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【24話】
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「ほぉ~昨日の晩にそんな事があったのか」
新聞の号外をセブンが診療前の珈琲タイムに読んでいた。
この大陸ではカカン王国以外の紙の印刷物は高い。
紙自体が高いからだ。
紙の名産地であるカカンでは庶民でも読める新聞だが、他の国ではそれなりの高値がする。
それを毎日購入しているのだからセブンは根っからの文字好きだ。
「ドクターって本当にシンブンが好きよね。私は政治経済には興味ないわ」
「セブンさん、昨日何があった、ですか?」
号外の新聞だ。
おそらく夜のうちに何かがあったのだろう。
サラもその内容が気になった。
「深夜の王宮がドラゴンに襲われたそうだ」
「はぁっ!?」
「ドラゴン、ですか…怪我人が少なければ、良いのですが……」
ドラゴンは神話級とは言わないが、伝説級の十分に強い能力を持った種族だ。
その分数は少ないが。
S級の闘いを生業とする人間が数百人は集まらないと対処できない存在。
ドラゴンを見たらまず逃げろと冒険者もギルドに加入するときに教えられる。
「破邪結界が機能していればドラゴンも王都に侵入何て出来なかったんでしょうね。サラちゃんが気にすること無いのよ?サラちゃんの次の聖女が無能なのと、無能を聖女にした王家と神殿が悪いんだから」
「どうやら侵入したのはブラックドラゴンだったようだな。暗闇に姿が溶け込んでいて誰も王宮迄近づいたの気付かなかったようだ。
”ドラゴンは宝物庫の壁を破壊し、根こそぎ国宝を奪って行った。幸いにも怪我人は出たものの死人は出なかった”だそうだぞ」
「それは良かった、です。怪我人さんたちの治療、行かなくて良いのでしょうか?」
「それは中心街の病院と治癒師たちの仕事だから、ドクターやサラちゃんが出て行く必要ないわよ♡」
「そう、ですね。でもお金なくなって、王家は大変、じゃないですか?」
「大変だろうな~財力のない王家に何人が仕えてくれるんだろうな~貴族共も言う事聞かないだろうな~あぁ王家、これからが大変だな~」
まことに嬉しそうなセブンである。
「王家、どうする、でしょうか?」
「宝を取り返したものに謝礼として2割進呈、だとよ。半分と言えないあたりが器の小ささを露見しているな。でも王家の財産の2割…下手な貴族より余程財力が得られるな。
それだけ金があれば診療所を立て直して、レントゲンにCT、エコー、心電図、何でも揃えられるな~クックックッ!」
「ドクターて本当医療馬鹿よね。そんなに設備揃えても3人じゃ仕事回せないでしょ?」
「アラ、お前分身の術とか使えないのか?」
「サイヒ様なら兎も角私には無理、です」
「出来るのかサイヒ様…俺の中でサイヒ様のバケモノぷりに拍車がかかったぞ……」
「サイヒ様はバケモノ、じゃなくて、むしろ天上人、です!」
「どうどう、サラちゃん。ほら飴舐めなさい♡」
ナナによって口の中に飴玉を放り込まれる。
途端サラの表情はふにゃりと崩れる。
「甘ひれすぅ~♬」
「チョロ過ぎないか?」
「そこがバ可愛くて良いのよ♡」
セブンが新聞に視線を戻す。
「どうやらドラゴンが城を襲った時、国王は不在、王子は王宮医師と睦みあっており、神殿でも聖女がシスターと、司教が神官とお盛んだったらしいぞ」
「爛れてるわね~」
「別の国王様に、変わらない、でしょうか?」
「バカ王子が後を継いだんじゃ意味ないし、出来の良い王弟の誰かが新しい国王になれば少しは中心街もマシになるんでしょうけどね~」
「王弟も全員似たようなものだろう」
