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《19話》※ R-15

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※医師→アコロ王子要素あり


 平民街の診療所は今日も患者でごった返している。
 診療所は怪我を治しに来るところなのに、なぜか皆ワイワイと和気藹々とお話を楽しんでいる。

「お前ら元気なら出て行けっ!」

「ドクター冷た~い」

「セブンさん、患者様は神様、です」

「部下が言うことを聞かない…」

 ちょっぴりショボンなセブンだ。

「まぁまぁドクター、ちゃんと金は払っていくんだから良いじゃねーか。サラちゃん来てから更に儲けているんだろう?」

「ソレはまぁ…クックックッ」

「ナナさん、セブンさんがまた悪いモノ笑い、してます」

「頭の中お金で埋め尽くされてるからね~♡」

「料理も上手いです、よ?」

「最初どうなるかと思ったけど、本当に食べ物で簡単に釣れるなんて…チョロ過ぎるわサラちゃん」

「お~いナナちゃん!次俺の番~」

 特に怪我がある訳でない中年の男が上半身裸でうつ伏せでベッドに寝転んでいた。

「は~い、じゃぁ揉んでいくわね♡」

 ナナが男の腰に尻を下ろす。

「うほっ!」

 ナナの尻の柔らかさを感じた男から間抜けな声が出た。

「はい、ギュ~ギュ~♡」

「おおぅ、うひょっ、むはっ、堪らん!!」

 ナナは按摩の際、手から微弱に魔力を放って快楽の回路を刺激しているのだ。
 下手なソロプレイよりも余程心地が良い。
 ソレ目当てで来ている男の多いこと多いこと。
 あまりにもナナの按摩目当ての客(患者?)が多いので今では整理券が配られている。
 3か月待ちは余裕だそうだ。

(サキュバスさんは快楽のプロです。きっと気持ち良い、のでしょうね…今度頼んで、みましょうか?)

 絶対セブン医師が止める案件である。

「あ~~~~サラちゃんの治癒は良いのう。体の奥まで熱が伝って来て痛めた腰が気持ちが良いわ」

 サラは女性人気が高い。
 主に痛みを取る整体と【治癒】の法術を融合させて処置を行っている。

「それは良かった、です。でもあんまり無理、しないで下さい、ね」

「うむうむ、わかっとるよ~」

 サラの本来の実力なら腰痛の元すら治せるのだがセブンに禁止されている。
 あまりに強い法術を使えばサラの噂が神殿に渡る可能性がある。
 セブンはサラを他者に渡す気(ついでに恋愛感情も)は無いのだ。

 それに強い【治癒】は依存になりやすい。
 そして自己免疫力・再生能力が格段に落ちる。
 体の痛みにはちょっとした痛み止めと日にち薬が丁度良いのだ。
 しかしそれは長い目で見た場合である。

 10年前、セブンがこの診療所を開設した時には”怪我を完治させない藪医者”と有名だった。
 それでも金がない平民はセブンの診療所しか頼れる場所は無い。
 金のある者は中心街の総合病院に通っていた。

 そして3年が経過した頃、セブンの患者は元気溌剌と生活しており、反対に中心街で高い金を払って【治癒】で完全回復して貰っていた患者は怪我をしては治す、を繰り返したため自己免疫力が無くなり、ただの風邪であっけなく死んでいくものすら現れた。

 その頃になって、セブンの診療所が繁盛し始めた。
 ナナが来て満員御礼になったときはどうしようか思ったが、想像よりは上手くやっている。

 そしてサラの存在。

 普段は軽い【治癒】での痛み消ししかやらせてないが、医学を齧ったと言うだけあって、外科の手術の補助も出来る。
 この世界に外科手術が出来る者は少ない。
 大陸を探して両の手で足りるかどうかといった程度だろう。
 セブンの診療所では折れた骨が皮膚を突き破っても外科手術で治せるのだ。
 完治までに時間はかかる。
 だが人間の体の構造を知らない【治癒師】が法術で同じ処置を行ったら菌や異物迄入り込み、骨は歪な形でしか繋がらないだろう。
 それ程”医療技術”があるか無いかでは話が変わってくるのだ。

 ちなみに麻酔は高いので、外科手術の時はナナに快楽ホルモンを患者に流して貰って痛みを消して貰うようにしている。
 この流す魔力の量も絶妙で、快楽に嵌った男が自分でお怪我を作って外科手術を受けに来ることもあった。
 自分で傷をつけた場合は、セブンは麻酔無しで手術をするようにしている。
 それ以来、セブンのは”悪魔の化身”の医師と恐れられている。
 きっと目つきが悪いのも噂に拍車をかけているのかもしれない。

