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《35話》
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「アコロ様、居なくなった、の、私のせい、です……」
サラがガタガタと体を震わせた。
「どうしたアラ!?」
「私が、私が、祈りを、捧げなかった、から、罰が下った、です」
「サラちゃんのせいじゃないわよ!祈り出来なかったのだって体の状態が悪かったんだから仕方ないじゃない!」
「でも、でも………」
ペチン
「痛い、です…」
セブンのデコピンがサラの額を襲った。
「お前が祈らなくなっただけでこれだけの被害が出るんならそりゃ国が悪い。お前みたいな小娘1人に何もかんも背負わせないと平和を維持できない国なら亡ぶならそりゃ国の力不足だ。
自分を過剰評価するな小娘が。お前の祈りが無くても国は滅びない。それよりお前がすべきことは国を憂うより診療場に来た患者を看病する事だ。お前の能力なんてそれくらいで充分だ。その方がよっぽど役に立つ。
憂国なんてお前には100年早い。だからサラ、お前はお前が今すべきことをしろ」
セブンの瞳がサラの瞳を覗き込む。
普段、黒いセブンの瞳が湖のような綺麗な水色に変わっていた。
その水面のような綺麗な水色にサラは目を心を奪われた。
(セブンさんの目、きれい、です……)
「法術はまだ使えるんだろう?ならレッドタグの所に行ってヤバい奴等の一命を何とか繋ぎ止めろ!」
「はい、です!」
サラは診療所の中でも特に重篤な患者を入れる診察室に飛び込む。
そこには腕を欠損した者。
頭からとめどなく血を流している者。
内臓が出ないよう腹部に圧迫ようの包帯を巻き付けられている者。
まさに今死んでも仕方ないくらいの重傷者が何名も転がっていた。
(私にはもう、聖女の力、ない、です…だから、自分自身の法力、で、この人たちの命、繋ぎ止める、です!)
体は震えていなかった。
勇気ならセブンに貰った。
サラの仕事は診療所の怪我人の看病。
国を守る事じゃない。
傷ついたものを癒す事だ。
【治癒】
力ある言葉を発する。
サラの体が淡く光り、部屋をその光が包み込んだ。
患者たちの荒い息が安らかな息に変わる。
傷口は塞がり、欠損していた筈の腕や足まで再生している。
「はぁはぁ、コレが今の私の、精一杯、です…」
ペタリ、とサラが床に尻もちをついた。
法力を使い過ぎて気だるさが体中を襲う。
神に与えられた子宮の加護の力を使う事に比べて何という重労働か。
「世の中の回復術師、の、皆さん、凄い、です」
目から鱗が落ちる気分だ。
自分の法力を使うと言うのはこれ程までに体力を奪われるのかと。
サラは気付いていなかった。
診察室の患者の全てが全回復している事に。
欠損すら治す治癒を普通の回復術師では使えないことに。
十数人もの多数の怪我人を一瞬で1度で治せる治癒の使い手など、大陸に5本の指でも有り余るくらいにしか存在しないことに。
神殿で碌に学を与えられなかったサラはあまりにも無知であった。
自分が起こした奇跡が、自分の法力で行った行為が、十分”聖女”を語るに相応しいほどの能力があった事に気付くことは出来なかったのだ。
この後、あまりに帰りが遅いサラを迎えに来たセブンが事の顛末を聞いてサラの能力の高さに、嬉しさのあまり抱き締められる事になるのだが、初めての男性からの抱擁にサラは意識を飛ばす事になる。
更に法力回復ポーションを浴びるように飲まされて、まだまだ居る他の患者の手当(回復はさせない)を蟻のように働かせられる事になるのだった。
ちなみにセブンがサラを”サラ”と呼んだことに気付いたのはナナだけであった。
セブン自身も無意識だったらしい。
その瞳の色もナナに指摘されて、興奮のあまり【色彩変換】の魔術が溶けていた事もセブン本人は気付いていなかったらしい。
