そのために昼は白鳥の姿となり、夜だけ人間の姿に戻るのである。この呪いを解くただ一つの方法は、まだ誰にも愛を誓ったことのない男が、オデットに愛を捧げることである。2人は惹かれ合い、王子は自分が愛を誓おうと申し出るが、夜明けとともにオデットたちは白鳥の姿に戻り、飛び去って行く。
第2幕
王宮の舞踏会場。ジークフリートの花嫁候補が様々な国から訪れるが、王子は彼女たちには目もくれず、オデットのことを思い続けている。
そこへ、客人に変装した悪魔ロットバルトとその娘オディールが現れる。オディールは悪魔の魔法によって、オデットと瓜二つの姿になっている。
オディールをオデットと思い込んだ王子は、その場で結婚の誓いを立ててしまう。
その途端、ロットバルトたちは正体を現し、広間の窓に映る悲しげなオデットの姿を示しながら、王子をあざ笑って去っていく。王子は自分の過ちを悔い、急いでオデットのもとへ向かう。
第3幕
再び湖のほとり。侍女たちのもとへ戻ったオデットは、王子の誓いが破られたことを告げる。後を追ってきた王子はオデットに赦しを請う。オデットは王子を赦し、2人は湖に身を投げる。2人の愛の力を前にした悪魔は滅び、恋人たちの魂は永遠に結ばれる。
と言う話だ。踊りだけ見ても分からんだろう?」
「オデットも、王子、も死んじゃう、です、か?私なら好きな人、の傍には…白鳥の姿、でも、近くに居たい…です………」
ムカッ
サラの一言にセブンの胸が苛立った。
(また不整脈か?今度1度きちんと調べよう)
それは嫉妬と言うものだがセブンはDTを拗らせているのだ。
生暖かい目で見守ってやって欲しい。
「俺が王子なら黒鳥と白鳥間違えたりしねーよ。どんなに似てても、好きな相手なら分かるはずだ。逆にどんなに姿が変わってても好きな相手なら見極められる…多分」
恋愛童貞なので多分を加えるセブン。
前半の折角の良い台詞が可哀そうである。
「姿を、変えて、も…分かる………」
サラはセブンを見つめた。
髪も瞳の色も黒。
眼鏡をかけており、その下には切れ長の目がのぞいている。
黒髪は長いが適当に縛られておりぼさぼさだ。
そして何処か人を寄せ付けない壁のような物がある気がする。
サラはその壁の中でも、自分はかなり深いところまで受け入れてくれていると感じているが。
(アーシュさん、は、金髪で、湖色の瞳、で柔らかな笑顔の人、です。セブンさんとは真逆の…でも、本当に、姿が違う同一人物、があったら………そんな訳、ない、ですよね…………?)
もし同一人物ならサラはどうしていたであろうか?
少なくとも今のサラはセブンがアーシュと同一人物であることを、心の奥底で願っている節がある。
セブンの餌付けが先か、サラの庇護欲が先か?
今はまだ分からないが、2人の中が進んでいくには、歩みは遅いが間違いなく前へと進んでいるようであった。
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