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プロローグ
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「聖女サラ・ジュソウ!今日を持ってお前は聖女の座を剥奪だ!平民のお前などではなく高貴な生まれである真の聖女ミキティア・チャーチが聖女となる!勿論私との婚約も破棄だ!荷物を纏めてとっとと神殿を出ていけ!国外追放されないだけでも有難いと思うのだな!!」
とある晩餐会の夜。
大声で演説するのはディノート王国の第1王子であるアコロ・ディノートだ。
その傍らには大胆に胸元が開いたドレスを着ている美女がしな垂れかかっている。
おそらくその女性が”真の聖女”なのだろう。
「本当に私の結界は必要ない、ですねアコロ王子?」
「ふん!誰も感知できない結界など本当に張られているかも怪しいものだ。聖女になって5年、随分と贅沢な暮らしが出来ただろう。良い思いをしたのだ。その感謝を胸に再び平民として生きろ!」
そんなに大声を出し続けてしんどくないだろうか?
サラはぼんやりそんな事を考えた。
贅沢な暮らし?
まぁスラムよりはマシだが毎日蒸かしたジャガイモと塩スープがメインのご飯だ。
硬いパンが出た日やスープに屑野菜が入っている時は、どれほど嬉しかったことだろう…。
与えられた部屋は物置のような窓もない、誇りまみれの部屋。
ベッドも無く藁の上にシーツを被って横になっていた。
その暮らしから解放される。
今のサラは昔の無力な子供とは違って法力を使えるので、食うに困るほどの生活にはならないだろう。
なら誰しも上から命令されるのではなく、自由な暮らしをしたい。
「承知しましたアコロ王子。ただ神殿を出ても私は自分が聖女として働いたことを誇りに思いたい、です。許されるなら平民になっても、私を信じてくれる方には加護があるよう、祈りをする許可を、下さい」
「ふん、貴様の祈りが何の役に立つと言うのだ?まぁいい、勝手にみすぼらしい部屋の中で祈っていろ!」
言質は取った。
これでサラは祈りを止める必要はない。
いくらアコロ王子がバカ王子だとは言え、王族であるアコロの命に背いたら不敬罪に当たるだろう。
だからサラは祈りの願いだけは認めて貰いたかったのだ。
サラは聖女として国の安寧の為祈り続けた事に誇りを持っている。
破邪結界は解かなければならないだろう。
流石に神殿の聖なる間で祈るのと違い、媒介なしに祈るのでは結界の維持は不可能だ。
だが人々の加護なら自分の持てる力で何とかなる。
聖女の座を下ろされたからと言って、これから危険が増す王都に暮らす国民を見捨てるほどサラは非情ではない。
そうしてサラは晩餐会の途中で神殿へと戻り、己の少ない荷物をまとめると王都に下った。
「まずは住むところかくほしない、とですね」
こうして”平民サラ”の新たな日常が始まった。
とある晩餐会の夜。
大声で演説するのはディノート王国の第1王子であるアコロ・ディノートだ。
その傍らには大胆に胸元が開いたドレスを着ている美女がしな垂れかかっている。
おそらくその女性が”真の聖女”なのだろう。
「本当に私の結界は必要ない、ですねアコロ王子?」
「ふん!誰も感知できない結界など本当に張られているかも怪しいものだ。聖女になって5年、随分と贅沢な暮らしが出来ただろう。良い思いをしたのだ。その感謝を胸に再び平民として生きろ!」
そんなに大声を出し続けてしんどくないだろうか?
サラはぼんやりそんな事を考えた。
贅沢な暮らし?
まぁスラムよりはマシだが毎日蒸かしたジャガイモと塩スープがメインのご飯だ。
硬いパンが出た日やスープに屑野菜が入っている時は、どれほど嬉しかったことだろう…。
与えられた部屋は物置のような窓もない、誇りまみれの部屋。
ベッドも無く藁の上にシーツを被って横になっていた。
その暮らしから解放される。
今のサラは昔の無力な子供とは違って法力を使えるので、食うに困るほどの生活にはならないだろう。
なら誰しも上から命令されるのではなく、自由な暮らしをしたい。
「承知しましたアコロ王子。ただ神殿を出ても私は自分が聖女として働いたことを誇りに思いたい、です。許されるなら平民になっても、私を信じてくれる方には加護があるよう、祈りをする許可を、下さい」
「ふん、貴様の祈りが何の役に立つと言うのだ?まぁいい、勝手にみすぼらしい部屋の中で祈っていろ!」
言質は取った。
これでサラは祈りを止める必要はない。
いくらアコロ王子がバカ王子だとは言え、王族であるアコロの命に背いたら不敬罪に当たるだろう。
だからサラは祈りの願いだけは認めて貰いたかったのだ。
サラは聖女として国の安寧の為祈り続けた事に誇りを持っている。
破邪結界は解かなければならないだろう。
流石に神殿の聖なる間で祈るのと違い、媒介なしに祈るのでは結界の維持は不可能だ。
だが人々の加護なら自分の持てる力で何とかなる。
聖女の座を下ろされたからと言って、これから危険が増す王都に暮らす国民を見捨てるほどサラは非情ではない。
そうしてサラは晩餐会の途中で神殿へと戻り、己の少ない荷物をまとめると王都に下った。
「まずは住むところかくほしない、とですね」
こうして”平民サラ”の新たな日常が始まった。
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