上 下
75 / 257

《59話》

しおりを挟む
「ところでドクター、今日から何処の宿に泊まるの?」

 ナナがセブンに問う。
 
 大きな施設に大きな集合住宅。
 どれが宿か一見して分からない。

「いや、宿は取らん。こっちにいる間は知人の家に厄介になる。家事力を提供する代わりにタダで宿を手に入れる事が出来たぞ、クックックッ」

 それはそれは楽しそうなセブンである。
 そろそろ料理も作りたくなって来ていたのだ。
 獣車での旅の途中の昼食は各自持ちだ。
 そしてセブンは毎回サンドイッチを宿の厨房を借りてこさえていた。
 サンドイッチ。
 飽きない用に具のレパートリーも拘った。
 だがサンドイッチ…。

 もうそろそろ手の込んだものが作りたい!

 鍋が。
 フライパンが。
 オーブンが。
 蒸し器が恋しい。

 そうセブンは家事大好きの中身主婦のアラサー男なのだ。
 家事力はカンスト。
 嫁が欲しいと思ったことなど無い。
 自分の家に他人が上がり込んで家の中をうろつかれる何て以ての外だ。
 食事だって1人でゆっくり静かに食べたい。
 なのに何故に女が欲しいと思えるか?

 だがセブンは気付いていない。

 サラは月の物が始まると体もメンタルもボロボロになるのでセブンの家で療養するのだ。

 セブンの作った食事を食べ。
 セブンが入った湯の張った浴槽につかり。
 セブンの家のトイレも使用する。

 それをセブンは居心地が悪いとは思わない。
 むしろ2人前の食事を作る方がはかどると、嬉々として料理をしている。
 これだけ自分の内側にサラを入れておいて、未だサラが自分の中で特別枠だと認識していないのである。

 もう脳味噌が病気の領域だ。

 ちなみにこの時はサラの体調を気遣うせいかご子息はお眠りになっている。
 1度サラが元気な時にセブンの家に泊まりに行ってみて欲しいものだ。
 ご子息が昼夜問わず勃ち上がる事だろう。
 その際のセブンの脳内に罹るダメージも測定したいものだ。

「ここだ」

「嫌な予感てあたるのよね~」

 城壁をくぐってから馬車に乗るのでまさかとは思ったのだ。
 王都の中心に向かう馬車。
 つまり王宮に近づいて行く訳だ。
 そして王宮に近いほど暮らす貴族の階級は上がっていく。

 そして馬車が止まった先は、王宮の次位に大きいのではないかと言う邸だった。

「「「「「「「「「お久し振りですセブン様」」」」」」」」

 セブンたちの訪問を主から聞かされていた邸の使用人たちが、馬車から降りたセブンたちを出迎えてくれた。

「暫く邪魔をさせて貰う。レオはまだ務めか?」

「はい、夕食には戻ると言っておられました」

「はいはい、夕食は作っとけって事だな」

「楽しみにされておりました」

「了解した」

 久しぶりの料理に腕が鳴るのかニヤリ、と笑みを浮かべる。
 悪役にしか見えないのは何故なのか?

「ちょ、ちょっとドクター!この屋敷の主人の階級は!?」

「あぁレオは公爵でこの国の宰相だ」

「美味しそう!じゃなくて、上流階級程魔族に厳しいのがクロイツじゃなかった!?」

「そうだぞ。まぁレオは気にしないで良い。エロナースものんびり過ごせ。ただし餌をくれてやるから使用人には手を出すなよ!」

「分かってるわよ!」

 小声でボソボソ喋るセブンとナナを見ながらサラはニコニコ笑顔を浮かべていた。
 それはそれは楽しそうに。

「楽しそうねサラちゃん?」

「ふへへ、久しぶりにセブンさんのご飯ですぅ」

(逆2乗の法則とは、物理量の大きさがその発生源からの距離の2乗に反比例する、という法則である。逆2乗とは2乗の逆数のことであり、この法則はしばしば、ある物理量の大きさがその発生源からの距離の逆2乗に比例する、という形でも述べられる。逆2乗の法則はしばしば短縮して逆2乗則とも呼ばれる。逆2乗の法則は冪乗則の一種であり、様々な物理現象の中に見出すことができる。以下の節では自然科学と物理学の歴史の中で特に重要な例について述べる。逆2乗の法則の発見により、物理学者は何らかの変化を認めたとき、その発生源と発生源との距離の関係を調べ、それらが逆2乗の法則に当てはまるかどうかに関心を持つようになった。逆2乗の法則が成り立つこと、特に指数が 2 であることには、我々のいる空間が3次元であり等方的であることと密接に関係している。空間の各点で測定できる物理量について、それがある発生源から生じる流体のようなものと見なせる場合、発生源から偏りなく流出する物質からの類推により、発生源を囲む球面を通過する物質の量は、球面の大きさによらず一定であると考えることができる。したがって球面を通過する物質の密度は球面の面積に反比例して小さくなる。発生源が球殻の中心にあるとすれば、球面の大きさは発生源から球面までの距離の2乗に比例するから、球面を通過する物質の密度は球面と発生源の距離の2乗に反比例する。
逆2乗の法則が成り立つことは、発生源の形状に強く依存している。逆2乗の法則が成り立つのは発生源が点や真球と見なせる場合であり、例えば棒状の光源に対しては逆2乗の法則は成り立たない。一般には、発生源の細かな構造を無視できる程度の距離においてのみ、より具体的には発生源の大きさに比べて非常に遠距離の領域で逆2乗の法則が成り立つ)

 本日のセブンの脳みそのお供は逆2乗の法則であった。
しおりを挟む
感想 945

あなたにおすすめの小説

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

処理中です...