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《66話》

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 獣車は走るよ何処までも。

 サラとセブンとナナはディノート行きの獣車に乗っていた。
 行きよりも揺れが少しばかり荒い。
 御者のレベルが低いのかもしれない。
 よく見てみれば護衛の男が1人居るが、行きの護衛に比べると持っている獲物のランクが落ちる。
 まぁ何かが出たところでサラが居れば法術で何とかするだろう。
 なので特に心配事は無い。

 あるとすれば未だ寝込んでいるセブンをどうするかだろう。
 ナナに膝枕されながら魘されている。

「ち、千切られる…嚙み千切られる………ウーン…」

 本気で魘されている。
 言葉の意味は…朝食を一緒にとっていた者なら分かるだろう。
 理解していないのはサラくらいだ。

「セブンさん、何が、噛み千切られ、る、ですか?」

「そうね、ナニが食いちぎられるんでしょうね」

 ナナの返しにもサラは今一意味が分からない。
 何に何を噛み千切られるのか?
 肉食獣に襲われる夢でも見ているのであろうか?
 ある意味間違ってはいない。

 肉に飢えた野生動物にナニを噛み千切られる夢なのだから。

 心配するサラをナナは適当に言い包めて、膝の上に乗せたセブンの頭を撫でる。

「うふふ~♡無警戒でかわいい~♡」

 ギリィ

 同車していた男たちが奥歯を食いしばった。
 白く柔らかそうな肉付きの良いナナの太腿。
 それを占領している三十路の男。
 羨ましい事この上ない。

 自分なら反対向きにあの太腿に顔を埋めたい!

 男たちの息が荒く目もギラギラと血走っていた。
 何せ今日のナナはタイトなマイクロミニのスカート。
 顔の向きさえ帰ればスカートの中をじっくりと近くから覗き込めるだろう。

 下着が見える心配?
 そんなのはナナにはない。

 大丈夫、履いてませんよ!

 そうナナはノーパンなのだ。
 勿論ノーブラでもある。
 足に顔を埋めたら秘境が、上を剥けば下乳が拝める。
 悔しい。
 抹殺してやりたい位悔しい!!

 そんな前屈みな男たちを女たちは冷ややかな目で見ていた。

 ガタンッ!!

 獣車が急停車した。

「ひゃぁっ!」

 ポフン

 反動でサラがナナの胸に飛び込んだ。
 その反動でナナが倒れ、セブンの頭がごとりと床に落ちた。
 ゴン、と結構な音がしていたが大丈夫だろうか…。

 そんな事、乗車していた男たちには関係なかった。
 サラがナナを押し倒す形になったせいで、ナナのスカートの中が1部の男たちの視界に入ったのだ。

「の、ノーパ――――ッ!!!」

「ぱ、パイパッ!!!!!」

「立て筋っ!!!!」

 ブッ!!

 丁度良い位置に居た男たちにはその秘境が覗き込めたのだ。
 そして一様に鼻血を噴いた。

「ママ~、パパがおはなから血が出たよ~」

「そんなもの放っておきなさい……」

 汚物を見る目で女が男の1人を見ていた。
 子供に見せない様にと、子供を抱きしめて視線を向けられない様にして。
 この日、1つの家庭が壊れる危機がを迎えていた。

 だがそんな事は問題無かった。
 問題なのは獣車が急停止した原因である。

「ヒ、ヒィィィィィィィッ!!」

 御者の悲鳴が乗客の所まで聞こえる。

「何だ?」

「何か出たのか!?」

 乗客たちも一気に不安気な雰囲気になる。

「ギガンテスが出た!皆逃げてくれぇっ!!」

 御者が大声を張り上げた。

「ギ、ギガンテスだとっ!?」

「何でBクラスの魔物がこんな所に居るんだよ!?」

 みな獣車から降りる。
 獣車を遮っていた巨大な存在を見て、腰を抜かす者もいる。
 B級の魔物など滅多に人前に現れない。
 普段は瘴気の濃い森やダンジョンに居るからだ。

「おい、俺の頭が痛いのは何故だ?」

 のっそり獣車から降りて来たセブンの場違いな声が聞こえた。

「ギガンテスだよギガンテス!アンタも連れの女の子たち連れて逃げるんだ!!」

「へ~ギガンテス…丁度良い、俺は今猛烈に機嫌が悪い。相手してやる」

 言うが早いかセブンの掲げた掌が光る。

【天に掲げる閃光】

 力ある言葉をセブンが発し、掌がら巨大な閃光が放たれギガンテスを飲み込んだ。

「「「「「なぁっ!?」」」」」

 皆驚きの声をあげポカンと口を開いていた。

「セブンさん、凄い、です!」

「本当大した魔術だわ♡こんな強い魔力持ったドクターのザー〇ンは凄く美味しいんでしょうねぇ♡」

 ナナだけ何かがズレている。

「ふぅ、少し気が晴れたな…つーか皆何を固まっているんだ?」

「ドクター、その発言は初期の”なろう系無自覚チート主人公”の発言よ…」

「何かよく分からんがお前が俺を侮辱したことは分かった。レオの所に送り返すかこのエロナース」

「それだけは止めてぇぇぇぇぇっ!!!」

 サキュバスのナナにこれ程恐れられるレオンハルト。
 本当に恐ろしいのは人間だった、と言うのは本当の様だ。
 レオンハルトに関したは事例は普通の事例ではないだろうが。

「お医者さんしてないセブンさん…何か…何か、凄い、です。凄い魔術見た興奮で心臓がドキドキ、して、ます」

 こうして怪我人が出る事も無く、旅は再開した。
 セブンが御者と交渉して、サラの法術で結界と加護を与える事で宿代を負担させる契約をした。
 セブンの魔術を見た御者は1も2も無くその交渉を飲んだ。
 Bクラスの魔物を倒せるものなど、熟練冒険者どころか超1流の冒険者クラスの能力の持ち主だ。
 敵に回したい相手ではないだろう。
 それにこの契約は御者にとってもまずくわない。

 こうして快適な旅が約束された獣車の中、セブン一行は他の客からは遠巻きにソーシャルディスタンスを取られる事となった。

「で、何で俺の後頭部にコブが出来ているんだ???」

 コブをさすりながらセブンは首を傾げるのだった。
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