 しかしサラが来たことで出来る事がいっそう増えた。
 金目当てだけではなく、医師として拾える命を取りこぼさなくて良くなったことをセブンは満足している。

 そうして何時か、無力だった時に取りこぼした命と、同じ病を持つ患者を救う事でセブンは医師として病に下克上をかましてやりたいのだ。

 きっとその日はそんなに遠くない。

 :::

「ふふう、やはり大浴場は良いものだ」

 アコロ王子は大満足であった。
 乳首も尻も風邪も治った。
 これで今まで通りの快楽に耽る生活が送れる。

 もう乳首に軟膏とガーゼを付けなくてよいのだ。
 尻を拭くときにそろ~っと拭かなくても良いのだ。

 薄衣の美女を従え、アコロ王子は大満足であった。

「最近はアポロも大人しいしな。ペットがいなくなった位で落ち込むなぞ王族の風上にも置けん軟弱ものだ。早く私が王になってこの国を統治せねばな!」

 機嫌が良いアコロ王子は気付かなかった。
 乳白色の湯の中で、自分に近づいてくる存在がある事に…。
 ソレはそろりそろりとアコロ王子の股座に近づき。
 その鋏をシャキン、と立てた。

「あs:オくぁおj路蛇f:ks」@あ!!!」

「王子、どうなされましたか!?」

「私の、私の股間がぁぁぁぁああぁっ!!!」

 内股になって股間を押さえつけるアコロ王子の姿はかなりみっともない。
 だが此処に居るのは教育の行き届いた侍女なので、それで笑う事は無かった。
 見ない様にしながら小刻みに震えているものは存在したが。

「どうなされました殿下!!」

 兵士が浴場へ飛び込んでくる。
 そして腰にタオルを巻いただけ(しかも濡れているのでほぼ丸見えだ)のアコロ王子を見て、その股間から一筋の出血があることに気付いた。

「殿下、怪我を!?」

「何者かに襲撃された!敵は刃物を持っている!浴室内をくまなく探せ!!」

「はっ!」

 兵士は敬礼をし鎧とズボンを脱ぐと浴室の中に入って行った。

「王子、医務室へ参りましょう?」

「あ、あぁ居医務室に…いかない訳にはいかんのだな……」

 アコロ王子はバスローブを羽織り、兵士に医務室迄連れて行かせた。

「で、でででで殿下!」

 ポッ

 70代の医師が頬をバラ色に染める。
 アコロ王子と熱いベーゼを交わした医師である。

「ひぃっ!別の医師はおらんのか!?」

「他の者は休暇をとっております。大丈夫です殿下、痛くしませんから、そのバスローブを脱ぎましょうね」

 マスク越しでもハァハァと医師の息が荒いのが分かる。
 それでも、傷口を見せない訳にはいかない。
 アコロ王子はバスローブを脱ぎ、腰のタオルを取ると、医師の指示のもとベッドの上でM字開脚をさせられた。

「はぁ~はぁ~コレは!王子の陰茎の皮の先が切り取られております!!」

「な、何ぃっ!?」

「はぁはぁはぁ、誰も見たこと無い、アコロ王子の陰茎の先っぽを私が初めて見れるなんて!痛みがあるでしょうから軟膏を塗っておきますね!はぁはぁっ!!」

 医師が手袋を外し(普通逆である)その手にジェルをたっぷりと塗り込んだ。
 手の上で何度も練り、己の体温でジェルを適温にする。
 流石は医師だ。
 細かいところまで目端がきく。

「では塗りますのじゃ――――――っ!!!」

 ニュルニュルニュル!!

「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「先っぽもクールクル♡」

「ひあぁぁあっ!!」

「そして上下にニュルニュル、と♡」

「うっ、で、ででで、出る―――――っ!!」

 ドピュ

 アコロ王子の真性から仮性となった包茎の陰茎から欲望の白濁液が飛び散った。
 その快感と共にアコロ王子は意識を失った。

「王子の、王子のセー〇キ♡」

 医師が手に付いたアコロ王子の白濁液をビーカーに集めていた。
 いったい何に使うつもりなのかは、考えたくないモノである。

 その後、浴場には刺客は居なかったが、アポロ王子のペットのザリガニは見つかったらしい。
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