皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか？

その後

過去への旅客１４

　公園です！
　大きい公園で広場に砂場に遊具に散歩できるコースがあったりと、何かと楽しそうな公園です。
　季節のお花が綺麗に咲いていてお年寄りがキャンパスに花の絵を描いたりしています。
　皆さん上手いですね…。
　え、私ですか？
　絵心…ですか………？
　人並みにありますよ…多分………。

「何か落ち込んどるのんヒガンのおねーさん？」

　こてり、と隣のチビオウマさんが小首を傾げました。
　か！可愛い！！
　子供の頃のオウマさんまるっきり美少女じゃないですか！
　今でも可愛いですけど！
　チビの頃なら女の子と言われても疑いませんよ！

　今のオウマさんはどっちかと言うと中性的、です。

　女装するには少し線が太い気がしますし、剣を振るう男にしては線が細すぎる気がします。
　あ、でも魔王やエントさんと並んだら１人だけ小さくて細く見えますね。
　男ばかりの職場なので変な目で見られることも多いんだとか。
　ところで変な目ってどういう目でしょうね？
　ユラさんに聞いたら目を輝かせて肩をガシッ、と掴まれました。
　そして口を開いたと同時にミヤハルさんにドナドナされました。
　説明受け損なってそのままでした。
　現代に戻ったら詳しく説明して貰いましょう。

「落ち込んでないですよ。ただ赤ちゃんと外で遊ぶのは初めてなので緊張してますけど」

「大丈夫よん。首が座るようになる頃には、赤ちゃんの視力や周りへの興味がさらにアップするんね。
そうなったら今まで以上に公園にいる時間を増やして、抱っこしながらカラフルな遊具に触れさせてあげたり、子どもたちが遊んでいる様子や犬の散歩などを見てみたりして楽ませるから。
シックスリーは好奇心旺盛な方じゃないから変に何処かに言ったりせんし、面倒見やすいよん。
芝生が開放されている場所であれば、レジャーシートの上で赤ちゃんと外気浴を楽しむのもおすすめ！
俺たちも太陽でポカポカ気持ち良いし。
地面に近い場所で、草や花の手触りや匂い、ありやバッタが動く様子など、家の中では感じることのできない体験を堪能できるだけで十分。
でも最近お座りできるから支えて、低い位置から滑り台で遊ばせてあげたり、お膝に乗せてブランコでゆらゆらしたりなど、プレ遊具体験が可能になったねん。
はいはいも少しなら出来るから芝生の上でボール遊びもできるんよ。
洋服は汚れてしまうけど、公園では家の中では難しいアクティブな遊びができるのがポイントだってミヤハル様が言ってたんね。
こういった遊びをする場合は、赤ちゃんの周りに危険なもの（たばこの吸い殻やガラスなど）がないか、事前に確認が大事なんけどね」

　オウマさん、もう子育てのプロですね。
　まだ育児しだしてから数か月しか経ってない筈なのに。
　これが才能と言うものでしょうか？
　絶対将来良い母親になりますよ。
　私だってオウマさんが自分のお母さんなら良いなぁ、て思いますもん。
　これだけ面倒見られていれば、現代の魔王が何故かオウマさんには甘い気がしていた謎が解けましたね。
　部下に厳しいのに言う事聞かない個人プレーのオウマさんには強く出ませんもんね。
　これが三つ子の魂百まで、と言うやつですね。

「シックスリー、今日は美人のおねーさんが遊んでくれんだからあんまりはしゃぎ過ぎちゃだめなんよ。女の人には優しく、な」

　よしよしとベビーカーの上のチビ魔王の頭を撫でるオウマさん。
　７歳で既にレディファーストに目覚めているし、家事も出来るし、仕事も出来るし、顔も良いのに何で現代のオウマさんには彼女が居ないんでしょ？
　その気になれば明日にでも結婚できる優良物件ですよねコレ？
　何時も「フラれた～＿|￣|○」て言ってますが、フラれる要素が皆目見当たりません。

　現代に帰ったらその辺ミヤハルさんに聞いてみましょうか？
　オウマさんは答えてくれなさそう位だし、魔王は興味ないだろうし、ユラさんは聞いたらいけない気がしますし、ミヤハルさんなら望んでる回答をくれる気がします。

　あ、最近オウマさんと仲の良いアムカさんに聞くのも良いかもです！
　良くオウマさんと一緒にアムカさんの点心ご馳走になってるんですよ私。
　私が書庫に行かない日もオウマさんは通ってるみたいだし、アムカさんも何か知ってるかも。

　喉の奥に刺さった小骨が取れたみたいな爽快感を味わって、コレで私はチビ魔王と公園で遊ぶのに１００％の力で相手出来ることが出来そうです。

「熱中症気を付けてねん」

　そう言って手提げからスポーツドリンクを取り出して私と魔王に飲ませるオウマさん。
　手慣れています。
　本当、私が男だったら間違いなく嫁にします。
　魔王がオウマさんに恋しなくて良かったな、なんて思っちゃう私が居たのでした。