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《27話》
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ドンドンと安物のドアを叩く音がする。
半分眠ったままのサラは夢うつつでソレを聞いていた。
(安物のドア、そんなに叩いたら、壊れる、です。私、修理のお金、ない、です…)
「埒が明かない!力づくで開ける!」
ドアの向こうで魔力が行使されたのが分かった。
カチャリ、と安い音を立ててドアの鍵が開けられる。
「アラ!無事か!?」
「セブン…さん……?」
苛立ったようなセブンの声がサラの耳に届いた。
入って来たのはセブンの様だ。
後ろから「お邪魔しま~す♡」とナナの声も続いてくる。
どうやらナナも来たらしい。
(セブンさんの声、荒いです…勝手に休んだこと、怒ってる、ですか……?)
「血の匂い!?おいアラ、どこを怪我した!?」
(あれ、怒っている、じゃなくて…心配してくれてる、ですか……?私、心配されたの…初めて、です……)
お腹が痛くてたまらない。
なのに胸がポカポカとした。
「セブン、さん…」
ゴソゴソとサラが布団から顔を出す。
「アラ、無断で休むかと思えば、何処を怪我したんだ!?血の匂いが酷いぞ!!」
セブンの言葉にサラは顔を赤くする。
女性特有の月の物。
しかも初潮。
それをセブンに伝えるにはサラは初心過ぎた。
「はいはいドクター退いてちょうだい」
ナナがセブンの首根っこを掴み、ポイッ、と後ろに投げる。
細い腕なのにやたらと力が強い。
色気を出す以外に害が無いから忘れていたがナナはれっきとした魔族である。
身体能力は人間の比ではない。
「んふ、サラちゃん美味しいそうな匂い♡少女から女性になりつつあるのね♡」
ナナがサラの汗で額に張り付いた髪を優しく細い指ではらう。
「ナナ、さ、ん…」
「ん~痛いわね。すぐお薬の用意するから、まずは綺麗にしましょうか」
ナナがニッコリと微笑む。
その優しい微笑みにサラの心がほぐれる。
「うぅ~、ナナさん…痛い、です…グズッ…」
「いい子いい子。ドクター痛み止めを頂戴。それからナプキン買って来て頂戴」
「痛み止めはあるが…ナプキン?男の俺にソレを買ってこいと!?…ん、と言う事はアラは…」
「皆迄、言わないで、下さい…」
「お、おぉぅ…悪かった……」
気まずい雰囲気が流れる。
サラはゴソゴソとまた布団の住民、ミノムシサラに戻ってしまった。
「私が買って来ても良いけど、ドクターに今のサラちゃんの相手が出来るとでも?」
「カッテキマス」
すごすごとセブンは買い出しに出かけた。
「はいサラちゃん、薬飲みましょうね。ドクターが帰って来たら、ちゃんと綺麗にもしましょう」
「は、い」
布団から顔と手を出してナナから薬を受け取る。
セブンはクロイツから薬剤を取り寄せている為、漢方薬以外の薬も多く保持している。
漢方薬で無い薬剤を保持している医院は少ない。
セブンの診療場が繁盛している理由の1つでもある。
ナナから渡された痛み止めを湯冷ましで飲む。
水分が唇を湿らせ口内を潤し喉を通っていくのが気持ち良い。
そう言えば寝る前に白湯を飲んでからずっと水分も取っていなかったのを思い出した。
どおりで水分が美味しいはずである。
ただの白湯が酷く高級な飲み物に感じるほどに美味しかった。
「体清めたいけど、コレは清拭場にも行けないわね。部屋で清拭しましょうか。サラちゃん勝手にお湯沸かすわよ。水場を使って良いのかしら?」
「ナナさんに任せる、です」
このアパートには水道が引いてある。
流石に沸かさずに飲料水にするのには抵抗があるが、外に汲みに行かなくて良いのは大変助かる。
貧民街ではいまだに井戸に水を汲みに行くのだ。
どれだけ水道が有難いか、こういう時に身に染みる。
後はセブンがナプキンを買って来るのを待つのみである。
「薬効くまでサラちゃんはゆっくりしてなさいな♡」
ナナの言葉にサラはコクリ、と頷くとすぅすぅと寝息を立てて眠り始めた。
薬を飲んだというのと、人が近くに居るというので安心して睡魔に身を任せる事が出来たのだろう。
ナナがサラの髪を指で梳く。
(あ~本当素直で可愛い♡それに良い匂い♡サキュバスじゃなくてインキュバスになってこのまま男を知らないこの身を美味しく頂きちゃいたいくらいだわ♡)
ナプキンを買いに行くセブンも苦行だが、美味しそうな獲物を前にして本能を抑えるナナにとっても中々の苦行なのだった。
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セブンが買いに行ったのは布ナプキンです。
万屋で売ってます。
その辺り次回チラッと書きます。
半分眠ったままのサラは夢うつつでソレを聞いていた。
(安物のドア、そんなに叩いたら、壊れる、です。私、修理のお金、ない、です…)
「埒が明かない!力づくで開ける!」
ドアの向こうで魔力が行使されたのが分かった。
カチャリ、と安い音を立ててドアの鍵が開けられる。
「アラ!無事か!?」
「セブン…さん……?」
苛立ったようなセブンの声がサラの耳に届いた。
入って来たのはセブンの様だ。
後ろから「お邪魔しま~す♡」とナナの声も続いてくる。
どうやらナナも来たらしい。
(セブンさんの声、荒いです…勝手に休んだこと、怒ってる、ですか……?)
