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《48話》
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「ふわぁ、獣車、です」
旅行用のバッグを持って、サラはポカンと口を開いた。
馬車は割と見かけるが、獣車はあまり街を走っていない。
馬車と違って長旅に使われる事が多いからだ。
では何故に獣車が長旅に使われる事が多いのか?
それは獣車は魔物に襲われた時に対処しやすいからだ。
人を乗せるだけに特化した馬ではこうはいかない。
獣車を牽く獣は魔物に襲われても自分で対処できるように仕込んである。
なので従者の御者は”テイマー”が多い。
勿論”テイマー”の免許はギルドで取らないといけないので、御者も自分の身を守るのに長けている。
寧ろ乗客を守るために戦いと旅慣れしたテイマーが従者の御者になる事は珍しくない。
なにせ給金が良いのだ。
普通の馬車の御者の5倍は稼げる。
冒険者をするより安全性も高いし美味しい仕事なのである。
そしてその獣車を見て、サラはポカンと口を開いている訳である。
「別に獣車くらい街中でも見るだろ?」
セブンが呆れた声を出す。
「自分が乗る、のは、初めて、です」
サラが目をキラキラと輝かせている。
スラム生まれで、その後神殿で暮らしていたサラは人並みの生活を送った事が無かった。
なのでこう言う初体験は期待で胸が膨らむのだ。
比喩である。
サラの胸は相変わらず絶壁なので安心して頂きたい。
「クロイツ迄は獣車で2週間ほどだ。お前、車酔いは大丈夫なのか?」
「法術で何とでもなります」
そう言えばコイツは聖女だった、とセブンは思い出した。
普段の行動が馬鹿犬過ぎて、サラが聖女として強大な法術を使っていた元聖女と言う事を忘れがちである。
まぁサラは元聖女だが、今でも聖女と呼ばれるだけの法力がある。
全能神のお墨付きだ。
そこいらの”神殿に認定を受けた聖女”とは訳が違う。
使える法術の種類も法力量も術式の範囲も、他の聖女たちとは比べ物にならない程優れているのだ。
普段のサラを見ているとその事を忘れそうになるが。
なにせ普段のサラは看護婦として上等の働きをするが、すぐに食べ物で釣れるチョロい小娘だからだ。
実際セブンはサラを食い物で釣っている。
釣ったともアフターケアの餌もやる、中々良い上司ムーブをかますセブンである。
お陰でサラのセブンへの信頼はカンストしている。
「でも何で急にクロイツに旅行?」
ナナが唇に指をあてながらセブンに問う。
その仕種すら色っぽい。
さすがはサキュバスである。
既に獣車に乗り込んでいる男たちのハートもゲットしている。
ロングカーデにキャミソールにホットパンツ。
相変わらず攻めた衣装だ。
サラにはまず着こなせないだろう。
足元は編み上げのブーツ。
足の爪にペディキュアがしてある当たり、女としての隙が一切ない。
ちなみにサラは女としての色気が一切ない。
この違い、涙なしに語れようか……。
「人間ドックを受けにな」
「それって身体検査の詳しいの、みたいなやつだったけ?」
「そうだ。アラの体の状態を詳しく見て貰う。なんせ長年ジャガイモだけで生きて来た奴だぞ?体のどっかに異変があってもおかしくわない」
主に胸が、とは言わない。
だがナナはサラの胸を見て。
「そうよね~」
と頷いた。
ナナ的にもサラの胸が絶壁なのが気になる様だ。
まぁソレはソレで美味しいんだけど、なんて思いながら。
「昼食は弁当、朝夜は泊まった宿で食事を取る」
「宿…泊まるの初めて、です……」
何やらサラが目をキラキラさせている。
本当に何もかもが未経験なのである。
「部屋は3室取る。アラに手を出すなよエロナース」
「サラちゃん一緒にお風呂入りましょうね~♡」
「風呂も別々だエロナース」
「じゃぁ何を楽しみに旅をしろと!?」
「適当に歓楽街でひっかけろ」
「ん~まぁソレも旅の醍醐味よね♡了解よドクター♡」
(にしても、随分サラちゃんに手を出せれるのを警戒してるわね~♡ドクターもそろそろ恋愛面での精神年齢上がった、て事かしら?ドクター食べれる日も近いかもね~♡♡)
今の所サラにしか反応していないセブンがナナに反応するのかは謎であるが。
そう言う相手、とは見ていないらしい。
(まぁこの旅行の間に美味しく2人纏めて頂けるよう、私も頑張りましょ♡)
果たしてサラとセブンはナナの魔の手から逃げとおすことが出来るのか?