「あら、でも十数年前に姿を消したアシュバッタ王子は出来の良い王子だって有名だったじゃない?」
「アシュバッタ王子、ですか?私知らない、です」
「他国に留学してそのまま姿を消した王子だからな。アラが知らないのも無理は無いだろう。
それに今頃何処かで野垂れ死んでいるか、別の場所で別の生活でも送っているだろうよ。国が腐敗しても帰って来ないのが良い証拠だ。期待するだけ無駄な王子って事だ」
セブンが吐き捨てる様に言う。
「セブンさん、アシュバッタ王子、嫌い、ですか?」
「興味が無いだけだ……」
「そう、ですか…私はその、アシュバッタ王子、会ってみたい、です。優しい王子様、興味津々、です」
「ふん、物好きな。ほれ、そろそろ開業時間だ。仕事の準備しろ!」
「はぁ~い♡」
「承知、しました」
「今日は患者が多いだろうからきばれよ」
セブンの言う通りその日は怪我人でごったがえした。
無謀にもドラゴンから国宝を奪い返そうとした冒険者が後を絶たなかったからだ。
金と言うものは恐ろしいものだ。
自分と伝説級の生物との力の差すら測れなくなるらしい。
あまりの忙しさに、この日は休憩時間のお勉強時間はなかった。
知識を頭に入れるのが楽しくなってきたサラには残念であったが。
それでもちゃんとお茶とお菓子が出て来たのでサラは大満足だったが。
ちなみにクッキーはセブンの手作りである。
夜のうちに仕込みをし、3日分を作り置きしてある。
市販のものから手作りに変えた事で大幅にコストダウンした。
クッキーに舌鼓を打つサラを見て、セブンはまた悪役の様に笑うのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ざまぁの定番、ドラゴンが王都に攻めてくる!でした。
誰も死なない平和な世界…。
怪我をしたのは基本加護無しでも特に性根が悪い者です。
ドラゴンが出て来た事にも気づかない王族と神殿…腐敗しきっております。
誰か別の適性ある者が国王になれば良いんですがね~(/ω・\)チラッ
新聞の号外をセブンが診療前の珈琲タイムに読んでいた。
この大陸ではカカン王国以外の紙の印刷物は高い。
紙自体が高いからだ。
紙の名産地であるカカンでは庶民でも読める新聞だが、他の国ではそれなりの高値がする。
それを毎日購入しているのだからセブンは根っからの文字好きだ。
「ドクターって本当にシンブンが好きよね。私は政治経済には興味ないわ」
「セブンさん、昨日何があった、ですか?」
号外の新聞だ。
おそらく夜のうちに何かがあったのだろう。
サラもその内容が気になった。
「深夜の王宮がドラゴンに襲われたそうだ」
「はぁっ!?」
「ドラゴン、ですか…怪我人が少なければ、良いのですが……」
ドラゴンは神話級とは言わないが、伝説級の十分に強い能力を持った種族だ。
その分数は少ないが。
S級の闘いを生業とする人間が数百人は集まらないと対処できない存在。
ドラゴンを見たらまず逃げろと冒険者もギルドに加入するときに教えられる。
「破邪結界が機能していればドラゴンも王都に侵入何て出来なかったんでしょうね。サラちゃんが気にすること無いのよ?サラちゃんの次の聖女が無能なのと、無能を聖女にした王家と神殿が悪いんだから」
「どうやら侵入したのはブラックドラゴンだったようだな。暗闇に姿が溶け込んでいて誰も王宮迄近づいたの気付かなかったようだ。
”ドラゴンは宝物庫の壁を破壊し、根こそぎ国宝を奪って行った。幸いにも怪我人は出たものの死人は出なかった”だそうだぞ」
「それは良かった、です。怪我人さんたちの治療、行かなくて良いのでしょうか?」
「それは中心街の病院と治癒師たちの仕事だから、ドクターやサラちゃんが出て行く必要ないわよ♡」
「そう、ですね。でもお金なくなって、王家は大変、じゃないですか?」
