皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか?

高井繭来

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その後

近未来からの来訪者6

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「多分その子供は【時渡り】の術でこの世界に来たのだと思うぞ」

 【全知全能】さんがそう言いました。

 最初大変でした。
 チビチャンを見て【全知全能】さんはユラさんの子供だと思ったらしいです。
 泡を吹いて倒れました。
 即座にミヤハルさんが活を入れて起こしましたが。

 て言うか、チビチャンにユラさんの遺伝子一切入っていないと思うんですが?
 どう見ても私の遺伝子の方が強いじゃないですか!
 失敬です!
 チビチャンは私と魔王の子供なんです!!

 好きな相手の子供と思って、想像で泡吹くあたり【全知全能】さんチキンハートです。
 そして多分”童貞”と言うやつです。
 見てれば何となくわかります。
 この方、女性と距離取るの無茶苦茶下手糞です。
 可哀そうになるくらい。
 顔は赤いし言葉は詰まるし、指先が触れるだけでティーカップ落とすってどこの乙女ですか!
 紅茶が勿体ない事この上ないです。

 今もユラさんをチラチラ見ています。

 あ~目が…目が獲物を狙う”草食動物”の目です………。
 そこは肉食動物の目ではないと駄目なんじゃないんでしょうか…。

 まずユラさんがユニコーンに乗っている時点でユラさんが乙女なの丸分かりじゃないですか。
 それを理解しているくせに泡吹くとか、へたれにも程があります。
 確かにこの方にユラさんは託せませんよね。
 ミヤハルさんがセ〇ムになったのも分かる気がします。
 今後私のブラックリストにも載せておきましょう。
 【全知全能】さん…今後ユラさんに簡単に近づけると思わないで下さいよ………。

「おい、そこの小娘聞いているのか?」

「聞いてますけど何か?」

 自分のチビチャンを他人の子供と間違えた時点で【全知全能】は私の敵です。
 可愛くお返事する必要もありません。
 多分魔王もそう言ってくれるに決まってます。

「で、【時渡り】と言うんが今回のチビチャンタイムワープ事件にかかわっていると」

「それ以外考えられない。しかも”縛り”がかけられている」

「ほぉ、縛りかぁ」

「時間を遡るのにノーリスクでは心もとないからな。縛りを科して強引に過去に来たんだろう」

 能力名が【全知全能】だけあって色んなことを知っているじゃないですか。
 少し見直してやるです。

「んじゃ、まずは【時渡り】を探すかぁ。【全知全能】世話になったわ、サンクスな」

「ここまで茶菓子と茶を用意させておいて食べきらずに帰るつもりか!?」

「ん~急ぎの用やし」

「なら私も手伝おう、お前らだけでは心配だ。あ、【復元】このケーキも美味いぞ?」

「ん~モンブラン美味しい♡」

「【復元】は昔から栗が好きだったからな」

 片思いの相手の好物をせっせっと手作りする男…。
 ちょっと食べるのに抵抗が………。
 何か入ってそうで嫌なんですけど………。

「だいじょーぶやでリコリスちゃん。変なもん入ってへんから、そんな勇気あったら2人は今頃とうにねんごろや」

 もの凄く納得してしまいました。
 取り合えずティータイム終わったら【全知全能】さんの協力の元、【時渡り】さんを探すことになるようです。
 折角なんで私もケーキ食べましょう。
 モキュモキュ。
 うん、魔王よりは味が劣るけど中々です。
 今度魔王にもモンブラン作って貰いましょう。
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