始まる前から不安要素しかない旅になること間違いなしの旅がこうして始まった。
旅行用のバッグを持って、サラはポカンと口を開いた。
馬車は割と見かけるが、獣車はあまり街を走っていない。
馬車と違って長旅に使われる事が多いからだ。
では何故に獣車が長旅に使われる事が多いのか?
それは獣車は魔物に襲われた時に対処しやすいからだ。
人を乗せるだけに特化した馬ではこうはいかない。
獣車を牽く獣は魔物に襲われても自分で対処できるように仕込んである。
なので従者の御者は”テイマー”が多い。
勿論”テイマー”の免許はギルドで取らないといけないので、御者も自分の身を守るのに長けている。
寧ろ乗客を守るために戦いと旅慣れしたテイマーが従者の御者になる事は珍しくない。
なにせ給金が良いのだ。
普通の馬車の御者の5倍は稼げる。
冒険者をするより安全性も高いし美味しい仕事なのである。
そしてその獣車を見て、サラはポカンと口を開いている訳である。
「別に獣車くらい街中でも見るだろ?」
セブンが呆れた声を出す。
「自分が乗る、のは、初めて、です」
サラが目をキラキラと輝かせている。
スラム生まれで、その後神殿で暮らしていたサラは人並みの生活を送った事が無かった。
なのでこう言う初体験は期待で胸が膨らむのだ。
比喩である。
サラの胸は相変わらず絶壁なので安心して頂きたい。
「クロイツ迄は獣車で2週間ほどだ。お前、車酔いは大丈夫なのか?」
「法術で何とでもなります」
そう言えばコイツは聖女だった、とセブンは思い出した。
普段の行動が馬鹿犬過ぎて、サラが聖女として強大な法術を使っていた元聖女と言う事を忘れがちである。
まぁサラは元聖女だが、今でも聖女と呼ばれるだけの法力がある。
全能神のお墨付きだ。
そこいらの”神殿に認定を受けた聖女”とは訳が違う。
使える法術の種類も法力量も術式の範囲も、他の聖女たちとは比べ物にならない程優れているのだ。
普段のサラを見ているとその事を忘れそうになるが。
なにせ普段のサラは看護婦として上等の働きをするが、すぐに食べ物で釣れるチョロい小娘だからだ。
実際セブンはサラを食い物で釣っている。
釣ったともアフターケアの餌もやる、中々良い上司ムーブをかますセブンである。
お陰でサラのセブンへの信頼はカンストしている。
「でも何で急にクロイツに旅行?」
ナナが唇に指をあてながらセブンに問う。
その仕種すら色っぽい。
さすがはサキュバスである。
既に獣車に乗り込んでいる男たちのハートもゲットしている。
ロングカーデにキャミソールにホットパンツ。
相変わらず攻めた衣装だ。
サラにはまず着こなせないだろう。
足元は編み上げのブーツ。
足の爪にペディキュアがしてある当たり、女としての隙が一切ない。
ちなみにサラは女としての色気が一切ない。
この違い、涙なしに語れようか……。
「人間ドックを受けにな」
「それって身体検査の詳しいの、みたいなやつだったけ?」
「そうだ。アラの体の状態を詳しく見て貰う。なんせ長年ジャガイモだけで生きて来た奴だぞ?体のどっかに異変があってもおかしくわない」
主に胸が、とは言わない。
だがナナはサラの胸を見て。
「そうよね~」
と頷いた。
ナナ的にもサラの胸が絶壁なのが気になる様だ。
まぁソレはソレで美味しいんだけど、なんて思いながら。
「昼食は弁当、朝夜は泊まった宿で食事を取る」
「宿…泊まるの初めて、です……」
何やらサラが目をキラキラさせている。
本当に何もかもが未経験なのである。
「部屋は3室取る。アラに手を出すなよエロナース」
「サラちゃん一緒にお風呂入りましょうね~♡」
「風呂も別々だエロナース」
「じゃぁ何を楽しみに旅をしろと!?」
「適当に歓楽街でひっかけろ」
「ん~まぁソレも旅の醍醐味よね♡了解よドクター♡」
(にしても、随分サラちゃんに手を出せれるのを警戒してるわね~♡ドクターもそろそろ恋愛面での精神年齢上がった、て事かしら?ドクター食べれる日も近いかもね~♡♡)
今の所サラにしか反応していないセブンがナナに反応するのかは謎であるが。
そう言う相手、とは見ていないらしい。
(まぁこの旅行の間に美味しく2人纏めて頂けるよう、私も頑張りましょ♡)
果たしてサラとセブンはナナの魔の手から逃げとおすことが出来るのか?
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