婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

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《32話》

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 サラの体調が落ち着いて、サラは3日間滞在したセブンの家を後にした。
 家事能力がカンストしているセブンの家の居心地は大変良かった。
 綺麗な部屋で柔らかいベッドで寝て、美味しい手作り料理を食べる。
 セブンの自信満々の料理は大変美味しい。
 正直、セブン宅を後にするのは後ろ髪が引かれる。

 だがこの好待遇の上に部屋でゴロゴロ。
 怠惰な事この上ない。

 しかもセブンは従業員の体調管理は上司の務め、と仕事を休んでいるサラに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
 気分は貴族様様だ。
 セブンは使用人と言うには態度がデカいが。
 それでもこの暮らしは快適過ぎる。

 このままではセブンにおんぶ抱っこになってしまうと、サラは漢方薬で体調が回復してきたので自宅に戻ることを決意した。

 本っ当にセブンの作る食事が食べれなくなるのは後ろ髪が全力で引かれて堪らないのだが。

 働いても無いのに生活の面倒を見て貰うのを良しとするほどサラは図太くなかった。
 ただでさえ神殿で馬車馬よりこき使われていた生活をしていた身だ。
 人の為に身を尽くしていないとソワソワするのである。

 祈りも3日間もお休みしていた事だし…。

 怠惰な快適な生活をさせて貰って、ちょっぴり罪悪感で胸がチクチク痛む。
 心情である。
 実際に胸が痛んでいる訳では無い。
 実際に肉体に伴う痛みなら胸の成長の兆しであったかもしれないが。
 残念ながらサラの胸は相変わらず真っ平である。
 月の物も来た事だし2次成長も始まるはずだ。
 今後に期待しようではないか。

 そして3日ぶりにサラが診療所に復帰すると、そこは野戦病棟のような有様だった……。

 兎に角、人・人・人。
 怪我人だらけである。
 屈強な男たちが多い。
 身に着けている鎧から王宮の兵士であることがサラには分かった。
 伊達に第1王子の婚約者だった訳ではないのだ。

「サラちゃん!復帰してさっそく何だけど治癒法術頼んでよい!?」

 珍しく焦った様子のナナが診療所の前で呆然としているサラを見つけると声を投げかけて来た。

「あ、ナナさん!今、本名呼ぶ、駄目、です!!」

「え?」

「王宮騎士さん、私の正体、知ってる人、多い、です!」

「あ、あ~サラちゃんそう言えば聖女で第1王子の婚約者だったんだっけ?」

「はい、です。出来れば此処に居る事、知られたくない、です。バレたら、多分連れ戻される、です」

「それは困るわね…良し、お姉さんに任せなさいな♡サラちゃんが正体ばれなければいいのよね?」

「はい、ですが…良い案ある、ですか?」

「ふふん、ついでにドクターの度肝も抜いてやりましょう♡」

「いえ、セブンさんの度肝、は、抜かなくて良い、ですが……」

「裏口から入るわよサラちゃん♡うふふ、た~のしみ~♡」

 やたらと上機嫌なサラを引きずりナナは人に見られないよう診療所の裏口から侵入するのだった。
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