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《44話》

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「アナフィラキシーショックだな」

「あ、あな……?」

「アナフィラキシーショックとは、何かしらのアレルゲンなどに対して全身性のアレルギー反応が引き起こされ、血圧の低下や意識状態の悪化が出現した状態を指す。
アナフィラキシーショックが生じた際には、迅速な治療が必要だ。また、一度アナフィラキシーショックを起こしたことがある者は、再度同じ原因物質に曝露されることで同じように非常に重い症状を起こす。
アレルギー反応を起こす可能性がある代表的な物質として薬剤、食物などがあるが、身に覚えは?」

「それは…その………」

 神官は焦った。
 まさかパイナップルを肛門に挿入して症状が起きた何て言えるはずがない。
 裸体でベッドに寝ている司教はシーツをかけられ下半身は隠されている。
 尿で汚れたシーツも隠してある。
 この下半身を隠すシーツを捲ることは、司教の威厳が崩壊するのと同義だ。

「とっとと言え!司教を殺したいのか!?アナフィラキシーショックを起こすと、全身各所にさまざまな症状が現れる。全身にじんましんが生じたり、咳や喘鳴ぜんめいが生じる。喉頭粘膜が腫れ空気の通りが悪くなることから、呼吸困難による窒息も生じることもある。
消化器症状として、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛が生じる。
さらに、全身の血圧や意識状態も低下し、短時間のうちに死に至ることもありえる。
原因となる物質に曝露されてからアナフィラキシーショックに至るまでの時間は、原因物質によって異なる。注射薬やハチ毒によるアナフィラキシーショックの経過は特に早い傾向があり、原因薬剤を注射されたり蜂に刺されたりしてから数分の経過で心停止に至ることもあるんだぞ!!!」

「あぅあぅあぅ…」

 もう神官は泣きそうだった。
 このままでは司教が死んでしまう。
 だが司教の権威が……。
 自分で決めるなど出来るはずもない。

「何が原因かは秘匿義務があるので公言しない!さっさと答えろ!!」

 切れ長のセブンの目がギロリ、と神官を睨む。
 ただの町医者のはずなのに、有無を言わせぬ迫力があった。
 そして神官はその迫力に抗うほどの胆力は持ち合わせていなかった。

「パイナップルを……」

「パイナップルを食べたのか?」

「いえ、こ、こここ肛門に、挿入しました………」

「はぁっ!?」

 セブンの迫力に神官はもう失禁しそうだった。
 怖い。
 怖すぎる。
 何故ただの町医者にこれ程迫力があるのか?

 バサリ

 セブンがシーツを捲る。
 ソコにはM字開脚状態の司教の裸の下半身があった。
 開いたままの肛門には確かにパイナップルの底が見える。

「神殿のトップがコレとはな…まぁ患者は患者だ。アラ、治療をする。手伝え」

「了解、しま、した」

 時間が無いので今回サラは変装をしていない。
 なので灰色のローブのフードをすっぽりと被って顔が見えない様にしている。
 なにせ顔馴染みが多すぎる古巣だ。
 折角縁が切れたのに何かの間違いで切れた縁が繋がったらたまったものでは無い。

「アドレナリンの筋肉注射、酸素投与。気管支吸入薬、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)、副腎皮質ステロイド薬などの投与を行なう」