まともにサラに”本来の自分の色”を見られた事にもどかしい心情になって、セブンはその日の夜は枕を抱きかかえてベッドに転がる事となる。
サラがガタガタと体を震わせた。
「どうしたアラ!?」
「私が、私が、祈りを、捧げなかった、から、罰が下った、です」
「サラちゃんのせいじゃないわよ!祈り出来なかったのだって体の状態が悪かったんだから仕方ないじゃない!」
「でも、でも………」
ペチン
「痛い、です…」
セブンのデコピンがサラの額を襲った。
「お前が祈らなくなっただけでこれだけの被害が出るんならそりゃ国が悪い。お前みたいな小娘1人に何もかんも背負わせないと平和を維持できない国なら亡ぶならそりゃ国の力不足だ。
自分を過剰評価するな小娘が。お前の祈りが無くても国は滅びない。それよりお前がすべきことは国を憂うより診療場に来た患者を看病する事だ。お前の能力なんてそれくらいで充分だ。その方がよっぽど役に立つ。
憂国なんてお前には100年早い。だからサラ、お前はお前が今すべきことをしろ」
セブンの瞳がサラの瞳を覗き込む。
普段、黒いセブンの瞳が湖のような綺麗な水色に変わっていた。
その水面のような綺麗な水色にサラは目を心を奪われた。
(セブンさんの目、きれい、です……)
「法術はまだ使えるんだろう?ならレッドタグの所に行ってヤバい奴等の一命を何とか繋ぎ止めろ!」
「はい、です!」
サラは診療所の中でも特に重篤な患者を入れる診察室に飛び込む。
そこには腕を欠損した者。
頭からとめどなく血を流している者。
内臓が出ないよう腹部に圧迫ようの包帯を巻き付けられている者。
まさに今死んでも仕方ないくらいの重傷者が何名も転がっていた。
(私にはもう、聖女の力、ない、です…だから、自分自身の法力、で、この人たちの命、繋ぎ止める、です!)
体は震えていなかった。
勇気ならセブンに貰った。
サラの仕事は診療所の怪我人の看病。
国を守る事じゃない。
傷ついたものを癒す事だ。
【治癒】
力ある言葉を発する。
サラの体が淡く光り、部屋をその光が包み込んだ。
患者たちの荒い息が安らかな息に変わる。
傷口は塞がり、欠損していた筈の腕や足まで再生している。
「はぁはぁ、コレが今の私の、精一杯、です…」
ペタリ、とサラが床に尻もちをついた。
法力を使い過ぎて気だるさが体中を襲う。
神に与えられた子宮の加護の力を使う事に比べて何という重労働か。
「世の中の回復術師、の、皆さん、凄い、です」
目から鱗が落ちる気分だ。
自分の法力を使うと言うのはこれ程までに体力を奪われるのかと。
サラは気付いていなかった。
診察室の患者の全てが全回復している事に。
欠損すら治す治癒を普通の回復術師では使えないことに。
十数人もの多数の怪我人を一瞬で1度で治せる治癒の使い手など、大陸に5本の指でも有り余るくらいにしか存在しないことに。
神殿で碌に学を与えられなかったサラはあまりにも無知であった。
自分が起こした奇跡が、自分の法力で行った行為が、十分”聖女”を語るに相応しいほどの能力があった事に気付くことは出来なかったのだ。
この後、あまりに帰りが遅いサラを迎えに来たセブンが事の顛末を聞いてサラの能力の高さに、嬉しさのあまり抱き締められる事になるのだが、初めての男性からの抱擁にサラは意識を飛ばす事になる。
更に法力回復ポーションを浴びるように飲まされて、まだまだ居る他の患者の手当(回復はさせない)を蟻のように働かせられる事になるのだった。
ちなみにセブンがサラを”サラ”と呼んだことに気付いたのはナナだけであった。
セブン自身も無意識だったらしい。
その瞳の色もナナに指摘されて、興奮のあまり【色彩変換】の魔術が溶けていた事もセブン本人は気付いていなかったらしい。
まともにサラに”本来の自分の色”を見られた事にもどかしい心情になって、セブンはその日の夜は枕を抱きかかえてベッドに転がる事となる。
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