「血の匂い!?おいアラ、どこを怪我した!?」
(あれ、怒っている、じゃなくて…心配してくれてる、ですか……?私、心配されたの…初めて、です……)
お腹が痛くてたまらない。
なのに胸がポカポカとした。
「セブン、さん…」
ゴソゴソとサラが布団から顔を出す。
「アラ、無断で休むかと思えば、何処を怪我したんだ!?血の匂いが酷いぞ!!」
セブンの言葉にサラは顔を赤くする。
女性特有の月の物。
しかも初潮。
それをセブンに伝えるにはサラは初心過ぎた。
「はいはいドクター退いてちょうだい」
ナナがセブンの首根っこを掴み、ポイッ、と後ろに投げる。
細い腕なのにやたらと力が強い。
色気を出す以外に害が無いから忘れていたがナナはれっきとした魔族である。
身体能力は人間の比ではない。
「んふ、サラちゃん美味しいそうな匂い♡少女から女性になりつつあるのね♡」
ナナがサラの汗で額に張り付いた髪を優しく細い指ではらう。
「ナナ、さ、ん…」
「ん~痛いわね。すぐお薬の用意するから、まずは綺麗にしましょうか」
ナナがニッコリと微笑む。
その優しい微笑みにサラの心がほぐれる。
「うぅ~、ナナさん…痛い、です…グズッ…」
「いい子いい子。ドクター痛み止めを頂戴。それからナプキン買って来て頂戴」
「痛み止めはあるが…ナプキン?男の俺にソレを買ってこいと!?…ん、と言う事はアラは…」
「皆迄、言わないで、下さい…」
「お、おぉぅ…悪かった……」
気まずい雰囲気が流れる。
サラはゴソゴソとまた布団の住民、ミノムシサラに戻ってしまった。
「私が買って来ても良いけど、ドクターに今のサラちゃんの相手が出来るとでも?」
「カッテキマス」
すごすごとセブンは買い出しに出かけた。
「はいサラちゃん、薬飲みましょうね。ドクターが帰って来たら、ちゃんと綺麗にもしましょう」
「は、い」
布団から顔と手を出してナナから薬を受け取る。
セブンはクロイツから薬剤を取り寄せている為、漢方薬以外の薬も多く保持している。
漢方薬で無い薬剤を保持している医院は少ない。
セブンの診療場が繁盛している理由の1つでもある。
ナナから渡された痛み止めを湯冷ましで飲む。
水分が唇を湿らせ口内を潤し喉を通っていくのが気持ち良い。
そう言えば寝る前に白湯を飲んでからずっと水分も取っていなかったのを思い出した。
どおりで水分が美味しいはずである。
ただの白湯が酷く高級な飲み物に感じるほどに美味しかった。
「体清めたいけど、コレは清拭場にも行けないわね。部屋で清拭しましょうか。サラちゃん勝手にお湯沸かすわよ。水場を使って良いのかしら?」
「ナナさんに任せる、です」
このアパートには水道が引いてある。
流石に沸かさずに飲料水にするのには抵抗があるが、外に汲みに行かなくて良いのは大変助かる。
貧民街ではいまだに井戸に水を汲みに行くのだ。
どれだけ水道が有難いか、こういう時に身に染みる。
後はセブンがナプキンを買って来るのを待つのみである。
「薬効くまでサラちゃんはゆっくりしてなさいな♡」
ナナの言葉にサラはコクリ、と頷くとすぅすぅと寝息を立てて眠り始めた。
薬を飲んだというのと、人が近くに居るというので安心して睡魔に身を任せる事が出来たのだろう。
ナナがサラの髪を指で梳く。
(あ~本当素直で可愛い♡それに良い匂い♡サキュバスじゃなくてインキュバスになってこのまま男を知らないこの身を美味しく頂きちゃいたいくらいだわ♡)
ナプキンを買いに行くセブンも苦行だが、美味しそうな獲物を前にして本能を抑えるナナにとっても中々の苦行なのだった。
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セブンが買いに行ったのは布ナプキンです。
万屋で売ってます。
その辺り次回チラッと書きます。
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