「承知、しまし、た」

 サラが酸素注入器と注射の用意をする。

「な、何をする気だ!?」

「見たら分かるだろう、治療だ!」

「薬液を注射だと?口から飲める煎じ薬かポーションは無いのか!?血管に薬液を注入するなど神への冒涜だ!!」

「じゃ、帰るわ」

「な、何ぃっ!?」

「別に俺は司教様が死去しようがどうでも良いからな。仕事だから来たが、仕事をさせて貰えんなら帰るしかないだろう?それとも看取れと?」

「だ、だが注射など…冒涜ではないか、何か、他の方法を………」

「司教がしてた事は神への冒涜じゃねーっての?肛門に喰いもん詰めやがって!コレで俺がパイナップル食べれなくなったらどう責任取ってくれるんだ?あぁん!?」

 話し方がもはや輩だ。
 おかしい、セブンは育ちは良いはずなのに…。

「取り合えずお前、パイナップルを抜け」

「わ、私がですか!?」

「挿れたんだから抜けるだろ?おら、早く抜けぇっ!!」

「はぃいぃぃぃいっ!!」

 もはや神官は涙を流している。
 鼻水も流して顔がぐちゃぐちゃである。
 だが神官も司教の御付になって日が浅い訳ではない。
 この行為には慣れ切っている。

 ズリュ
 ボテンッ

 パイナップルが抜けた。
 所々汚れているが、何で汚れているか敢えて知りたくないセブンは目をそらした。

「じゃぁ、注射をうつぞ」

「待ってください!」

 神官が泣きながらセブンを止めた。

「まだ神への冒涜がどうとか言うつもりじゃ…」

「まだあるんです!」

「何が?」

「パイナップルは2つ入っているんです!!」

「どうなってんだその穴ぁぁぁぁっ!!」

 セブンが叫ぶのも仕方がない。
 もはや司教の穴はブラックホールである。
 アナフィラキシーショックが起きなければ3つ目もイッていたかもしれない………。
 恐ろしい孔である。

 神官に2つ目のパイナップルを孔から抜かせた後、セブンはテキパキと処置を施す。
 司教の呼吸も安息してきた。

「パイナップル、何故、お尻に入れ、る、ですか?」

「アラ、お前は深く考えるな。調べるな。エロナースに聞くな。今日の事は忘れろ。そうすれば明日のお昼はフルーツタルトがお茶の時間に出るだろう」

「もう、忘れた、です!」

 サラが単純で良かった。
 それにしてもパイナップル。
 明日のフルーツタルトはパイナップルは使わないでいこうとセブンは思った。

「司教はパイナップルにアレルギーがある。今後は口から食べるのも禁止だ」

「あぁ、何てことだ…これでは又、太いゴーヤを探さしにいかなくては……」

「は?ゴーヤ?」

「司教様はずっとゴーヤを使われていたのです。市場から買い占めて、毎日聖なる野菜で不浄を清めるとゴーヤを挿入されておりました……5本でも足りないのに、何本のゴーヤを詰めればいいのか……」

「て」

「て?」

「てめー等のせいかゴーヤが入手出来なかったの!俺のゴーヤチャンプルを返せ!そして余計な情報を俺の頭に入れなやがって!ゴーヤ迄くえなくなったらどう責任取るつもりだぁ、おいぃ!!」

「ひぃぃいぃぃいスミマセン!ズビバゼン”ン”ン”!!!」

 医者が人を蹴り倒すとはどうなのか。
 神官は泣きながらセブンに蹴りつけられている。
 仕方ない。
 食べ物の恨みは重いのだ。

「ゴーヤ?」

「お前は何も考えるな。そうすれば明後日の菓子はチョコブラウニーになるだろう」

「忘れた、です!」

 単純すぎる。
 単純すぎる、この元聖女。
 これ程単純だから5年も不遇な聖女暮らしを務めあげれたのだろう。

 だがサラは明日と明後日のお菓子がクッキーからグレードアップしたので心の中で司教に感謝していた。

 何とも良い医師と看護師のコンビである。

 しかし明日から司教はどうするのであろうか?
 もうこれに懲りて直腸への異物挿入は止めて欲しいものなのだが。
 と言うか普通はこんな目にあったら恐ろしくて異物挿入をやめるだろう。
 司教の明日はどっちであろうか……。

 ただ言える事は、加護の無い司教はこれから転がり落ちるように犯した罪の数だけ不幸が襲って来るであろうと言う事だけである。
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