「大変だろうな~財力のない王家に何人が仕えてくれるんだろうな~貴族共も言う事聞かないだろうな~あぁ王家、これからが大変だな~」
まことに嬉しそうなセブンである。
「王家、どうする、でしょうか?」
「宝を取り返したものに謝礼として2割進呈、だとよ。半分と言えないあたりが器の小ささを露見しているな。でも王家の財産の2割…下手な貴族より余程財力が得られるな。
それだけ金があれば診療所を立て直して、レントゲンにCT、エコー、心電図、何でも揃えられるな~クックックッ!」
「ドクターて本当医療馬鹿よね。そんなに設備揃えても3人じゃ仕事回せないでしょ?」
「アラ、お前分身の術とか使えないのか?」
「サイヒ様なら兎も角私には無理、です」
「出来るのかサイヒ様…俺の中でサイヒ様のバケモノぷりに拍車がかかったぞ……」
「サイヒ様はバケモノ、じゃなくて、むしろ天上人、です!」
「どうどう、サラちゃん。ほら飴舐めなさい♡」
ナナによって口の中に飴玉を放り込まれる。
途端サラの表情はふにゃりと崩れる。
「甘ひれすぅ~♬」
「チョロ過ぎないか?」
「そこがバ可愛くて良いのよ♡」
セブンが新聞に視線を戻す。
「どうやらドラゴンが城を襲った時、国王は不在、王子は王宮医師と睦みあっており、神殿でも聖女がシスターと、司教が神官とお盛んだったらしいぞ」
「爛れてるわね~」
「別の国王様に、変わらない、でしょうか?」
「バカ王子が後を継いだんじゃ意味ないし、出来の良い王弟の誰かが新しい国王になれば少しは中心街もマシになるんでしょうけどね~」
「王弟も全員似たようなものだろう」
「あら、でも十数年前に姿を消したアシュバッタ王子は出来の良い王子だって有名だったじゃない?」
「アシュバッタ王子、ですか?私知らない、です」
「他国に留学してそのまま姿を消した王子だからな。アラが知らないのも無理は無いだろう。
それに今頃何処かで野垂れ死んでいるか、別の場所で別の生活でも送っているだろうよ。国が腐敗しても帰って来ないのが良い証拠だ。期待するだけ無駄な王子って事だ」
セブンが吐き捨てる様に言う。
「セブンさん、アシュバッタ王子、嫌い、ですか?」
「興味が無いだけだ……」
「そう、ですか…私はその、アシュバッタ王子、会ってみたい、です。優しい王子様、興味津々、です」
「ふん、物好きな。ほれ、そろそろ開業時間だ。仕事の準備しろ!」
「はぁ~い♡」
「承知、しました」
「今日は患者が多いだろうからきばれよ」
セブンの言う通りその日は怪我人でごったがえした。
無謀にもドラゴンから国宝を奪い返そうとした冒険者が後を絶たなかったからだ。
金と言うものは恐ろしいものだ。
自分と伝説級の生物との力の差すら測れなくなるらしい。
あまりの忙しさに、この日は休憩時間のお勉強時間はなかった。
知識を頭に入れるのが楽しくなってきたサラには残念であったが。
それでもちゃんとお茶とお菓子が出て来たのでサラは大満足だったが。
ちなみにクッキーはセブンの手作りである。
夜のうちに仕込みをし、3日分を作り置きしてある。
市販のものから手作りに変えた事で大幅にコストダウンした。
クッキーに舌鼓を打つサラを見て、セブンはまた悪役の様に笑うのだった。
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ざまぁの定番、ドラゴンが王都に攻めてくる!でした。
誰も死なない平和な世界…。
怪我をしたのは基本加護無しでも特に性根が悪い者です。
ドラゴンが出て来た事にも気づかない王族と神殿…腐敗しきっております。
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